【解説】 新型コロナウイルス、心の健康はどう守る?

カースティー・ブリュワー、BBCニュース

News about coronavirus pouring out of a smartphone

画像提供, Emma Russell

新型コロナウイルスのせいで、世界を先行き不透明な状況に陥った。パンデミック(世界的流行)のニュースは容赦なく続くような、そんな気さえする。こうした状況は人の心の健康に悪影響を及ぼす。特に、ただでさえ不安障害や強迫性障害がある人は、影響を受けやすい。では、どうやって心の健康を守ればいいのだろう?

ニュースが気になるというのは理解できる。しかし、心の健康に問題がある人は、症状が悪化しかねない。

世界保健機関(WHO)が、新型ウイルスのアウトブレイク(大流行)を受けて心の健康を守るためのアドバイスを公表すると、ソーシャルメディアはこれを歓迎した。

WHOのアドバイスには、次のような内容が含まれている。

  • 不安やうつを感じるようなニュースを、見たり聞いたり読んだりするを控える
  • 自分自身や愛する人を守るために役立つ、実用的な情報を仕入れる
  • 毎日1度か2度、決まった時間に情報を仕入れる。流行に関する情報がひっきりなしに流れてくるような状態は不安を引き起こす可能性がある
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不安障害に取り組むイギリスの支援団体「Anxiety UK」のニッキー・リドベター氏は、制御不能な状態への恐怖や、不確実な状態を耐えられないなどが、多くの不安障害の特徴だと説明する。そのため、以前から不安を覚えていた人が現状、大変な思いをしているのは、無理もないことだ。

メンタルヘルスの慈善団体「マインド」のロージー・ウェザリー氏も、「多くの場合、不安の根っこには、知らないものへの懸念や、何かが起こるのを待っている状態がある。新型ウイルスはその状態の巨大版を作り出している」と話した。

では、どのように自分の心の健康を守ればよいのだろうか?

ニュースを制限する、注意して内容を選ぶ

英ケント在住で不安障害を抱えるニックさんは、新型ウイルスに関するニュースをたくさん読むとパニック発作が起きるという。

「不安になると、自分の考えが制御不能になり、とてつもなく悲惨な結果について考え始めてしまう」

ニックさんは特に、自分の両親や周囲の高齢者について心配してしまうと話した。

「普段なら、不安に襲われたらその場を離れることができる。でも今のこれは、自分の手に負えない」

ニックさんの場合、ソーシャルメディアやニュースサイトから長期間離れることで、不安をコントロールできるようになった。また、「Anxiety UK」などが提供するヘルプラインも、役に立ったという。

  • 気持ちが落ち着かない内容を読んだり見たりする時間を制限する。または、ニュースを見る時間を決める
  • 間違った情報も多く広がっている。そのため、保健当局サイトなど信頼できる情報源だけを見るようにする

ソーシャルメディアから離れ、不安の引き金になる内容は非表示にする

マンチェスター在住のアリソンさんも不安障害を持っており、気になることは調べたり、常に情報を摂取しなければならないと感じている。しかし一方で、ソーシャルメディアが不安の引き金になる可能性にも気づいたという。

「1カ月前にハッシュタグを追ったり、裏付けのない陰謀論を見たりしていたらとても不安になった。今にも絶望で泣きそうだった」

アリソンさんは今では、見るべきアカウントを選び、新型ウイルス関係のハッシュタグはクリックしないようにしている。またソーシャルメディアからできるだけ離れ、代わりにテレビを見たり本を読んだりしているという。

  • ツイッターでは、不安の引き金になる単語やアカウントをミュート(非表示)に設定する
  • ワッツアップなどのメッセージアプリやフェイスブックで、あふれる情報に対処できないと感じたら、グループやフィードを非表示にする

手の洗いすぎは禁物

強迫性障害(OCD)の支援団体「OCDアクション」では、新型ウイルスのパンデミックに不安をあおられた人からの支援要請が増えている。

OCDやある種の不安障害を抱える人にとって、定期的に手を洗うべきだという忠告は非常に難しいものだ。

OCDについて著作のあるリリー・ベイリー氏はツイッターで、「OCD患者にとっては難しい時期だ。不潔恐怖と共に生きてきた人たちには、COVID-19への対応は自分の脳をひっくり返されるような体験だ。(消毒剤を何度も使う、ものを触るのを怖がるなど)自分には病気と結びつく行動を、みんながしているのはおかしな気分だ」とツイートした。

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不潔恐怖や潔癖症と呼ばれる症状は、OCDの一種だ。ベイリー氏は、OCDから回復した人たちにとって、手洗い励行は強力な不安の引き金になる可能性があると話した。

「ずっと避けてきた行動をやらなくてはならない。本当に大変だ」とベイリー氏は言う。「前の私は、せっけんや消毒剤を使うことに中毒しているも同然だったので」。

OCDアクションは、何のための行動なのかが大事だという。たとえば、繰り返し手を洗うのは、ウイルス拡散を防ぐためで、推奨されている頻度に留まっているか。それとも、「これが正しい、ちょうどいい」と感じるため、決まった順序で儀式のように行っているのか。

Cleaning products

画像提供, Emma Russell

OCDを抱える人にとって回復とは、家の外に出られるようになることだとベイリー氏は言う。そのため、家の中にこもる自主隔離も厄介だ。

「家にいるよう強制されると、手持ち無沙汰な時間が増える。退屈はOCDを悪化させることがある」

人とのつながりを断たないように

多くの人が自主隔離を始めている今、大事な人の電話番号や電子メールアドレスを知っているか、確認しておくのもいい。

慈善団体「マインド」のウェザリー氏は「定期的に連絡をとりあう時間を互いに決めて、周囲の人とのつながりを感じることが重要だ」と話した。

自主隔離している場合、日々のルーティンを決めると同時に、毎日何かしら違うことをしてバランスを取ると良いという。

そうすれば、非常に生産的な2週間になるかもしれない。「やること」リストをこなしていけるかもしれないし、積んでいた本を消化できるかもしれない。

Downtime - a cup of tea in the garden

画像提供, Emma Russell

燃え尽きに注意

新型ウイルスの流行は向こう数週間、あるいは数カ月続くかもしれない。そうした中で、ひたすらのんびりする時間を作るのは大事なことだ。

慈善団体「マインド」は、自然に触れること、できるだけ日光に当たることを勧める。運動、十分な食事と水分摂取も必要だ。

「Anxiety UK」も、不安に対処するための5カ条「APPLE」を提唱している。APPLEとは、Acknowledge(認める)、Pause(小休止)、Pull back(一歩下がる)、Let go(受け流す)、Explore(探索する)の頭文字だ。

  • Acknowledge認める:不安を感じたらそれに気づき、認める
  • Pause小休止: 普段のような反応をしないこと。反応そのものを、しないこと。いったん止まって深呼吸
  • Pull back(一歩下がる):いつもの不安感がしゃべり始めただけ。自分にそう言い聞かせる。断定的な答えが欲しい気持ちは役に立たないし、無用だと。不安なのは、単にそう思うだけ、感じるだけ。自分が考えた内容をなんでも信じないように。思考は、何かの宣言でもなければ、事実でもない
  • Let go(受け流す):不安な考えや気持ちを受け流す。不安はそのうち過ぎ去るものだから、反応しなくていい。雲や泡になって流れ去っていくところを想像するのもいい
  • Explore(探索):今に目を向ける。ぜなら今まさにこの時、この瞬間、すべては大丈夫だから。自分の呼吸、息をする自分の感覚を意識して。自分の下の地面を意識して。周りを見回して、たった今自分が見聞きしているもの、触っているもの、におっているももを意識して。その次に、別のことに意識を移して。やらなくてはならないこと、不安に気づく前にやっていたこと、または全く違うことでもいい。そうしたことにじっくり丁寧に、自分の意識を集中する
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