初の渡航歴なし感染者、WHO推奨「今すぐできる」新型コロナ予防はマスクより手洗い

新型コロナウイルス。

1月22日に分離された新型コロナウイルス。

出典:中国国立病原体ライブラリ

中国で感染が拡大している新型コロナウイルスによる肺炎。厚生労働省は1月28日、中国武漢からのツアー客のバス運転手をしていた日本在住の60代男性から、新型コロナウイルスに関連する感染症の症状を確認したと発表した。日本での新型コロナウイルスへの感染者は6例目、武漢への渡航歴のない感染者としては、今回が初めてとなる。男性は1月8~11日、12日~16日に、それぞれ別の武漢からのツアー客をバスの運転手として案内。14日から悪寒や咳、関節痛といった症状があらわれ、17日に奈良県内の病院を受診した。その後、22日に症状が悪化し、25日から奈良県内の医療機関に入院している。

日本での感染拡大がいよいよ懸念される中、私たちはどう対策をすべきなのか。

マスクよりもまずやるべきは「手洗い」の徹底

手洗い

感染症対策では、何よりもまず手洗いが重要となる。マスクなどのエチケットも重要だが、いつもより入念な手洗いを心がけたい。

Alexander Raths/Shuttersock.com

WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルスの流行にともない、新型コロナウイルスの性質やそれによる症状、対策方法を簡単な動画で紹介している。

出典:World Health Organization (WHO)

動画によると、インフルエンザ対策などと同じように、まずは「手洗い」が重要となるという。

コロナウイルスは、飛沫感染(つばや咳)や接触感染によって拡散していることが分かっている。咳やくしゃみなどの飛沫が直接口に入ることで感染するケースや、ウイルスが付着したドアノブなどを触った後に、手で口元や鼻をこすったり、あるいは食べ物を手でつかんで食べたりして感染する場合などが考えられる。

日常生活の中で、多かれ少なかれウイルスが手についてしまうのはしょうがない。だからこそ、手についたウイルスを体内に取り込むのを防ぐために、まずは石鹸などを使った手洗いの徹底が第一の対策といえる。

日本では、対策としてまずマスクをつけることが推奨される場合が多い。マスクによって鼻や口元を触りにくくなったり、くしゃみなどをしたときに飛沫が飛び散ることを防いだりできることは確かだが、マスクはエチケットとしての側面が強い。

咳やくしゃみは「手」ではなく「肘」で防ぐ

肘にくしゃみをする少年

くしゃみをするとき、思わず手で口を覆ってしまうが、手ではなく肘で抑えることが推奨されている。

kreego/Shutterstock.com

また、手の衛生状態を保つために、咳やくしゃみをするときに注意してほしい点がある。

日本では、咳やくしゃみをするときに手で口をおさえる人が多い。実は、この方法だと、手が触れた場所にウイルスが広がってしまい、感染の拡大を助長してしまう恐れがある。そのため、WHOでは「咳やくしゃみをするときには『肘』で押さえること」を推奨している(もちろんティッシュなどで覆うことも推奨)。

また、厚生労働省によると、手などの皮膚の消毒には消毒用アルコール(濃度70%)、物の表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウム(濃度0.1%)が有効であることが分かっているという。

中国最高峰の研究機関が「有効そうな」30種類の薬を報告

未知の感染症に対する懸念は尽きない。しかし感染が拡大する一方で、明らかになってきたことも多い。研究現場では新型コロナウイルスの正体や治療法を探る試みが驚異的なペースで進んでいる。

1月24日には、世界的に信頼されている医療系学術誌Lancetに初期感染者41名の症状についての詳細が報告された。

初期感染者の症状として多かったものは、熱や咳、筋肉痛、倦怠感。その他、数は少ないものの頭痛や下痢、喀血(咳とともに血が出ること)などが報告されている。

また25日には、中国最高峰の研究機関である中国科学院ら中国の複数の研究機関が、共同で新型コロナウイルスに対して効果がありそうな30種類の既存治療薬、漢方などを報告した。現在、この薬や漢方を使った臨床試験を行うために、引き続き研究を続けているという。

加えて、すでに新型コロナウイルスの遺伝情報はオープンデータとして世界中の研究者に共有されている。今後、遺伝情報の解析が進めば、さらにウイルスの性質について分かってくるはずだ。

なお、一部報道では、新型コロナウイルスがさらに変異して人に感染しやすくなった可能性があるとされているが、WHOの26日付けの報告(ウイルスの全ゲノムを解析した結果)では、特徴的な変異は確認されていない。

新たなウイルスの出現に対して、私たちができることに限りはある。しかし、いつまでも無抵抗に、恐怖に怯え続けているわけではない。

適切な方法で身を守りつつ、対策が確立されることを待ちたい。

(文・三ツ村崇志)

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