US Open 2018pinterest
Anadolu Agency//Getty Images
セリーナ・ウィリアムズ(Serena Williams)、大坂なおみ(Naomi Osaka)

女子シングルス決勝で大坂なおみと戦ったセリーナ・ウィリアムズ。主審から3回の規則違反を宣告されたことが物議を醸している。第2セットの第2ゲームで主審はセリーナのコーチがスタンドから指導していたとして警告。セリーナはこれに対して「勝つために不正はしていない。それだったら負ける方がマシ」「人生で不正をしたことは一度もない。母親としても正しいことのために戦っている」と抗議。また第5ゲーム終了後にセリーナがラケットを叩きつけた行為にも規則違反として1ポイントのペナルティを科した。セリーナはこの判定に対して主審に抗議。「あなたは嘘つきだ。いつあなたは私に謝るの? 私に謝るべきよ。謝って。あなたは私から1ポイント奪った。あなたは泥棒よ!」。この発言が暴言だとして1ゲームのペナルティが科された。この判定に観客からは抗議と怒りの声が! 

2018 US Open - Day 13
Matthew Stockman//Getty Images
セリーナ・ウィリアムズ(Serena Williams)

試合後のインタビューでセリーナは大坂選手を祝福。「大坂選手はとてもいい試合をした。これは彼女にとって初めてのグランドスラム。みんながここに応援しに来ていたのを知っている。この瞬間をベストのものにしましょう。もうブーイングはしないで」とコメント。その上で記者会見では、主審の判定が性差別的だと主張した。「私は女性の権利のため、女性の平等のためにここで戦っている。私が泥棒と言ったことで、彼は私から1ゲーム奪った。これは性差別的だと感じる。男子選手が泥棒と言ってもあの主審はその男子選手から1ゲームを奪うことはしない。私にとって非常な驚きだった」。セリーナは試合後、大坂選手とはハグをしたけれど主審との握手は拒否している。

このセリーナの主張に元テニス選手のビリー・ジーン・キングも反応。「女性が感情的になると『ヒステリーを起こしている』と言われペナルティを課される。男性が同じことをすると『率直にものを言う』と言われ波紋は起きない。セリーナ、ダブルスタンダードを告発してくれてありがとう。同じような声がもっと必要」とツイートした。

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また男子選手からも同じ指摘が。元選手のアンディ・ロディックは「もっとひどいことを言ったことがあるけれど、1ゲームのペナルティが科されたことはない」と、元選手のジェームズ・ブレークも「もっとひどいことを言ったことがあると認めよう。でもペナルティは課されなかった」と告白している。

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一方で新聞「テレグラフ」などは「性差別の主張は敗北から目をそらせるためのものだ」とセリーナの態度を批判している。また最初のペナルティとなったコーチからの指導についてセリーナは否定しているけれど、コーチのパトリック・ムラトグルーはスタンドから指導したことを認めている。試合後にコーチは「みんなやっているし、みんな知っている」「ルールがあるのは知っている。でもグランドスラムの決勝で失敗はできない」とコメント、しかし「セリーナが私の方を見ていたとは思わない。だから彼女は私が指導をしていることを知らなかっただろう」と語った。コーチが指導をしたこと自体は事実なので、主審の判断は正しかったという声も挙がっている。全米オープンの主催者も主審の判断は最終的なもので見直すことはないと発表。またセリーナの3つの違反に対して合計1万7,000ドル(約188万円)の罰金を科すことを明らかにした。

テニス界だけでなく、スポーツ界やアメリカ全体で大きな議論を巻き起こした今回の事件。セリーナの抗議をきっかけに他の選手から新たな主張が起きる可能性もある。テニス界やスポーツ界のダブルスタンダードを巡ってこれからどのような議論が起きるのか注目したい。

text: Yoko Nagasaka