米経済団体、「株主第一」を廃止 福利厚生や地域に注力へ

画像説明, ビジネス・ラウンドテーブルの会長を務めるJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン会長兼CEO

アメリカ最大規模の経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は18日、数十年にわたって資本主義を推進してきた株主第一主義を廃止すると発表した。株主利益の追求はもはやアメリカの実業界の主目的ではなく、今後は利益を生むこととともに、社会的責任を果たすことにも注力すべきだとしている。

18日に発表された声明は「『アメリカ全国民を助ける経済』を推進するため企業の目的を再定義する」と銘打たれ、180人以上の企業トップが署名した。これにはアマゾンやアメリカン航空、JPモルガン・チェースなどの最高経営責任者(CEO)も名を連ねている。

新たに5つの優先課題

50年近い歴史を持つビジネス・ラウンドテーブルが、株主利益を最優先としなかったのは今回が初めてだという。株主第一主義は、ノーベル賞を受賞した経済学者ミルトン・フリードマン氏が提唱し、企業活動の基礎とされてきた。

声明では、従業員に公正な給与や「重要な手当」を提供すること、地域社会の支援、サプライヤーに対する倫理的態度など5項目を、新たな優先課題としている。

企業は近年、ソーシャルメディアで高まった活動家の声や従業員からの要望など、実業界の外からもたらされた問題提起への対応を迫られている。

<関連記事>

「アメリカン・ドリームはぼろぼろ」

ビジネス・ラウンドテーブルの会長を務めるJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン会長兼CEOは、「アメリカン・ドリームは生きているが、ぼろぼろだ」と述べた。

「大企業は従業員や地域社会への投資を始めている。それが唯一、長期的に成功する道だからだ。こうした現代的な信条は、全てのアメリカ国民の助けとなる経済を追求する、実業界の飽くなき取り組みを反映している」

ジョンソン・エンド・ジョンソンのアレックス・ゴースキーCEOは、「この新しい声明は、今日の企業が運営されるべき形をより反映している。経営陣が全てのステークホルダーの要望に応えようと努力した際に、企業が社会の改善で果たすことができる重要な役割を示している」

声明にはこのほか、ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ会長兼CEO、フォードのジム・ハケットCEO、アップルのティム・クックCEOも署名した。

規制改革を遅らせる戦略?

しかし、この提案に懐疑的な意見もある。ビル・クリントン政権で財務長官を務めたラリー・サマーズ氏は、企業に運営方針を変えさせる法的要件はないと指摘した。

サマーズ氏はフィナンシャル・タイムズの取材で、「ラウンドテーブルが言葉巧みにステークホルダーを受け入れたのは、必要な税金や規制の改革を遅らせる戦略の一部なのではないかと懸念している」と述べた。