新型ウイルスでプロ野球とJリーグ「異例のタッグ」専門家と公式戦「解禁」の道筋模索

「新型コロナウイルス対策連絡会議」設立会見

3月2日に開かれた「新型コロナウイルス対策連絡会議」設立会見に登壇した、日本野球機構の斉藤惇コミッショナー(写真左)と日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の村井満チェアマン。

撮影:大塚淳史

「政府が何か言うことで『じゃぁ、(開幕戦を)やろうか』ではなく、(試合を)主催した自分たちが主体的に決めていきたいとなり、村井さんと『やりましょう』となった」(斉藤惇コミッショナー)

新型コロナウイルス感染拡大の先行きが見えないなか、プロ野球とJリーグが異例のタッグを組んだ。

プロ野球を運営する一般社団法人日本野球機構(NPB)と、公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は、「新型コロナウイルス対策連絡会議」を発足した。連絡会議には、NPBとJリーグそれぞれの関係者に加えて、感染症の専門家3人からなる「専門家チーム」を置き、NPBやJリーグが互いに持つ知見や情報を共有する方針。

さらに感染症の専門家から意見やアドバイスを受け、プロ野球、Jリーグの公式戦が安全に行えるように役立てる。第1回会議は、会見翌日の3月3日、正午に開かれる。

「科学的根拠に基づいて」公式戦に挑みたい

会議の主なメンバーは、以下の通り。

新型コロナウイルス対策連絡会議の構成メンバー

・NPB関係者:斉藤惇コミッショナーと12球団の代表者

・Jリーグ関係者:村井満チェアマン、理事・特任理事9人、また日本サッカー協会(JFA)の3人

・専門家チーム:座長・賀来満夫氏(東北医科薬科大学医学部感染症学教室特任教授、東北大学名誉教授)、三鴨廣繁氏(愛知医科大学大学院医学研究科臨床感染症学教授)、舘田一博氏(東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授)

新型コロナウイルスの感染拡大への懸念で、日本のメジャースポーツが次々と試合や大会の延期、中止に追い込まれている。

プロ野球は2月26日に、3月15日までのオープン戦を無観客試合で行うことを決定、Jリーグも2月26日から3月15日までのルヴァンカップやリーグ戦など全ての公式戦の延期を決めた。プロ野球は3月20日に公式戦開幕を控え、Jリーグも3月18日からの公式戦再開を見据えるが、感染への効果的な対策と、流行のピークが見通せない状況では、実施は不透明だ。

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日本野球機構の斉藤惇コミッショナー。

撮影:大塚淳史

3月2日に東京都内で開かれた会見では、NPBの斉藤惇コミッショナーとJリーグの村井満チェアマンは、設立の意図や目的を説明した。

「異例の協力体制を取る決断したのは、多くのファンやスポンサーの皆様が来場する公式戦を実施の準備をするためには、感染症対策の専門家の方々の分析や見解が欠かせない。3人の専門家に協力して頂くことで、私たちが的確な対応をとるために最善のアドバイスを頂けると確信している。(こういった状況は)なかなか我々で結論を出せない。国や地方自治体など行政もこういった先生がたからアドバイスを頂いている。同じことをスポーツ界もやろうと」(斉藤コミッショナー)

日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の村井満チェアマン

日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の村井満チェアマン。2月25日にプロ野球側へ連携を持ちかけたという。

撮影:大塚淳史

「スポーツは夢や希望、活力を与えることができる可能性を持つ。一方で、多くのお客様をスタジアムに迎える。国民の健康に対するリスクも我々自身が持っていることも十分認識しなければいけない。専門家の助言も頂きながら、さまざまな角度から十分な検討をかさねて、(会議を通して)今後の試合運営に臨んでいければ」(村井満チェアマン)

感染症の専門家に、公式戦の開催や再開などの判断を委ねるわけではなく、あくまでアドバイスをもとに、最終的にNPB、Jリーグそれぞれが個別に判断する。

「(専門家3人の)選考には、直接スポーツに関係のない先生たちを意図的に選んでいる。忖度があってはいけない。純粋に医療をという意味で、分析して頂き、我々にコメントして頂きたい。先生たちに『開催していいですよ、何日間待つべきですよ』というのはまず無理ですし、そういうことを求めているわけではない。決定は我々の責任でやる。しかし、それが科学的な根拠というものに基づいたものにしたい」(斉藤コミッショナー)

公式戦開催のJリーグが得た知見を共有

プロ野球、Jリーグ以外にも他団体のリーグや大会があるが、今回は「機動性を持ちたかった」(村井チェアマン)ということもあり、2者間による会議となった。しかし、この会議によって得られた情報はオープンにすることで、活かしてほしいという。

Jリーグは既に公式戦が始まっていたこともあり、一定の知見を得たという。

「(公式戦を開催した際に)統括団体として『手洗い、マスク、アルコール消毒など十分に備えていきましょう』とは伝えたが、実際(Jリーグの)クラブがリーグ戦の第1節を終えた段階で、例えば、(選手と)エスコートキッズとのハイタッチだったり、(チーム)マスコットが数多くの子ども達と触れ合ったり、また、メディアと選手たちの(試合後取材のための)ミックスゾーンでの距離感など、反省材料が豊富に寄せられました。Jリーグが得た知見は野球界にも還元できるものがあるのかなと思う」(村井チェアマン)

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会見場には多くのメディアが集まった。

撮影:大塚淳史

日本を代表するプロスポーツ2団体が動き出したことで、スポーツ界全体を取り巻く厳しい状況が一歩、どうにか前進しはじめた形。新型コロナウイルス対策連絡会議は今後、いつ、どのように公式戦の「解禁」を判断するのだろうか。

(文、写真・大塚淳史)

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