メキシコの「麻薬王」に有罪、米国内に大量の麻薬を密輸で
米ニューヨーク・ブルックリン連邦地裁の陪審団は12日、メキシコの麻薬密売組織の最高幹部で「麻薬王」として知られるホアキン・グスマン被告に有罪評決を下した。グスマン被告はアメリカへの麻薬密売など10の罪に問われていた。
グスマン被告(61)はコカインやヘロインの密売や銃器の違法所持、資金洗浄など10件の罪に問われていた。
何百トンものコカインをアメリカに送り込んだほか、ヘロインや覚せい剤、マリフアナの製造・頒布に関わった罪で有罪となった。
量刑言い渡しはまだだが、終身刑となる可能性がある。
被告の弁護団は控訴する方針を示している。
「エル・チャポ(ちび)」とも呼ばれるグスマン被告は、アメリカに大量の麻薬を密輸していたとされるメキシコ最大の麻薬密売組織シナロア・カルテルを長年率いていた。
過去に2度、地下トンネルを使ってメキシコの刑務所から脱獄したが、2016年1月に逮捕され、2017年にアメリカに移送された。
有罪評決
グスマン被告の裁判は11週間にわたり行われた。満員の法廷で12日、陪審団は全員一致で有罪評決を下した。
米CBSニュースによると、暗い色のスーツジャケットとネクタイを身に着けた被告は、評決が言い渡された瞬間、表情を変えなかった。
刑務官に連れられ退廷する際、被告はまず弁護士と握手を交わした。次にミスコンテスト優勝経験者の妻エマ・コロネルさん(29)と視線を合わせると、妻は親指を立てて応じた。
ブライアン・コーガン裁判長は、複雑な裁判に献身的に取り組んだ陪審員たちに感謝し、「素晴らしいことで、自分がアメリカ人であることを非常に誇りに思う」と述べた。
陪審員団は匿名が守られ、武装刑務官の護衛つきでニューヨーク・ブルックリンの裁判所に通った。グスマン被告は証人を脅迫し、殺害を命令したこともあると検察側が主張したことで、裁判所が陪審員たちの保護を認めた結果だった。
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麻薬戦争と大量殺人
メキシコとアメリカ両国の当局と、密輸カルテルとの間で10年以上にわたり繰り広げられた麻薬戦争では、約10万人が犠牲になった。
グスマン被告は、現在アメリカで刑事裁判中のメキシコ麻薬カルテルのボスとして、最も注目されていた。
ニューヨーク、シカゴ、マイアミなど米6カ所の司法管区にわたる検察がまとめた訴状によると、大量の麻薬をアメリカに密輸したほか、「ヒットマン」を使い数百人の殺害や誘拐、拷問を指示したとされる。
グスマン被告は、メキシコの刑務所を2度脱獄したほか、多くの事件で逮捕を免れたことで悪名高い。故郷では民話の英雄的な存在になり、「エル・チャポ」を称える民謡が多く作られた。
2016年にはメキシコの密林で米俳優ショーン・ペン氏のインタビューを受け、自分こそ世界一のヘロインと覚せい剤とコカインとマリフアナの供給者だと自慢していた。
訴状によると、被告は麻薬の大量密輸や大勢の殺害命令のほか、複数の少女を薬漬けにしてから強姦したとされる。被害者の中には13歳にしかならない少女もいたという。
被告の元側近で検察側の証人として出廷したアレックス・シフエンテス氏は、被告が「特に幼い少女たちを『ビタミン剤』と呼び、少女たちとの性交は『命』の元だと信じていた」と証言した。
元ボディガードは、被告が少なくとも男性3人を殴打したり銃で撃ったりして殺害するのを見たと証言した。
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