なぜイギリスでまた大勢がコロナ感染? 重症化は昨年より少ないものの

リアリティー・チェック・チーム、BBCニュース

people queue into football stadium by sign reading 'no covid pass, no entry'

画像提供, Getty Images

画像説明, ワクチン接種証明書か48時間以内の陰性証明を提示しなければ「入場禁止」と入り口に掲示された、イギリスのサッカー競技場

新型コロナウイルスの感染者がイギリスで増えている。イングランドの一部がロックダウン状態にあった昨年冬よりも、現在の方が感染者が多い。ただし、ワクチンが普及したおかげで、入院を必要とする重症者は昨年より少ない。

それでも、一部の欧州諸国をはるかに超える感染者数の急増が心配なことには変わりはない。市中に出回るウイルスが多ければ多いほど、ワクチンという防波堤を突破する確率が高まる。感染リスクが高い人にうつってしまい、医療機関を圧迫する危険も高まる。

数字が示すものは

UK daily cases

イギリス全体の1日の感染者数は増加傾向にあり、最近では1日4万人を超えている。

その一方で、1日に入院する人の数も徐々に増えつつあるものの、昨年秋の水準よりは少ない。

では何が原因で、感染者が増加しているのか。

hospital admissions

マスク着用が減った?

英インペリアル・コレッジ・ロンドンの調査によると、ドイツ、フランス、スペインの人たちに比べて、自分はもうマスクなどで顔を覆わないと答えたイギリス人は、はるかに多かった。

ドイツ、フランス、スペインに比べてイギリスの感染者数は多い。ただし、マスク着用の有無が直接的な原因だとは必ずしも言い切れない。

人から人へのウイルスの伝播防御にマスクは有効だという研究結果は、次から次へと出ている。ただし、マスク着用が感染のアウトブレイク発生をどれだけ抑止するのか、効果を測定するとなると、その因果関係をこれだとはっきり特定するのはずっと難しい。

マスクをするしないと同時に起きている他の様々な要因(たとえば、どれだけ人が密集しているかなど)から、マスクの効果を切り離すのが難しいからだ。

同大学の調査では、スウェーデンとオランダの人たちの方がイギリスよりも、まったくマスクをしないと答える割合が多かった。しかし、スウェーデンとオランダの方が確認される感染者数はイギリスより少ない。

イギリス国内では、スコットランド自治政府はほとんどの屋内で引き続くマスクをつけるよう推奨している。イングランドの政府は、もはや推奨していない。英国家統計局(ONS)によると、スコットランドの人の方が過去7日間でマスクを使ったと答える割合が高かった。しかしそれでもスコットランドではこのところ、入院患者の数が急増している。

規制緩和と交流拡大?

イギリスは大半の西欧諸国に比べて、行動制限を緩和する時期が早かった。諸外国と異なり、イングランド、ウェールズ、スコットランドの人たちは今年の夏からすでに、ナイトクラブへも行けるようになったし、人数無制限で集まれるようになった。

インペリアル・コレッジの調査によると、欧州の近隣諸国に比べてイギリスの人たちは、公共交通機関を使う割合がわずかに高く、外出を避ける割合が低い。

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院による最新調査では、イギリスの人たちが他人と接触し交流する頻度はこの数週間であまり変わっていない。子供においては、9月初めの新学期開始時と、あまり変わっていない。

職場に実際に通勤する人の数は少しずつ増えているものの、今もまだかなり少ない。たとえ職場が開いていても、そこへ向かう人の割合はまだ約半数に過ぎない。

免疫が薄れている?

イギリスはワクチン接種の展開を、他国に先行して大々的に進めた。それによって新型コロナウイルスの感染症COVID-19の重症化を防ぐことで、大勢の命を救ったことは間違いない。しかし、ワクチン接種が他国より早かったからこそ、今になってイギリスの感染者が他国より多いのかもしれない。

ワクチン2回接種後に感染し、症状をアプリに登録した人たちの調査では、感染を防いでくれるワクチンの防御力は接種の5~6カ月以降は、かなり低下するという結果が出ている。

全人口におけるワクチン接種率でかつて世界一だったイスラエルでは、感染者急増はワクチンの効果低下によるものだと専門家たちは分析している。その後、高齢者の間に追加接種がある程度行きわたると、感染者数は再び減少した。

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イギリスでは現在、高齢者への追加接種が行われている。10月17日の時点でイングランドでは370万人が追加接種をうけた。

一方で重要なことだが、2回目の接種から6カ月後でも、重症化を防ぐ免疫力はまだ残っているようだ。

たとえ人口の大半が2回の接種を終えていても、市中感染が増えれば増えるほど、重症化する人が出るリスクも高くなるのは、確かにその通りだ。現在のイギリスで入院患者数が(感染者の少なかった)初夏のころより増えているのは、おそらくそのせいだろう。

けれども全体的な数を見ると、ほとんどの人が未接種で、感染者数が今くらいだった前回の頃に比べれば、今の入院患者の数は減っている。

接種事業の失速?

イギリスのワクチン接種事業は立ち上がりは素早かったものの、ここ数カ月では失速している。2回の接種を終えた人の割合は、人口100万人以上の国の中で、もはやトップ10に入らない。

10月前半の間、少なくとも1回の接種を受けた12歳以上の市民の割合は、ほとんど変化しなかった。

こうした状況で政府報道官は、「感染と入院と死亡の間の関係性を、ワクチン接種事業でかなり弱めることができた。COVID-19に対する防御の最前線が、今後もワクチン接種だというのは変わらない」と強調している。

「追加接種の対象者はどうか進んで、ワクチンを受けてもらいたい。そうすることで、冬が近づく中、きわめて重要な追加の守りを確実に身につけてもらいたい」

イギリスのワクチン接種率は、子供の接種率がなかなか増えないことで、やや偏りが出てしまっている。12~15歳への接種はイギリスで、9月20日から始まった。今のところイングランドで、1回目の注射を受けた12~15歳の子供は15%だ。対するイスラエルでは、すでに12~15歳の子供の半数以上が、少なくとも1回は接種を受けている。

たとえばフランスでは6月から始まるなど、欧州では今ではほとんどの国が、12歳以上にワクチンを提供している。