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全量戻し「水利用と別問題」 JR東海社長、工事影響は否定

2021年3月26日 11時59分 (3月30日 00時08分更新)
 リニア中央新幹線南アルプストンネル(静岡市葵区)工事を巡り、JR東海の金子慎社長は二十五日、東京都内での定例会見で、工事で県外に流出する湧水全量を静岡側に戻すのは、「大井川中下流域の水利用とは別問題」と述べ、工事の影響を回避するためではなく、静岡県の要求があるためとの認識を示した。国土交通省が示した有識者会議の中間報告素案で、工事で山梨県側に湧水が流出しても「大井川の下流では河川流量は維持される」としたことを踏まえた。
 一方、静岡県は「長い時間をかけ、下流の表流水や地下水に影響する恐れがある」と、素案に反発。川勝平太知事は二十三日の会見で引き続き全量戻しを求め、「(工事に)黄信号がともった」と述べた。
 金子社長は素案を「一つの成果」と評価した上で「有識者会議では水利用に影響ないと議論されたが、静岡県が戻すべきだと言うので全量戻しを提案した」と説明。影響があるとする静岡県の見解には「根拠が分からない」と述べた。山梨、長野県側に流出した湧水をためておき、静岡側に戻すJRの案については山梨、長野両県に合意は得ておらず、金子社長は「(合意できるか)まだ分からない」とした上で、「他の方法は考えていない」とも明かした。
 JRは二〇二一年度の重点施策の一つにリニア計画の推進を掲げ、政府の財政投融資の借り入れなどから設備投資に四千三百五十億円を投入する。静岡工区分の計上は見送ったが、金子社長は「いつでも着工できる準備をしている。早期開業に向けて取り組む」と強調した。
 一方、東京都調布市で発生した道路陥没事故の原因として、東日本高速道路(NEXCO東日本)の有識者委員会がまとめた再発防止策で、事故原因となった特殊な地盤は、リニア工事で同じ大深度工事を計画する首都圏、愛知県にはないと説明。その上で「より安心してもらう情報を集める」として、一部の工区で着工時期を数カ月遅らせる考えを示した。 (牧野新)

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