ワクチン接種記録システムは、2021年1月に立ち上がったプロジェクトによって準備された。
撮影:三ツ村崇志
4月6日、政府が開発していたワクチンの接種状況を管理する記録システム(VRS)が完成したとして、報道陣向けに公開された。
ワクチンの一般向け(高齢者向け)接種は、早い自治体では4月12日から始まる。
政府は自治体向けに記録システムのみが導入されている専用タブレット約3万台を配布。集団接種を実施する会場や個別の医療機関で、ワクチンの接種状況をリアルタイムで把握するために活用される。
なお、政府が調達しているタブレット端末数は2021年3月末までに4万1000台。6月末までには更に追加で1万台調達する見込みで、今後ワクチン接種を実施できる医療機関などが増えた際に追加で配布していくことになる。
「入力の負担を少なくして欲しい」
早い自治体では、4月12日からの接種に向けて、接種券が送られている。
撮影:三ツ村崇志
現在日本で承認が済んでいるワクチンはファイザー社製のmRNAワクチンのみ。モデルナ社やアストラゼネカ社のワクチンも承認申請が済んでおり、いずれは複数のワクチンを短期間に接種していくことになるだろう。
副反応の正確な把握や、2度目の接種で誤って別のワクチンを接種しないようにするためにも、デジタル上でいつ、誰が、どのメーカのどのロットのワクチンを接種したのかを記録しておくシステムが求められていた。
今回開発されたシステムでは、接種券番号とマイナンバーや氏名、生年月日などの個人情報が紐付いたデータベースを活用する。現在、各自治体が住民基本台帳や予防接種台帳から、データの抽出作業を行っている段階だ。
ワクチンの接種後、専用のタブレットを使って接種券のバーコードや接種券番号を読み取ると、システム上に登録されている接種券番号と照合され、接種日やメーカー、ロットなどが記録される仕組みだ。タブレットでの読み取りにかかる時間は2〜3秒と短時間だ。
記録システムの流れ、1.読み取りを開始ボタンをタップ。2.タブレットのカメラがバーコードと接種券番号を読み取り。3.読み取りが完了したら次へ。4.接種券番号と紐付いた個人情報が表示される。誤りが無ければ登録して完了。
撮影:三ツ村崇志
マイナンバーと紐づくため、仮に1度目のワクチン接種後に引越をして別の自治体で2度目の接種をすることになったとしても、照会は比較的容易だ。
新型コロナウイルスワクチン担当の小林史明大臣補佐官は、このシステムを構築するために自治体や医療従事者などからヒアリングを重ねてきたと話す。
最も多く要望があったことは「入力の負担を少なくして欲しい」ということだった。
そこで今回、ワクチン接種記録システムの「専用端末」を準備。細かい操作をしなくても、カメラでバーコードや接種番号を読み取るだけで、自動的に接種状況を管理できる仕組みとした。
またタブレットを使用する上で必要となるアカウントは、医療機関がすでに活用している新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)のアカウントと共有。すでにG-MISを使っている医療機関では、既存のアカウントを入力すれば今回のシステムを利用できる。
いよいよはじまるワクチン接種、気をつけたいことは?
予診票のサンプル。予診票はワクチン接種会場に到着する前に記入しておこう。
撮影:三ツ村崇志
4月12日、一般向けのワクチン接種がいよいよ始まる。
すでに各自治体では接種対象者に向けて予診票やワクチン接種券を配布している。
書類が届いた人から順番に、接種券に記載されている予約センターへ電話するか、ワクチンを接種できる医療機関に直接連絡することで、ワクチン接種の予約を取ることになる。
接種当日は、予診票と接種券とともに本人確認用に身分証が必要になる点に注意したい。
予診票などを紛失してしまった場合は、仮に予約が済んでいたとしてもワクチンの接種はできない。書類の再発行はできるもののタイムラグが発生してしまうため、自治体から送られてくる書類は十分注意して保管しておきたい。
ワクチン接種の予約段階からマイナンバーカードなどと紐付けておけば、すべてデジタル上で管理することも可能なように思えるが、小林補佐官は
「プロジェクトチームが立ち上がった際には、すでにワクチンの予約システムは自治体ごとに整備が進んでいたため難しかった」
と、1月に急遽立ち上がったプロジェクトであることから、予約の工程までを含めた整備が難しかったと語った。
(文・三ツ村崇志)