【解説】 なぜアメリカで大勢が怒っているのか 人種に関する3つのデータ
BBCリアリティー・チェック・チーム
米中西部ミネアポリスで白人警官に首を圧迫されて黒人男性が死亡した5月25日の事件をめぐり、全米各地で連日、「Black Lives Matter(BLM、黒人の命も大事だ)」などの主張を掲げる抗議行動が続いている。事件に関与した警官4人全員が3日までに逮捕・起訴され、ジョージ・フロイドさんの首を膝で圧迫し続けた元警官の罪状は、殺意があったとする第2級殺人罪に引き上げられた。
ドナルド・トランプ米大統領は暴力化する抗議に対して、軍の投入も辞さない強硬姿勢を示している。
一方で、社会制度に組み込まれた慢性的な人種差別に抗議する動きは、ロンドンなどイギリス各地にも飛び火し、大勢が共感と連帯を示している。
ここでは、アメリカの刑事司法と人種に関する各種統計から、アメリカのアフリカ系市民がどういう経験をしているのかを示す3つのデータを取り上げる――。
1. アメリカではアフリカ系住民が、他の人種より警察に射殺される可能性が高い
アメリカで警察が人を射殺した事件について集計されているデータを見ると、アメリカの総人口に占めるアフリカ系市民の割合に対して、アフリカ系市民が警察に撃たれて死亡する確率ははるかに高いことが分かる。
2019年には、国勢調査によるアフリカ系市民の人口比は14%だったものの、警察による射殺事件1004件でアフリカ系の人が死亡したのは23%超だった。
2. アフリカ系市民が違法薬物関連で逮捕される確率は、他の人種より多い
違法薬物を使用する割合は白人もアフリカ系も同程度だが、逮捕される割合はアフリカ系のほうがはるかに高い。
2018年には、アフリカ系アメリカ人10万人あたり約750人が薬物関連で逮捕された。対して白人アメリカ人は10万人あたり350人だった。
違法薬物の使用に関する全国調査では、使用する割合は白人もアフリカ系も同程度だったが、アフリカ系が逮捕される確率は依然として白人より高い。
たとえば、アメリカ自由人権協会(ACLU)の調査によると、マリフアナ所持の疑いでアフリカ系市民が逮捕される確率は白人の3.7倍だったが、マリフアナの使用率はほぼ同じだった。
3. アフリカ系アメリカ人の方が実刑を受ける
最新データによると、有罪判決を受けるアフリカ系アメリカ人が刑務所に収監される確率は、白人の5倍で、ヒスパニック系の2倍近い。
2018年には、アメリカの総人口におけるアフリカ系市民の割合は約13%だったが、刑務所に収監されている人口の3割近くを占めた。
これに対して、白人はアメリカの人口の6割以上だが、刑務所の人口の約3割だった。
つまり、アフリカ系アメリカ人10万人あたり1000人以上が刑務所にいることになる。白人については、10万人あたり約200人が刑務所に収監されている。
アメリカの刑務所人口とは、連邦あるいは州の刑務所に1年以上の量刑で収監されている人を指す。
アフリカ系アメリカ人の収監率は過去10年で下がってはいるものの、刑務所人口では他の人種より多い。
フロイドさん暴行死事件の時系列
- 5月25日――ミネソタ州ミネアポリスで白人警官に首を圧迫され、ジョージ・フロイドさん死亡
- 5月26日――フロイドさんの死に対する抗議始まる
- 5月27日――抗議が各地に広がる
- 5月28日――トランプ氏、略奪者を「ごろつき」とツイート。「州兵を送り込む」、「略奪が始まれば、発砲が始まる」と書いた。ツイッター社は2つ目のツイートを「暴力賛美」として警告を表示した
- 5月29日――デモ取材中のCNN記者とクルーが生中継中に逮捕される
- 5月31日――6日目の抗議が各地で続く
- 6月1日――トランプ氏、事態鎮圧に軍の投入も辞さないと演説。トランプ氏の写真撮影の前に、連邦公園警察などが抗議者を催涙ガスなどで排除
- 6月2日――8日目の抗議続く。首都ワシントンの各地に州兵配備
読み物・解説
読まれた記事ランキング
このコンテンツは開けません