米ハーヴァード大教授ら3人訴追 中国との関係を隠した疑い

画像提供, Getty Images

画像説明, ハーヴァード大学はリーバー教授の訴追について「極めて深刻だ」とコメントした

米司法当局は28日、ハーヴァード大学化学部の学部長と、ボストンを生活拠点としていた中国人研究者2人を、中国政府を支援したとして訴追した。

起訴されたチャールズ・リーバー教授は、中国側との関係について虚偽の申告をしたとされる。

中国人研究者たちに対しては、外国のスパイだった疑いがかけられている。

1億円超の助成金

リーバー被告は、中国政府から100万ドル(約1億900万円)を超す助成金を受け取ったとされる。

ハーヴァード大学は、教授の起訴を受けて声明を出し、「極めて深刻だ」とした。

さらに、「リーバー教授を無期限の休職処分にした」と発表した。

身分を隠して研究?

検察当局によると、ボストン大学でロボット工学を研究していたイエ・ヤンジン被告は、中国人民解放軍の軍人であることを隠していたという。

学生だと身分を偽りながら軍人として勤め続け、アメリカで多くの任務を果たしたとされる。

また、がんの研究者だったジェン・ザオソン被告は、ボストンのローガン国際空港で、かばんの中に生体サンプル21個を所持していたところを逮捕された。検察当局は、被告は中国に戻って研究を続ける予定だったとしている。

武漢の大学のスタッフに

裁判資料によると、ハーヴァード大学のリーバー・リサーチ・グループの筆頭研究者だったリーバー被告は、米国立衛生研究所や国防総省から計1500万ドル(約16億3600万円)を超す助成金を得ていた。

これらの助成金の対象者は、外国の政府や組織からの経済的援助を含め、すべての利害関係について申告が義務付けられている。

しかし、リーバー被告は2011年、ハーヴァード大学に知らせないまま、中国の武漢理工大学の科学者となったとされる。

多額の給与と生活費

被告はまた、外国の研究者らを引き寄せることを狙う中国の「千人計画」にも加わった。アメリカは以前、この計画について、安全保障上の懸念があると警告を発していた。

リーバー被告は武漢理工大学での役割の対価として、月給5万ドル(約550万円)と、生活費として上限15万8000ドル(約1700万円)が与えられていたという。

武漢理工大学からはさらに、同大学での研究所の設立費用として150万ドル以上を支給されていたとされる。リーバー被告はその見返りとして、同大学のために働き、特許を申請し、大学名で論文を発行することが期待されていたという。

そのことをリーバー被告は申告しなかったとされる。また、捜査員の調べに対し、「千人計画」との関わりや武漢理工大学との協力関係について、うそを述べたという。

マサチューセッツ地区連邦検事のアンドリュー・レリング氏は記者会見で、「これは中国政府が、戦略的なギャップと見なしたものを埋めようする、非常に直接的な行為だ」と述べた。

<解説> ヒステリー? それとも非伝統的スパイ行為?――馮兆音BBC中国語アメリカ特派員

中国は「千人計画」について、優秀な才能を国内に引き止め、頭脳流出を防ぐのが目的だと説明する。何十万人もの才能ある中国人がアメリカやイギリスなどの最高レベルの大学で学び、そのまま定住してしまうことを、政府は問題視しているのだという。

一方アメリカは、中国が知的財産を繰り返し盗んでいると見ている。アメリカは過去何十年にもわたって、中国が科学および技術分野で窃盗行為をしていると告発している。

米連邦捜査局(FBI)は「千人計画」について、中国による「非伝統的なスパイ行為」を実行するために利用され得ると警告している。ただ、問題として報告されたケースの多くは、スパイに絡むものではなく、金銭的利害関係を完全に申告しなかったなどの倫理規定違反だ。

アメリカは、中国との貿易戦争が始まった2018年以来、「千人計画」への監視を強めている。一方、中国は同計画についておおっぴらに話すのを避けていると言われている。

中国の国営タブロイド紙・環球時報は、アメリカの懐疑的な態度を「ヒステリー」と表現した。

2008年以降、中国国外に生活拠点を置く7000人以上の研究者や科学者が「千人計画」に参加している。その多くは中国系だ。

アメリカの取り締まりが人種による選別につながってはならないと、多くの人が警告している。台湾系アメリカ人の著名なHIV研究者、デイヴィッド・ホウ氏は、あるメディアのインタビューで、「政策を実施するなら、中国人科学者だけではなく、すべての人に対して実施すべきだ」と提言した。