1. Home
  2. ライフスタイル
  3. あなたも騙されているかも。統計数値のウソ

あなたも騙されているかも。統計数値のウソ

あなたも騙されているかも。統計数値のウソ

20150104_tokei.jpg

最近、数値をもとにした広告や宣伝を多く見かけます。

たとえば、「3ヶ月でマイナス10キロ達成」「1,000万円を貯めた多くの人がやっていること」「負け犬女性の30%が持つ習慣」などです。

事実を調査、分析し意味を見つけ出すというのはビジネスの基本ですし、筆者もコンサルタントの基本のとして、最初に学んだことでもあります。

統計数値を鵜呑みにしてはダメ

ただ、出てきた結論に違和感を感じるあることもしばしば。

その違和感の原因は意味の出し方にあることがほとんど。なぜなら、そこには「主観」が入ってしまうため、それが必ずしも自分の価値観とフィットするとは限らないからです。

さらに突き詰めると、事実そのものにも「主観」が入ってしまうことも。数字やグラフを示されるとつい信じたくなってしまいますが、それに騙されない目を養うことが大切です。

統計というものは、その基礎は数学的なモノであるが、科学であると同時に多分に技術的でもあるというのが本当のところである。ある範囲でなら、非常に多くのごまかし、あるいは歪曲化でさえ可能なのである。

統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門』P.189より引用

ここでは、具体的な2つの例を使って数値の見方を考えたいと思います。

偏りがちなサンプルでの作為「我が校を卒業すれば金持ちに」

ある大学の広告記事に「○○年卒業生の平均収入は3,000万円」とありました。公的なものなので、まったくの嘘ではないと思います。

ただ、このようなインパクトの強い数値には、どれくらい真実味があるのでしょうか。

統計をとるためにはまず、サンプリングという調査の対象となる全体の集団から、 実際に調査する標本を抽出する作業を行ないます。

卒業生の中には住所不明の人が多いし、住所がわかっていても回答しない人がほとんどなので、一部の回答してきた人を全体の代表として捉えるのです。

つまり、この平均所得は全卒業生のうち、住所がわかっていて、しかも回答をした人からなるサンプルをもとにしていることが分かります。

でも、このサンプルが全体を代表しているといえるでしょうか。

この人たちの所得が、質問用紙が届かなかったり、届いても回答しなかった人たちの所得と同じと考えていいとは思えません。

たとえば、企業の重役や有名な弁護士といった「成功している人」はネットで探すことができるため、住所不明にはなりません。住所のわからない人は、輝かしい成功をしていない、一般労働者やフリーターなど高額な収入はない人たちです。

また、質問に回答しない人も、プライバシーの問題をさしおいても、自慢できるほどの収入がないと考えることができるかもしれません。

このことから、このサンプルには平均所得を低くする2つのグループを入っていないことが分かります。

3,000万円という数字は、卒業生のうちでも住所がわかり、しかも所得を喜んで教えてくれるような人たちなのです。しかもこの自己申告が正しいものであるとも限りません。

平均値・中央値・最頻値の作為「我が社なら高収入が得られる」

多くの企業が平均給与を発表しています。しかしはたして「平均」とは本当に信じられるものでしょうか。

平均値とは、全従業員の給料の総額を頭数で割ったもの。たとえば、以下の構成の場合、平均給与は1,131万円と発表することができます。

◇収入

9,000万円:1人

3,000万円:1人

2,000万円:2人

1,000万円:4人

720万円:4人

600万円:1人

400万円:12人

給与総額:28,280万円/社員数:25人

算術平均:1,131万円

しかし、入社して1,131万円以上の給料をもらっている人は25人中4人しかいません。

標本の分布を示す基準として、この算術平均の他に中央値最頻値というものがあります。中央値とは、データを順に並べたとき中央に位置する数値で、この場合は13人目がもらっている給料、600万円です。

また、最頻値とは最も頻繁に出現する値のことで、この場合は12人の給料、400万円です。

◇収入

9,000万円:1人

3,000万円:1人

2,000万円:2人

1,000万円:4人

720万円:4人

600万円:1人※中央値

400万円:12人※最頻値

給与総額:28,280万円/社員数:25人

算術平均:1,131万円

つまり、社員の半数が400万円で働いている企業なのに、その3倍近くの数値を「平均給与」として発表することができるのです。

この3つの基準は、どれも「平均」として発表できますが与える印象はだいぶ違ってきます。こういった事象は、悪意の有無に関わらず日常的に起こっているのです。

統計についてより詳しく知りたいなら、ダレル・ハフ著『統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門』を読むべき。統計で人をだますテクニックが、事例付きで分かりやすく掲載されています。

英国の政治家ディズレーリは「嘘には3種類の嘘がある。普通の嘘、大掛かりな嘘、そして統計である」と言いました。数値を見る目を養い、自分にとってベストな選択をすることが、本当に優秀な人の条件かもしれません。

統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門

著者:ダレル・ハフ

翻訳:高木秀玄

出版社:講談社

Photo of hands holding pencil and pressing calculator buttons over documents via Shutterstock

(鈴木くらら)

  • facebook
  • X
鈴木くらら
経営コンサルタント。ビジネスエグゼクティブとの対話を通じて、企業のビジョンや戦略策定の支援を行っている。人が豊かさを感じられる社会を目指しつつ、自分も愛猫と共に人生を満喫中。美しいものを纏うことが好きで、ブランド品は200点以上、着物の数は30枚以上に。読書フリークでもあり書籍は1万冊以上所持。ブログ

    おすすめ

    powered byCXENSE

    JOIN US

    MASHING UP会員になると

    Mail Magazine

    新着記事をお届けするほか、

    会員限定のイベント割引チケットのご案内も。

    会員限定コンテンツ

    DEI、ESGの動向をキャッチアップできるオリジナル動画コンテンツ、

    オンラインサロン・セミナーなど、様々な学びの場を提供します。