「はしか」が世界で大流行、1~3月の感染者は昨年の3倍 WHO

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画像説明, 「警戒すべき事態」だと世界保健機関(WHO)は警告

今年1月から3月の世界のはしか感染者数が、前年同時期の3倍に達した。世界保健機関(WHO)が15日に発表した推計で明らかになった。

WHOによると、この暫定的データは「明らかな流行」を示しており、 世界中のすべての地域で発生がみられるという。

地域別でみると、アフリカが最も増えており、前年同時期比で7倍に達した。

世界的にはしかの感染は1割程度しか報告されていないことから、実際の感染者数はさらに増えるとみられる。

はしかは感染力の強いウイルス性疾患で、肺や脳の感染によって深刻な合併症を引き起こす場合もある。

多数の幼い子どもが死亡

最も影響の大きいウクライナやマダガスカル、インドでは、100万人あたり数万件の感染が報告されている。

マダガスカルでは昨年9月以降、少なくとも800人が死亡している。

ブラジル、パキスタン、イエメンでも感染が拡大しており、「幼い子どもを中心に多数の死者が出ている」という。

感染者の急増は、アメリカやタイなどの高い予防接種率を誇る国でも報告されている。

国連は、この感染症は適切なワクチンで「完全に予防可能」だとしている。しかし、世界的な予防接種率は85%に留まっており、1度接種すれば大流行を防げるとされる接種率の95%には達していない。

不正確な情報も原因

WHOトップのヘンリエッタ・フォア氏とテドロス・アドハノム・ゲブレイェスス氏は米CNNの意見記事で、世界は「はしか危機の真っただ中に」あると警告。原因の一部は、ワクチンに関する「ややこしくて矛盾のある情報のまん延」にあると述べた。

両氏は「2000年以降、2000万人以上の命がはしかの予防接種によって救われた」としている。

今回のはしかの流行を受けて、複数の国では予防接種の義務化を求める声が高まっている。

イタリアでは先月、水ぼうそうやはしか、その他の感染症の予防接種を受けていない6歳以下の子どもの就学が禁止された。

米ニューヨーク市は一部地域の公衆衛生緊急事態を宣言し、全住民に予防接種を義務付けた。従わない場合は罰金が科せられる。

<解説>なぜ突然「世界的はしか危機」に?――ジェイムズ・ギャラガー、BBCニュース健康・科学担当編集委員

はしかはもっとも感染力の強いウイルスの1つだが、それ自体には何の変化も起きていない。感染力の増加や、危険性が高まるなどの突然変異が起きたわけではなく、大流行は完全に人間側の問題だ。

原因は2つある。貧困と、虚偽の情報だ。より貧しい国では予防接種を受ける人数は少なく、人口の大半がウイルスに感染しやすい状態のままになっている。

このような環境が、コンゴやキリギスタン、マダガスカルでの大流行を引き起こしている。

ところが、一見高い予防接種率を誇る豊かな国でも、症例が急増している。これは、ソーシャルメディア上で虚偽の反ワクチン接種をうたうメッセージが拡散され、それを見た多くの人が自分の子どもに予防接種を受けさせていないことが要因だ。

今回WHOが公表した数字はあくまで暫定的なものだということに注目する価値はある。WHOは実際の数はさらに増えるだろうと説明しているし、子どもを中心に毎年約10万人の死者を出しているはしかは無害なものではないのだから。