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- アップルのAirPods Proおよびその他のワイヤレスイヤホンは、少量の高い周波数の電磁波を放出する。 携帯電話も同じだ。
- 科学者たちは、これが私たちに害を与えるかどうかまだ不明であり、これまでの研究は、携帯電話からの電磁波(ワイヤレスイヤホンのようなBluetoothデバイスが放出する量よりもはるかに多い)が、がんと関連していないことを示唆している。
- 我々がこれまでに得た証拠によると、消費者は電磁波のことよりも、耳に大きな音がするものを詰め込むのを心配すべきだろう。
インターネット上で、アップルのAirPods ProなどのBluetooth機器が、がんの発症リスクに影響を与えているかを心配すべきだという言説を見聞きしたことがあるかもしれない。
それに対する答えはこうだ。
「みんな、落ち着いて。Bluetoothの電磁波に特に有害なものはない。しかし、私たちの周りにある他の多くの電子機器と同様に、科学者たちは、このワイヤレス技術が100%無害だとは断言できない」
この騒ぎの大部分は、今年初めに公開されたMediumのブログ記事に由来している。この記事では、電磁場によるDNA損傷を研究している生化学者、ジェリー・フィリップス(Jerry Phillips)氏の話を引用している。同氏の研究によると、電磁界の活動が人間のDNAに有害な影響を与えている可能性があり、その結果、電磁波への曝露を制限すべきだという。
「私が懸念しているのは、AirPodsを外耳道に入れると、頭部の組織が比較的高レベルの高周波放射線にさらされることだ」と彼は言っている。
AirPods Proや他のBluetoothヘッドセットが危険であるという決定的な証拠はない
Crystal Cox/Business Insider
高周波(RF)放射が脳のがんや脳腫瘍を引き起こす可能性があるという証拠はない。
投稿の著者はまた、2015年に200人以上の国際的な科学者のグループが、国連と世界保健機関に「非電離放射線(EMF)に関する深刻な懸念を表明する訴えを送った」と述べた。 EMFはAirPodsなどのBluetoothデバイスからも放出される。書簡が送られたことは事実だが、問題の書簡はBluetoothデバイスやヘッドホンについては特に言及していない。その科学者たちは、非電離放射線を放出するあらゆる電子機器、つまり、携帯電話、WiFiデバイス、スマートメーター、ベビーモニター、放送アンテナなど、多くの機器のエネルギー波を懸念している。
「科学者たちは、Bluetoothが発するデジタル信号を含む、無線機器やアンテナなどのあらゆる発信源からの放射が増加していることに、深刻な懸念を抱いている」と、International EMF Scientist Appealのディレクターであるエリザベス・ケリー(Elizabeth Kelley)氏はBusiness Insiderに電子メールで述べた。
ただし、他のほとんどの科学者は、携帯電話やBluetoothヘッドセットからの少量の放射線が危険だと言うことを躊躇している。
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「それらは、細胞内のDNAに直接ダメージを与えてがんを引き起こすだけのエネルギーを持っていない」とアメリカがん協会は述べている。
携帯電話やラジオ、Bluetoothなどの無線技術から放射される電気エネルギーや磁気エネルギーの電波は、DNAの化学結合を切断するX線、ガンマ線、太陽からの紫外線(UV)など、我々がさらされている強力な放射線とは異なる。
実際、カリフォルニア州公衆衛生局が述べているように、携帯電話を頭にかざすと、AirPodsのようなBluetoothヘッドセットよりもはるかに多くの高周波エネルギーが発生する。
※AirPods Proは、通常のAirPodsと同じBluetooth技術を使用している。新しいノイズキャンセリング機能は高周波とは関係ない。AirPods Proは独自に音波を生成し、他のノイズを相殺することで除去している。
人間ではなく、ラットには有害だという証拠は見つかった
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これまでの科学的な研究では、携帯電話の電磁波が、X線や太陽光の紫外線のように人体に有害であることは示唆されていない。
しかし、ラットについては違う。アメリカ国家毒性プログラムは、雄のラットが毎日大量の携帯電話の電磁波にさらされると心臓腫瘍の増加につながるという「明確な証拠」と、脳腫瘍の増加につながるという「いくつかの証拠」を発見した。ただし、雌のラットやマウスについて、同じことは言えない。
科学者たちがこれまでに何度も発見してきたように、実験用ラットで何かが起こったからといって、人間でも同じことが起こるとは限らない。人間が日常的に携帯電話から受ける放射線が、人に害を与えているかどうかを知るのは難しい。
我々が今まで持っている証拠には説得力がない。世界保健機関の外部組織である国際がん研究機関が13カ国で実施した携帯電話の放射線リスクに関する10年間の研究では、平均的な携帯電話利用者に脳腫瘍のリスク増加はないと結論づけられたが、最も頻繁に携帯電話を利用する人についてはさらなる研究が必要だと警告している。繰り返すが、この研究でもBluetooth機器からの放射線量は携帯電話からのものよりも少ないとされている。
放射線のリスクが心配なら、Bluetoothヘッドホンを有線ヘッドホンに交換することをケリー氏は勧めている。この方法でも、脳と携帯電話からの高周波放射との間には数十センチしかないが。
AirPodsなどのヘッドホンの電磁波を心配するのであれば、その前にボリュームを抑えることについて心配する方がいい。
それは科学的にわかっていることだ。大きな音に絶え間なく、繰り返しさらされると、耳鳴りがするようになるだけでなく、難聴を引き起こす非がん性の聴神経腫瘍ができる。その場合は、別の種類のワイヤレス機器を耳に入れなければいけなくなる。補聴器だ。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)