Joe Raedle/Getty Images
2018年2月にフロリダ州パークランドの高校で起きた銃撃事件を生き延びたデイビッド・ホッグ(David Hogg)氏は、近年増加している危険な悪ふざけ「スワッティング(swatting)」の被害を受けた。スワッティングとは、警察に虚偽の通報を行い、特殊部隊SWATを他人の家に突入させること。
幸い、ホッグ氏はそのとき、人権団体「ロバート・F・ケネディ・ヒューマン・ライツ(Robert F. Kennedy Human Rights)」から賞を受けるために母親とともにワシントンD.C.を訪問中、けが人は出なかった。
だが、すべてがそうとは限らない。
2018年1月、ロサンゼルスに住むタイラー・ラジ・バリス(Tyler Raj Barriss)容疑者は、アンドリュー・フィンチ(Andrew Finch)氏にスワッティングを行ったとして、過失致死容疑で逮捕、起訴された。
被害に遭ったフィンチ氏は、カンザス州ウィチタ在住、2人の子どもを持つビデオゲームのストリーマー(実況配信者)。同氏はゲーム「コール・オブ・デューティ」の掛け金1ドル50セントを巡ってバリス容疑者と口論となった後、スワッティングの通報を受けて駆けつけた警察官に射殺された。
バリス容疑者は、逮捕されるまでに、100人以上に対してスワッティングを行っていたと述べた。
この恐ろしい流行について、見てみよう。
「スワッティング」されると具体的に何が起きるのか
via The Blaze
仮にあなたが、自宅でビデオゲームをプレイし、配信サイトTwitchで、フォロワーに向けてライブ配信しているとする。突然、何の警告もなく部屋のドアが破壊され、SWAT隊員があなたに向かって「両手を上にあげて、床に伏せろ」と叫ぶ —— その一部始終は、パソコンのウェブカメラを通じて配信され、大勢の人が目撃する。
これが「スワッティング」で起こることだ。つまり、サイバー犯罪者は、人質事件が起きた、あるいは逃亡中の銃撃犯がいるなど、深刻な犯罪が発生しているという通報を行い、何も知らない人のところにSWATを突入させようとする。
サイバー犯罪者は、さまざまなテクニックを使って、自分の身元を隠したり、電話の発信元が何も知らない被害者宅であるかのように偽装する。
警察は、重大な犯罪が起きていると言われたら駆けつけるしかない。そして多くの場合、SWAT、爆弾処理班、消防車や救急車などを出動させる。
当初は、ゲームをライブ配信するストリーマーが標的だった
YouTube
「ああ、これはまずいぞ」
「Kootra」というユーザー名でゲームをライブ配信していたジョーダン・マシューソン(Jordan Mathewson)氏は2014年、ストリーミングの途中にカメラに向かって言った。
「家の中を捜索している。何が起きた? スワッティングにあったようだ」
数秒後に警察が突入、配信を見ていた人は、マシューソン氏が手錠をかけられ、身体検査をされ、尋問される様子を見守るしかなかった。
通報がいたずらだったと分かると、警察はマシューソン氏を釈放した。だが、害のないいたずらだったわけではない。いたずらで警察が出動すれば、税金が無駄に使われる。またマシューソン氏のケースでは、学校を含む近隣の建物が危険という理由で封鎖された。
スワッティングのターゲットとなるのは多くは、Twitchなどを使ってゲームをライブ配信するゲーマー。またトム・クルーズ、マイリー・サイラス、ジャスティン・ビーバーなどの有名人もターゲットとなった。
CrowbCat
だが、有名人をターゲットにしても、その状況をリアルタイムで見られるわけではない。大勢の視聴者がいるゲーマーがしばしばターゲットとなるのは、それが理由。
例えば、ストリーミング中に誰かがストリーミングしているゲーマーに腹を立てたとする(あるいは退屈しただけというケースもある)。その誰かは、ストリーミングしているゲーマーを特定できる情報を探し出す。主にはゲーマーが使っているパソコンのIPアドレスが使われる。
スワッティングは一般に知られるようになった。だが、警察には防止する手段はほぼない。
Courier & Press
FBIは2008年からスワッティングを把握していた。だが、深刻な内容の電話を受けたら、警察は適切に対処するほかない。
今のところ、ゲーマーは自分の位置情報や個人情報がTwitchの視聴者に漏れないよう、VPNでIPアドレスを隠すなど可能な限りの対策を講じている。
スワッティング被害の現場をまとめた動画。どれほど恐ろしい体験なのかが分かる(※過激な言葉づかいや表現が含まれているので注意願います)。
(翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集、増田隆幸)