イギリスは「流行のピーク過ぎた」とジョンソン首相、ロックダウン緩和策を発表へ

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画像説明, ジョンソン首相はこの日、新型ウイルスによる静養後、初めて定例会見に臨んだ

イギリスのボリス・ジョンソン首相は、来週からロックダウン(都市封鎖)の解除に向けた「包括的な計画」を明らかにすると発表した。経済活動や学校、通勤などを徐々に再開していく方針。

ジョンソン首相は官邸の定例会見で、イギリスは新型コロナウイルスのアウトブレイクの「ピーク」を過ぎたと述べる一方、「2度目の急増のリスク」を冒してはならないと強調した。

また、マスクの着用はロックダウン緩和戦略の一部として「役に立つ」だとの見方を示した。

政府が毎日官邸で開いている新型ウイルス対策についての定例会見で、ジョンソン首相が登壇するのは3月末に新型ウイルス陽性になって以来初めて。

人口約6700万人のイギリスでは、これまでに2万6771人が新型ウイルスで死亡。4月30日の死者は674人だった。

一方、この日には8万1000件以上の検査が行われたものの、政府が4月末までの目標としていた1日10万件には届かなかった。

こうした中、米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界で新型ウイルスによる感染症(COVID-19)から回復した人が100万人を超えた。感染者はこれまでに320万人を超え、その大半が回復しているが、感染確認と回復確認には時差がある。

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制限解除の条件は

イギリス政府はロックダウン緩和するための前提条件として、(1)国民保健サービス(NHS)が事態に対応できること、(2)日別の死者数が「継続かつ一貫して」減り続けること、(3)感染者増加のペースが「対応可能な水準」に下がりること、(4)検査と個人用防護具(PPE)の供給量が今後の需要に確実に応えられること、(5)どの緩和措置も2度目の感染ピークの原因とならないこと――という5項目を打ち出している。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は、で、政府が「制限を解除するのに十分」だとする実効再生産数(感染者1人からの感染者数)について質問した。

イングランド主任医務官のクリス・ウィッティー教授は、「1より大きい数字はすべて間違っていると断言できる」と答えた。

実効再生産数が1より大きくなった途端、すぐに「急速な(感染者)増加が始まり」、「遅かれ早かれ」NHSが飽和するリスクにさらされると説明。今のイギリス全体での実行再生産数は、06~0.9の間だという。

静養後、初めて定例会見に臨んだジョンソン首相も、「私たちはやっと日光を浴びることができる」と話した一方、流行の第2波という「惨事」を防ぐためにも、実効再生産数を1以下に抑え続けなくてはならないと強調した。

「実効再生産数を下げることが、回復に非常に重要になってくる」

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画像説明, 毎週木曜日に医療従事者などを称えて拍手を送る「Clap for our Carers」に参加するジョンソン首相

クンスバーグ編集長はさらに、政府がロックダウンを続ける中、経済は「ただただ待たなければならないのか」と質問した。イギリスでは3月中旬からロックダウンが続いており、5月7日に再検討される予定となっている。

首相はこれについて、流行の第2波は「経済的打撃になる」ため、「何としても」2度目の急増を避けなくてはならないと強調した。その上で、COVID-19を抑え続ける方法を模索しながら「経済を徐々に再開」しなくてはならないと述べた。

また、経済活動や学校、通勤の再開、生活や職場の安全性確保については来週以降に詳細な計画を発表する予定だと説明。各施策の開始時期は「流行のどの段階にあるか」によって決まるとし、政府は「科学にのっとって判断する」と述べた。

「来週に発表するのは行程表、選択肢の一覧だ」

ジョンソン首相はこのほか、英オックスフォード大学で開発が進んでいる新型ウイルスのワクチンについても言及。このワクチンは成功すれば、年末には限られた範囲で利用可能になると期待されている。

しかしジョンソン氏は、「(ワクチンが完成する)その日までは、我々は不断の決意と創意工夫とでこの病気に勝たなくてはならない」と話した。

マスク着用は「役に立つ」、渡航者の制限を検討

ジョンソン首相はマスクの着用について、「疫学的な理由だけでなく、職場に戻れるという自信を持つためにも」、ロックダウン解除の戦略の一部として「役に立つ」との見方を示した。

イギリスでは、スコットランド自治政府がすでに、買い物や交通機関の利用時に顔を覆うよう呼びかけている。

一方でグラント・シャップス運輸相は、イギリスに渡航してくる人を空港で隔離する新しい対策について、政府内で「議論が進行中」だと話した。

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