グノシーが挑む「ブロックチェーン専業会社」の全貌、創業者を直撃 ── 株価は高騰

グノシーは2018年7月12日に事業戦略会見を開催。速報のとおり、同社はAnyPayとの合弁会社「LayerX」の設立を発表した。翌日13日の金曜日、グノシー株は大幅に値を上げた。

AnyPayとグノシーの取締役

LayerXはグノシーとAnyPayの合弁会社だ。写真左は、AnyPay取締役の日向諒氏。日向氏はLayerXの副社長を務める(7月12日、グノシー事業戦略会見にて撮影)。

ニュースキュレーションを主軸に置くグノシーはこの日、好調な決算を報告すると、次の成長のシードとなる新たな取り組みを披露した。それが、LayerXだ。LayerXは、グノシーと割り勘アプリやICOコンサルタント事業を行なうAnyPayが50%ずつ出資して8月1日に設立される、ブロックチェーンの事業会社。

グノシーは同日に公開した2018年5⽉期決算で、2018年5月期の連結売上高は112億円(対前年比+44.7%)、営業利益は19.3億円(同+27.8%)と、堅調な収益の拡大を伝えると、創業者の福島良典氏がCEOを退任してLayerXの代表に就任すると発表した。

グノシーとブロックチェーン事業の全貌とは、一体どんなものなのか。

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グノシーの決算説明資料より。

ブロックチェーン参入は早すぎるということはない

グノシー代表

写真左から今回新たにグノシーの代表取締役COOからCEOに就任する竹谷祐哉氏、グノシーCEOからLayerXの代表取締役に就任する福島良典氏。

グノシーはニュースアプリなどのメディア事業の印象が強いが、ここ最近ブロックチェーン関連の研究体制づくりを着実に進めてきている。グノシーの研究チームは2017年に発足され、現在では10名ほどのエンジニアが所属している。

2018年5月には不動産テックのツクルバとブロックチェーンの不動産領域への活用に向けた共同研究を発表。また、6月にはブロックチェーン系の有名な技術ブログ「ZOOM」執筆者のOsuke氏も2018年6月にチームに加わっている。

ただ、この領域は昨年の状況とは大きく変化している。ビットコインの暴落や仮想通貨取引における規制の強まりなどを背景に、ブロックチェーン関連領域は「事業領域としてのポテンシャルに濃淡がある」と多くの人が感じ始めているのが、2018年7月時点の状況ではないか。

なぜこのタイミングでブロックチェーン事業をスタートしたのか? LayerXの代表に就任する福島良典氏は言う。

福島良典氏(以下福島):いま参入するか、研究開発を続けるか、自社のリソースを見ながら考えました。最終的に、ブロックチェーンは既に世界を変えてしまっている、という結論になりました。

仮に1、2年待ってしまうと、タイミングを逸してしまいます。ブロックチェーンが応用される範囲は今は狭いですが、インターネットが様々な領域を浸食したみたいに、ブロックチェーンも同じように浸食していくでしょう。

設立当初はトークンのコンサル業務を主軸に

ブロックチェーン事業の方針のスライド

LayerXの事業内容。LayerX自体がICOを行うのではないことがわかる。

7月12日のプレスリリースによると、LayerXの主な業務は以下の3つだ。

  • ブロックチェーン技術に特化したコンサルティングや開発(自社サービスの開発・運営を含む)
  • トークン事業(独自通貨の設計コンサルティングや開発、ハッキングを防ぐコード監査、技術サロンの運営)
  • 仮想通貨マイニングに関する事業

福島氏によると、これらの中でも注力する事業は「トークン開発」であると語っている。

福島:自社で開発をするというより、既にICOをしているところや、これからICOを検討しているところとの共同開発になり、そこが最も需要があると思っています。

コード監査については、日本ではまだICOが成功しているプロジェクトは少なく需要は顕在化していないのですが、海外では監査の需要はかなり高まってきています。

トークンのコンサルと監査、ここがまずは注力していく分野になります。

今から取引所をやるのは「戦略的にイケてない」

福島氏は12日の事業戦略会見中で「仮想通貨の取引所を始めるつもりはない」と、直近の計画として、金融庁へ仮想通貨交換業者としての申請をしないと明言している。その真意についてこう語る。

福島:取引所の競争は既に終わっていて、今から始めても遅いと考えています。

とくに日本で言う「取引所」は中央集権型の仕組みでブロックチェーンはあまり関係ありません。取引所をやっていてもブロックチェーンのノウハウは貯まりません。

もちろんキャッシュは貯まるので、お金を人材に変えるという手段はありますが、グノシーは幸いにもキャッシュはあるので、取引所をやる必要はありません。

将来的に交換業のようなものが必要になってくるケースはありうると思っているので、全く取得しない方針ではありません。

単に今から中央集権型の取引所をやるのは戦略的に「イケてない」ということです。

LayerXの業務の中に含まれる仮想通貨のマイニング業務に関しても、独特のポジションをとる方針だ。「現在、マイニングは中国に一極集中してしまっている。これは非常によくない状態。日本のお金を使うことで、ブロックチェーン全体のセキュリティーを高められないかという文脈で実施する」(福島氏)と、あくまで仮想通貨による収益を追求するマイニングではないことを強調している。

3年後ROEを30%、将来はブロックチェーンが当たり前になる未来へ

グノシーのCEO交代について、新CEOに就任する竹谷祐哉氏は、グノシーとしてブロックチェーンに本気で注力する、ということのコミットメントの表れだと説明する。

竹谷祐哉氏:グノシーは、“情報を世界中の人に最適に届ける”というビジョンを掲げていて、広く捉えればブロックチェーンも情報の1つです。情報を掲げている会社がブロックチェーンに対して何の事業も持てていないというのは恥ずかしいことです。

今回、元々私と同じ代表だった福島が子会社(LayerX)に移りました。当社としてはそのぐらいのコミットメントをする人事としたつもりです」

グノシーは同日に発表した2019年度から2021年度までの3カ年の経営目標を以下の様に設定している。

  • 営業利益成長率 25%(当該期間の平均値)
  • 純利益成長率 25%(当該期間の平均値)
  • ROE(自己資本利益率) 30%(2021年5月期)

好調なグノシー本体の事業を維持しながら、8月から新たに始まるブロックチェーンという新事業領域でどういうビジネスをつくっていくのか。福島氏の手腕に注目が集まる。

グノシーの3カ年事業計画

グノシーが発表した3カ年の事業計画と目標。

13日、グノシーの株価は同日の値幅制限の上限である1,726円まで上昇(前日比21%)した。しかし、1月10日につけた年初来高値の3,585円からはまだ程遠い。

(文、撮影・小林優多郎)

(編集部より:グノシーの株価を加え、記事を2018年7月13日14:30に更新しました)

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