イーロン・マスク氏は、自身の5人の子どもを名門私立校から退学させ、「アド・アストラ(Ad Astra)」という秘密の学校を設立した。
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- 「アド・アストラ(Ad Astra)」は、2014年にイーロン・マスク氏が設立した学校。
- 詳細はほとんど知られておらず、一般向けのウェブサイトも存在しない。
- この学校について、イーロン・マスク氏は2015年以降、公の場で発言していない。
イーロン・マスク氏は2014年、自身の5人の子どもを、才能ある子ども向けの名門校から退学させ、「アド・アストラ(Ad Astra)」という秘密の学校を設立した。
「アド・アストラ」は、ラテン語で「星へ向かって」という意味だが、マスク氏が設立したこの学校の詳細は、ほとんど知られていない。同氏は2015年、中国の国営放送「北京電視台(BTV)」のインタビューで、この学校について語っている。
「学年という概念はない」と言うマスク氏は、学校を工場の組み立てラインのように扱うのではなく、「それぞれの素質や能力に合った教育を提供する方が理にかなっている」と説明した。
2015年のこのインタビュー以来、マスク氏はアド・アストラについて公の場で発言しておらず、この学校に通う子どもたちの家族も、同様に口を閉ざしている。ウェブサイトや電話番号、学校の管理者や勤務する教師に関する情報も公表されていない。
しかし、非営利組織「Xプライズ財団」の会長ピーター・ディアマンディス(Peter Diamandis)氏は最近、アド・アストラを見学、その教育方針について語っている。同氏が学校を見学できたのは、恐らくマスク氏がXプライズ財団の評議委員を務めていることと関係があるのだろう。
「生徒数31人という小さな学校のこだわりの1つが、倫理や道徳に関する会話だ。これらの会話は、子どもたちがいつか直面するかもしれない、現実世界で起きている事例について議論することで展開される」と、ディアマンディス氏はハフィントンポストに書いている。
その記事の中で、同氏は教師が生徒に提示した質問の例を紹介している。
道徳や倫理の課題として実践されるであろう、アド・アストラで聞いたゲームプレー/ロールプレーの例は次のようなものだ。湖の畔にある小さな町を想像してほしい。ここでは住民の大半が、1つの工場に雇用されている。しかし、工場は湖を汚染し、その生き物を殺している。あなたならどうするだろうか? 工場を閉鎖すれば、皆、失業してしまう。一方で、工場を稼働させ続ければ、湖はダメになってしまう。こうした会話/ゲームプレーを普段から繰り返し行うことで、子どもたちは極めて重要な観点から、世界を見ることができるようになる。
こうした類の道徳的、倫理的思考は、マスク氏にとって珍しくない。同氏は、技術の進歩がもたらす倫理的な問題について、考える必要性を指摘している。アド・アストラでは、こうした類のディスカッションが日常的に行われているようだ。
(翻訳:まいるす・ゑびす/編集:山口佳美)