英政府、雇用維持する企業に異例の補助金 給与の8割
新型コロナウイルスの感染対策で英政府は20日、従業員の雇用を維持した企業に対し、その給与の最大8割を支給すると発表した。労働者の解雇を防ぐための大胆な措置となる。
リシ・スーナク財務相は、国内企業が従業員の雇用を維持した場合、従業員の給与の8割、1人あたり月額最大2500ポンド(約33万円)を政府が補助すると発表した。新型ウイルスのパンデミック(世界的大流行)による失業の拡大を防ぐための措置という。
英政府は現在、市民の接触を大幅に減らすことで感染拡大を防ごうとしている。その一貫として、カフェやパブ、レストランを20日夜から閉鎖するよう指示(持ち帰りのテイクアウトは除外)。ナイトクラブ、劇場、映画館、ジムなどには「できるだけ早く」閉鎖するよう指示した。
この措置によって、国内の各種事業は「相当の打撃を受ける」ことになるとスーナック財務相は述べ、政府が雇用を支えることの重要性を強調した。
このため政府は、従業員がすでに一時帰休させられた企業で、雇用主がこれを中止して休暇扱いに変更し、従業員の雇用を維持した場合、給与の8割をその企業に支給する。
スーナク財務相は、政府のこの措置によって、たとえ事業主が給与を払えなくなっても、従業員は解雇されずに済むと説明。「前例のない時のための前例のない措置だ」と話した。
「職を失うかもしれないと大勢が心配しているのは承知している。家賃や住宅ローンが払えなくなると。食費が払えなくなる、色々な請求が払えなくなると。(中略)いま自宅にいて、将来が不安な皆さんにはこう申し上げます。あなたは決して独りではないと。自分だけで何とかしなくてはならないとは思わないでください」と財務相は述べた。
給与補助は額面給与を対象にし、対象期間は3月1日までさかのぼる。3カ月間続ける予定だが、「必要ならば」さらに継続する方針だと財務相は話した。
この措置は、英歳入関税庁が所管する。財務省報道官は、「数週間以内」に各企業への補助金支給を開始すると述べた。
英産業連盟(CBI)は、「画期的な包括的対策だ」と歓迎。「この国が危機による打撃を最小限に食い止め、また浮上できるよう、企業と政府がかつてない共同歩調をとる。これは、イギリス経済による反撃の第一歩だ」と、キャロリン・フェアバーン事務局長は述べた。
一方で、中小企業連盟は、給与補助の支給が4月末まで持ち越される場合、資金繰りに苦しむ多くの小規模事業はそこまで持ちこたえられないかもしれないと危機感を示した。
英政府による企業や就労者の支援策には、ほかに次のものが含まれる――。
- 企業による付加価値税の納付を6月まで延期
- 小規模事業に無利子の資金援助
- 今年7月の所得税納付期限を半年延期
- 家賃補助やユニバーサル・クレジット(低所得者向け給付制度)の増額を通じて、家賃が支払えなくなる国民に総額10億ポンド近くを提供
英経済調査コンサルタント会社のキャピタル・エコノミックスは、新型ウイルス危機によって国内の失業率が4%未満から約6%に増えると予測している。しかし、政府のこの給与補助がなければ、失業率は世界金融危機の際の8%にまで上がるはずだったという。