フランスで80万人がデモ、警察と衝突も 年金改革に抗議
フランスで5日、エマニュエル・マクロン大統領の年金改革に抗議するゼネラル・スト(ゼネスト)が行われ、各地で交通機関が混乱し、学校が閉鎖された。
また、全国で80万人以上の労働者が抗議デモに参加。一部の都市では警察との衝突に発展した。デモは近年のフランスで最大規模にふくらんだ。
フランスでは現在、業種などに応じて計42種類の年金制度があり、受給開始年齢や受給額が異なる。マクロン大統領はこれを統一し、ポイント制の年金システムの導入を考えている。
しかし、受給開始年齢が引き上げられるほか、早期退職者の年金は減額されるという。
「みんなで戦う」
労働組合「Force Ouvrière」のクリスチャン・グロリエ会長は、「経済をまひさせようとしている」と語った。
「みんな戦おうとしている」
フランスでは1995年、当時のアラン・ジュぺ内閣による年金改革をめぐって大規模なストライキが起き、3週間にわたって交通機関がまひした。マクロン政権はこの二の舞にならないよう、事態の緩和に努めている。
80万人超がデモに参加
内務省によると、フランスの100以上の都市で計80万人以上が抗議デモに参加した。フランス労働総同盟(CGT)はパリで25万人が参加したほか、全体では150万人に上ると発表した。
また、国内の製油所8カ所のうち7カ所が抗議参加者によって閉鎖されたため、ストが続けば燃料不足に陥る可能性もあるという。
パリではエッフェル塔やオルセー美術館、ヴェルサイユ宮殿などの観光地も休業した。
エッフェル塔のツイッターアカウントは「ゼネストのため、今日はお休みです。遊歩道は無料で開いています」と周知した。
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一方、抗議参加者と警察との衝突も各地でみられた。
パリ警察はこの日、71人を逮捕したと発表。市内では器物破損などの破壊行為が多数報告されている。
また、ナントやボルドー、レンヌでも暴力行為が報告された。
交通機関への影響は?
- 高速鉄道TGVやインターシティー鉄道の9割が運休した
- パリでは、地下鉄16路線のうち5路線だけが運行した
- ユーロスターやタリスといった国際路線では、パリ・ロンドン便およびパリ・ブリュッセル便の少なくとも半分が運休した。ユーロスターは10日まで運行数を減らすとしている
- 空の便は数百便が欠航となった
- エールフランス航空は国内線の3割と、短距離国際線の1割を欠航した
- 格安航空イージージェットはフランス国内線と短距離国際線で合わせて223便を欠航したほか、運航している便は遅延の恐れがあるとした
「もっと働かせようとしている」
ストには交通機関の職員や教師に加え、警官、弁護士、病院や空港の職員なども参加している。
トゥールーズの鉄道で運転士をしているシリル・ロメロさんはフランス・インフォの取材で、年金改革が実現した場合は転職も考えると話した。
「2001年に、50歳で退職できるという契約でこの仕事を始めた。しかし他の人と同様、私の退職年齢は52歳半まで引き上げられ、年金を満額もらうには57歳半まで働かないといけない。政府は私たちをもっと働かせようとしている」
ハフポストの取材に応じた匿名の歴史教師は、6日も引き続きストをするつもりだと話した。
「私にとって年金改革は、何度もノックアウトを決められているようなもの。40年以上も働いて得た月額何百ユーロもの年金を失わないために戦っている」
「最低賃金と悪くなっていく労働環境の中で、70歳を過ぎて生徒の前に立ちながら職業生活を終えるなんて、考えたくもない」
一部の労組指導者は、マクロン氏がこの改革を破棄するまでストを続けるとしている。
世論調査では、回答者の69%がストライキを支持している。中でも、18~34歳の支持が最も高かった。
また、2018年に起きた燃料税引き上げに対する抗議活動「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」の参加者も、今回の抗議活動に参加するとしている。
一方で農家はストライキには参加しないとしている。農家の年金は最低レベルとなっている。
マクロン大統領の年金改革とは
マクロン氏の年金改革では、労働者は1日働くごとにポイントを与えられ、ポイントに応じて年金受給額が決まるシステムが計画されている。
しかし統一年金制度では、船員や弁護士、オペラ関連の労働者などの、非常に恵まれた年金システムがなくなってしまうことになる。
また、これまで62歳だった年金受給年齢を64歳に引き上げ、それより早く年金を受け取る場合には減額される。たとえば、63歳から受給する人は年金が5%減ってしまうという。
最近の世論調査によると、75%の国民が年金改革が必要だと回答した。一方、マクロン政権がそれを実現できると答えたのは3分の1にとどまった。
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