米、対中関税を25%に引き上げ 通商協議は継続へ

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アメリカ政府は10日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)、2000億ドル(約22兆2000億円)相当の中国からの輸入品に対する関税率を現行の10%から25%に引き上げた。

中国政府はアメリカの関税引き上げについて「非常に残念だ」と述べ、報復措置を取るとしている。

米中の貿易戦争が激化する中、9日にはワシントンで米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表と中国の劉鶴副首相との協議が行われた。協議は10日も継続する予定。

国際通貨基金(IMF)は、米中の貿易戦争が「世界経済の脅威になる」と警告し、「迅速な解決」を求めた。

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関税は当初、今年1月に引き上げられる予定だったが、その後交渉に進展がみられたため、税率引き上げは延期されていた

つい最近まで、両国間で合意がまとまり、貿易戦争に終止符が打たれるのではないかとみられていた。

関税は輸入する側が納めるため、今回引き上げられた25%の関税を負担するのは米国企業ということになる。

米中間の貿易戦争の激化の影響は、世界の株式市場に波及している。

ドナルド・トランプ大統領が5日に関税引き上げを示唆した際には、世界の株式市場は大きく下落。一方、10日午前の取引では、香港ハンセン株価指数は1%高、上海総合指数が2%高となった。

関税引き上げの影響

米中貿易戦争は昨年から世界経済に影響を与え、企業や消費者は先行き不透明感に悩まされている。

トランプ大統領は米経済への影響は少ないと説明しているが、アナリストらは、企業が増税分のコストを商品価格に転嫁するため、一部の米企業や国内の消費者に影響が出るとみている。

アジア貿易センターのデボラ・エルムス社長は、「関税引き上げは経済に大きな衝撃となる」と話した。

「米企業は突然、関税コストが25%増えることになる。中国政府の報復措置も忘れてはいけない」

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画像説明, 通商会議に臨む米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表(左)と中国の劉鶴副首相、スティーブン・ムニューシン財務長官

中国にある米商工会議所は声明で、両国政府が「持続可能な」解決策を見いだせるよう支援していくと述べた。

「関税が引き上げられたことには失望したが、米中両国が、中国で商工会議所会員が直面している根本的・構造的問題を解決するための力強く実行可能な協定を結べるよう、支援していく」

通商協議の行方は?

米中の貿易をめぐる緊張はここ1週間で高まったが、通商協議は予定通り行われている。9日の協議にはUSTRのライトハイザー代表とスティーブン・ムニューシン財務長官、中国の劉鶴副首相が出席した。

協議で焦点となっているのは知的財産権の保護をめぐる問題や、関税引き上げの撤回のタイミング、通商協定の実施方法などだ。

アナリストによると、中国側はこの貿易戦争を解決する重要性を認識しており、道徳的な立場を維持するためにも交渉を続けたい考えだという。

ピーターソン国際経済研究所のギャリー・ハフバウアー氏は、「中国にとってこの貿易戦争は実質経済にも、金融市場にも悪影響を与えるもの。また、世界経済にも良くない」と指摘した。

「中国は怒れる復讐者となるより、懐柔的な政治家の役回りを担ったほうがいい」