スパイ活動し放題? サンフランシスコは中国の諜報機関にとって「天国」だった

サンフランシスコ

中国は、サンフランシスコとシリコンバレーを経済およびサイバー諜報活動の最優先ターゲットに位置付けていると言う。

Robert Galbraith/Reuters

  • サンフランシスコとシリコンバレーは、中国がアメリカの企業秘密や技術情報を盗む最優先ターゲットとなっている。
  • カリフォルニア州は、中国の国家安全部(MSS)が「政治的諜報活動および工作活動」を専門とした部署を置いている唯一の州だ。
  • テック企業は —— 政府とハイレベルな契約を交わす企業でさえ —— 諜報活動に対する準備ができておらず、そのような活動を政府に報告するインセンティブもない。

中国の諜報機関の最重要ターゲットとなっているアメリカのサンフランシスコとシリコンバレーでは、何十億ドル相当もの企業秘密や技術情報を盗もうとする活動が広がるばかりだ。ニュースメディア「ポリティコ(Politico)」が報じた

中国など外国政府による攻撃的な諜報活動は、これらの国々が他州やアメリカ以外の国で今後どのような活動を展開しようとしているのかを示していると、ポリティコは指摘する。

諜報活動といえば、アメリカではロシアによる大統領選への介入が議論の的になっている。これは確かに重大な脅威だ。だが、西側諸国における中国の諜報活動は、ますます高度になってきているという。

ロシアの他、韓国やイスラエルといったアメリカの同盟国ですら、活発に諜報活動をしているという。

だが、カリフォルニア州に特に重きを置いているのは、中国の諜報機関「国家安全部(MSS)」だ。

カリフォルニアを重視する中国の諜報活動

ポリティコの報道によると、カリフォルニア州は、MSSが「政治的諜報活動および工作活動」を専門とした部署を置いている唯一の州だ。

これはカリフォルニア州には、影響力のある中国からの移民が数多く存在し、中国系アメリカ人が多いこととも関係している。MSSは将来、政治的な影響力を持つ可能性のある地方公務員のリクルートも視野に入れている。

中国はまた、カリフォルニア州に住む自国民にテック企業に関する情報収集を手伝うよう圧力をかけるため、祖国にいる家族を利用したり、留学生の場合は政府の奨学金の支給を止めると脅すこともある。同じことを、中国に家族のいるアメリカ国民に対しても行っているという。

テック企業は —— 政府とハイレベルな契約を交わす企業でさえ —— 諜報活動に対する準備ができておらず、そのような活動を政府に報告するインセンティブもないと、ポリティコは報じている。これには、カリフォルニアの地域社会が非常にリベラルであるという事実も関係していて、企業も、例えば中国人従業員だけを対象に厳重に身元調査をしていると非難されることを恐れている可能性がある。

また、テック企業の従業員が中国やロシアに情報を売っていたと分かっても、株主や投資家に知られるのを嫌がって、企業幹部が事件して取り上げないこともあるという。要するに、テック企業は諜報活動の可能性がある従業員を法的に処分するよりも、マスコミの悪評を避ける方を選ぶと言うことだ。

このため、サンフランシスコはMSSにとって「天国」のようだと、アメリカのある元政府職員はポリティコに語った。

「時間はたっぷりある。彼らは辛抱強い」

1979年から2007年にかけて、ベイエリアで対諜報活動に携わっていたキャスリーン・パケット(Kathleen Puckett)氏はポリティコの取材に対し、「中国には膨大なリソースがある」と語った。

「中国には時間がたっぷりある。彼らは辛抱強い」パケット氏は続けた。「それが何よりも必要だ」

同様の見解は、7月中旬に開催された安全保障フォーラム「アスペン・セキュリティ・フォーラム(ASF)」で、FBI長官のクリストファー・レイ(Christopher Wray)氏によって繰り返された。

「スパイ防止の観点からすると、中国の活動は最も広く、隅々まで行き渡った、アメリカが国として直面する最大の脅威だ」レイ氏は言う。同氏は一貫して、中国の諜報活動について警鐘を鳴らしてきた。

アメリカ政府もまた、7月26日(現地時間)に公表した報告書で、中国、ロシア、イランがアメリカへのサイバー空間における諜報活動を増大させていて、「アメリカの繁栄にとって重大な脅威」となっていると警告した。

「アメリカに対する外国の経済、産業スパイ活動は、引き続きアメリカの繁栄、安全保障、競争における優位性にとって重大な脅威となっている」アメリカの国家防諜セキュリティセンター(NCSC)は指摘する。「中国、ロシア、イランの3カ国の活動が突出している。活発なサイバーアクターたちが経済スパイ活動に関わり、アメリカの企業秘密や特許情報を盗み出そうとしている」

[原文:San Francisco is a 'nirvana' for China's main intelligence agency — and the center of an intensifying spy war]

(翻訳:R. Yamaguchi、編集:山口佳美)

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