ADXフローレンスの運動檻、コロラド州 フローレンス
Amnesty International
全米でもっとも厳しい刑務所では、フォークですら凶器と見なされる。しかし、ノルウェーでもっとも厳しい刑務所では、フォークは……ただのフォークだ。
違いは食器だけではない。すべての面において、アメリカとノルウェーでは真逆のアプローチを取っている。
アメリカは犯罪者を罰するために隔離して社会から遠ざけているのに対し、ノルウェーは、犯罪者が更生し、社会復帰できるように促すアプローチをとる。だからノルウェーに終身刑はない。
アメリカのコロラド州フローレンスにある最高警備レベルの刑務所「ADXフローレンス」と、ノルウェーで最高警備レベルの「ハルデン刑務所」、この2つの刑務所ほど、その違いが明らかな刑務所はない。
アメリカのすべての刑務所がADXフローレンスほど厳しいわけではない。一方、ハルデン刑務所は最高セキュリティレベルの刑務所だが、ノルウェーの基準に沿っている。
以下、2つの刑務所の違いを見てみよう。
2010年に開設されたハルデン刑務所は、「最高警備レベル」とされているが同時に、世界でもっとも人道的な刑務所だと言われる。
YouTube/John Stark
建築家のエリック・マーラー氏によって、自然に囲まれるよう設計された。窓が豊富に設置され、囚人はいつでも近くの草木を眺めることができる。
Erik Møller Architects
アメリカの基準で考えれば、ハルデン刑務所は典型的な刑務所とはほど遠い。ドアは光がほとんど差し込まない鉄製のドアではなく、取手と窓のついた木製のドアだ。
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檻房は、大学生の寮みたい。
Trond Isaksen / Statsbygg
これにはハルデン刑務所の信条が背景にある。「どんな危険人物であろうと、人間らしさを感じることができれば、規則に従って生活できるようになる。悪人のように扱われては、更生しない」
STR New/Reuters
囚人が使う食器にも敬意を払う。囚人たちは夕食を一緒につくり、一緒に食べる。彼らは刑務所内の購買でフルーツを買うことができ、また陶芸クラスを受講することもできる。
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レクリエーションルームでは、テレビゲームをしたり、DVDを見て交流することができる。たまに刑務所の守衛が映画のチョイスを手伝ったりもする。
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バスケットボールコートやボルダリングの壁があるジム!
Trond Isaksen / Statsbygg
囚人には、アメリカでもっとも警備レベルが“低い”刑務所と同じような仕事が与えられる。凶器になりかねない工具を使用するような仕事だ。休憩時間にはレコーディングスタジオで楽器を演奏して、スキルを磨くこともできる。
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信仰を持つ囚人のために礼拝堂があり、地元の宗教の指導者を呼んで儀式を行うこともある —— 警備レベルの高い刑務所では珍しい。
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一方、7500km離れた地に1994年に開設された「ADXフローレンス」がある。全米一危険な犯罪者を収監する刑務所として知られる。
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ADXフローレンスの通常の檻房。
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檻房は、驚くほど離れて設置されている。厳しい警備のため、囚人たちは排水管を通して話したり、数少ない窓を通してジェスチャーでコミュニケーションを図る。
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独房に収監された囚人は、他の囚人と接触する機会がない。閉じ込められた部屋で、1日23時間を孤独に過ごす。
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囚人はコンクリートの厚い板の上で眠り、ほとんど日の光を浴びることはない。ADXフローレンスの別名は「ロッキー山脈のアルカトラズ」だ。
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囲いの中で1日2時間、週5回の運動の機会を与えられた囚人もいる。しかしそれは「ステップダウンプログラム」の一員であればの話。素行の良い囚人を警備レベルの低い刑務所に移すプログラムだ。
Exercises cages at the US Administrative Security Facility, or ADX Florence, in Florence, Colorado.
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彼らの唯一の普通の人とのふれあい —— 友人や家族の訪問 —— は、ほとんどの場合、手錠をはめられ、ガラス越しに電話を通して行われる。
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2017年始めの時点で、422人の囚人を収監。多くは終身刑だ。彼らはもう二度とフォークやテレビのリモコン、温かいベッドに触れることはない。
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