イラン・イラク国境のM7.3地震、2017年で最多の死傷者に

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画像説明, 倒壊した建物の下に生存者を探すイランの救援隊

イラクとイランの国境地域で12日午後に起きたマグニチュード(M)7.3の強い地震による死傷者は、死者400人以上、負傷者7000人以上に上り、今年の地震として最悪の被害規模となった。今年9月のメキシコシティのM7.1の地震では、少なくとも369人が死亡した。

イラン国営メディアによると、西部ケルマンシャー州を中心に国内で413人が死亡した。イラン陸軍総司令官は国営テレビIRINNに対して、国境警備の兵士たちにも犠牲者が出ていると話した。

イラン政府は14日を、全国的な服喪の日とすると発表した。

イラク国境から約15キロの町、サルポル・エ・ザハブでは多くの建物が倒壊した。イラン国営テレビによると、町の主要病院も大きく損壊したため、数百人の負傷者の手当てが困難な状態という。

救援隊が倒壊した建物の下に生存者を探している。地元メディアによると、がれきの下から女性と赤ちゃんが救出された。ラジオ局がツイッターに投稿したアマチュア動画では、多くの建物が倒壊している様子が見える。

一部の都市では水道や電気の供給が断たれ、大勢が損壊した建物を逃れて寒さの中、公園や道路で長時間を過ごす羽目になった。

被害の集中した地域にはクルド人が多く住んでいる。家屋の多くは泥れんがを建材にしており、大きな揺れに弱い。

サルポル・エ・ザハブに住む男性は国営テレビに、「避難する場所が必要だ。支援はどこだ? 助けはどこだ?」と話した。

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画像説明, 地震で多くの建物が倒壊し、住民は屋外で夜を過ごした

イランの支援組織によると、被災した7万人が避難場所を必要としている。夜に起きた地震から丸1日たち、数千人の住民が2晩連続で夜を屋外で過ごす事態となった。家が無事だった人たちも、余震を恐れて屋外で夜を過ごしている。

イラン政府の救援担当者たちは13日夜、救助活動の焦点は生存者捜索から、被災者支援に移りつつあると述べた。

イラン革命防衛隊のモハマド・アリ・ジャファリ司令官は、喫緊に必要なのはテントと水と食料だと国営テレビに話した。被災地を訪れた司令官は、「新しい建物は揺れに耐えたが、土で作られた古い家は完全に破壊された」と話した。

国連事務総長の報道官は「要請があれば支援する用意がある」と声明を発表した。

イラク赤新月社はツイッターで、「地震被災者への最初の救援の様子」と写真をツイートした。

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イラク赤新月社の報道官はBBCに対して、イラク国内では9人が死亡したと話した。イラクの国連事務所によると、500人以上が負傷。揺れはアルビル、スレイマニア、キルクーク、バグダッドでも感じられたという。

各地で土砂崩れが起きているため、農村部の被災地に救助がなかなか到達できずにいる。被災した東部スレイマニヤ県ダルバンディカンでは利水用のダムが損傷を受けて決壊の恐れがあるため、近隣住民は避難を要請されたという。

動画説明, イラン・イラク地震が発生した瞬間の、ダルバンディカン・ダム制御室

米地質調査所(USGS)によると、震源地はダルバンディカンから約30キロ南、イラク国境沿いのイラン・ハラブジャから南西約30キロ。震源の深さは約23.2キロ。国連推計によると、震源地から100キロ圏内に180万人以上が住んでいる。

トルコ、イスラエル、クウェートでも揺れが感じられたという。イランは地下を複数の大きい断層が走る地震多発地域にある。

画像説明, イラン・イラク国境で起きたM7.3の揺れの震央(Epicentre)の位置

2003年には、イラン南東部の古代都市バムがM6.6の地震で破壊された。

イランでこれほどの大地震が起きるのは2012年以来。ただし、世界全体で見ると、M7.0以上の地震が起きるのは今年だけでこれで6回目。USGSによると、昨年は16回起きている。

<解説> なぜイランで地震が多発するのか――ジョナサン・エイモスBBC科学担当編集委員

イランは世界でも有数の地震多発地域だ。過去に非常に強い揺れを何度か経験している。

おおざっぱに言えば、アラビア・プレートとユーラシア・プレートの衝突が大きな要因だ。アラビア・プレートは毎年数センチずつ北に動いている。

南東部ではアラビア・プレートがユーラシア・プレートの下に潜り込んで圧力をかけているが、北西部では両方の巨大プレートが直接互いにこすれあっている。この圧縮運動の結果生まれたのが、ザグロス山脈だ。

今回の地震は、速い段階での分析によると、衝上断層が動いたもののようだ。これはつまり、断層の片側の地盤がもう片側の上に垂直にずり上がる動きで、今回の事態にぴったりあてはまる。