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掛川市が誤って緑地売却

2019年12月28日 02時00分 (5月27日 05時35分更新)

◆払い下げ不可の「行政財産」

造成が中断している緑地=27日、掛川市家代の里で

 掛川市北西部の住宅団地「家代(いえしろ)の里」で、市が行政財産として確保しなければならない緑地を、市内の不動産業者に売却していたことが分かった。区画整理事業で地権者から引き継ぎ、払い下げてはならない土地だったが、売買しやすい普通財産として管理していたため売ってしまったという。市は過ちを認めた上で土地の差し戻しを求めているが、不動産業者は宅地開発計画を大幅に変更しなければならず、交渉は難航している。
 家代の里は、広さ三十四万四千平方メートルに約八百戸が立つ。問題の緑地は宅地開発が進んでいない部分に位置する三千九十二平方メートルで、市が昨年三月に約一千万円で売却し、所有権の移転登記が完了した。すでに不動産業者は緑地を削って樹木を伐採したり、土砂を搬出したりする土地造成に一部着手したが中断を余儀なくされている。
 市長名で交わされた土地売買契約書には普通財産と明記。不動産業者の担当者は「行政財産と分かっていれば買うはずもなく、詐欺被害にあったようなものだ。今更返せと言われても納得できない」と憤る。緑地部分の土地購入後、新たに周囲約二万二千平方メートルの土地を買い増したり、宅地分譲の図面作成を依頼したりするなど、計八千五百万円の事業費を投入している。
 市管財課によると、昨年八月に問題の緑地近くで計画されていた都市計画道路の廃止に伴う手続きで、公共用財産として売却してはいけない土地だと判明し、市の瑕疵(かし)を認めている。返還に向けた交渉は今年八月から四回続いているが、担当者は「売却価格で折り合いが付くとは思っていないが(不動産業者から)明確な条件が出ていない」と述べ、膠着(こうちゃく)状態が続けば土地の明け渡し訴訟も検討しなければならないという。
(赤野嘉春、写真も)
 <行政財産> 公の目的に利用される財産で、貸し付けや売却、譲渡などは原則禁止されている。掛川市が売却した緑地は、すでに解散した区画整理組合から公共用地として市に帰属された土地で、地方自治法で売り払いできないとされる。

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