世界最大のゲーム見本市“E3 2021”で発表された、Nintendo Switch用ソフト『メトロイド ドレッド』(2021年10月8日発売予定/価格7678円[税込])。本作は、2003年にゲームボーイアドバンスで発売された『メトロイド フュージョン』以来、約19年ぶりとなる2D『メトロイド』シリーズの新作だ。

 今回、『メトロイド ドレッド』を紹介するメディア向けのイベントが行われ、デモプレイによる特徴の紹介とともに、『メトロイド』シリーズの開発者である任天堂 坂本賀勇氏へのQ&Aセッションが行われた。本記事では、このイベントで紹介された情報とともに、坂本氏へのQ&Aセッションをお届けする。

シリーズ新作『メトロイド ドレッド』を動画付きで徹底解説。恐怖の中で味わう探索のおもしろさ。開発者・坂本賀勇氏によるQ&Aセッションも
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『メトロイド ドレッド』とは?

 まずは『メトロイド ドレッド』の概要を説明しよう。前述の通り、久しぶりの2Dシリーズの新作となるわけだが、本作は2D『メトロイド』としては、初代『メトロイド』(1986年発売/ファミコン ディスクシステム)、『メトロイドII RETURN OF SAMUS』(1992年発売/ゲームボーイ)、『スーパーメトロイド』(1994年発売/スーパーファミコン)、『メトロイド フュージョン』(2003年発売/ゲームボーイアドバンス)に続く、5番目のナンバリング。本作の初公開映像に“METROID 5”という文字が出るのは、そのためだ。

※上記のほか、2Dとしては初代『メトロイド』のリメイク作『メトロイド ゼロミッション』、『メトロイドII』のリメイク作『メトロイド サムスリターンズ』がある。

 タイトルの“ドレッド”は“恐怖”という意味で、その名の通り、本作のコンセプトのひとつが“恐怖”となっている。その恐怖の対象となるのが、本作から新たに加わった敵“E.M.M.I.”(読みかたは“エミー”)だ。E.M.M.I.は、銀河連邦の調査用ロボットだが、なぜかサムスを執拗に追跡してくる。しかも、サムスの通常攻撃はE.M.M.I.に一切のダメージを与えられないという。

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『メトロイド ドレッド』動画“E.M.M.I.に追われる恐怖”

 もともと弾数やエネルギーに制限がある中で未知の惑星、基地を探索していくのが『メトロイド』のおもしろさであり、ある程度、弾数などが減った状態のときに、先へ進んで回復のスポットを見つけるか、もしくは安全策を取って戻るか、といった選択を求められる状況になるのだが、今回はそこにE.M.M.I.に見つからないように進む(戻る)&追われるという恐怖が加わるわけだ。

 なお、記事末尾のQ&Aでも出てくる話題だが、この『メトロイド ドレッド』は、もともと15年前より開発の構想がされていた。だが、当時は考えていたコンセプトが実現できなかったとのことで開発を断念(詳細な理由は後述のQ&Aにて)。15年の時を経て、完成することになったものだ。

 制作は、任天堂の『メトロイド』シリーズを手掛けてきたチームと、スペインのゲーム開発会社マーキュリースチームエンターテインメントとの共同開発。マーキュリースチームエンターテインメントは、前作にあたる『メトロイド サムスリターンズ』の開発会社で、『メトロイド』シリーズを深く理解するチームとして、坂本氏からも絶大な信頼を寄せられている。

※前作『メトロイド サムスリターンズ』の坂本氏&マーキュリースチームエンターテインメントへのインタビューはこちら

『メトロイド ドレッド』の特徴

 概要が長くなったが、今回のメディア向けイベントで明らかになった点を記していこう。まず本作のサムスのアクションから。

サムスの新アクション

 今回サムスは、シリーズでもっともスピーディーで快適に動けるようになったほか、従来のアクションがパワーアップしている。まず前作『メトロイド サムスリターンズ』で加わったフリーエイムは走りながら狙えるようになり、敵に強力な近接カウンターをくり出すメレーカウンターも同様に走りながら発動できるようなった(ダッシュメレーという名称)。

シリーズ新作『メトロイド ドレッド』を動画付きで徹底解説。恐怖の中で味わう探索のおもしろさ。開発者・坂本賀勇氏によるQ&Aセッションも
シリーズ新作『メトロイド ドレッド』を動画付きで徹底解説。恐怖の中で味わう探索のおもしろさ。開発者・坂本賀勇氏によるQ&Aセッションも

 これだけで探索がさらに快適になることがわかるが、さらに新アクション&アビリティとして、狭い隙間をくぐり抜けるスライディング、青く光る壁や天井にくっついて移動をするスパイダーマグネット(くっつきながら攻撃やメレーカウンターも可能)、光学迷彩で姿を隠すファントムクロークなどが追加されている。

シリーズ新作『メトロイド ドレッド』を動画付きで徹底解説。恐怖の中で味わう探索のおもしろさ。開発者・坂本賀勇氏によるQ&Aセッションも

『メトロイド ドレッド』動画“サムスのアクション”

本作の探索要素&E.M.M.I.の存在

 続いて、探索要素。これまでの2D『メトロイド』シリーズと同じく、本作も複数のエリアが連なった大きな構造のステージになっている。各エリアには壊れる壁や、スライディングやモーフボール状態じゃないと通れない狭い通路などがあるが、ひとつのエリア内で探索できる自由度はこれまで以上に高くなっているという。

『メトロイド ドレッド』動画“エリアの探索”

 デモプレイでは、溶岩エリアがあることなどが明かされ、通常のスーツでは高熱に耐えられないといった紹介もあったことから、今回もグラビティスーツなどのパワードスーツのバリエーションがあると推測される。

 そして、探索の最大の障害となるのが前述のE.M.M.I.。E.M.M.I.は、通常はパトロールモードとして徘徊しており、一定範囲の音を検知する。音を検知しなければE.M.M.I.はそのままパトロールを続けるのだが、なんらかの物音を検知した場合は一目散にその地点へと向かってくる。そこで、E.M.M.I.がサムスを視認すると、サムスは捕獲対象とされてしまう。そうなるとE.M.M.I.に高速で追跡され、捕らえられればほぼ即死となり、ゲームオーバーとなってしまうわけだ。

『メトロイド ドレッド』動画“E.M.M.I.からの逃走”

 E.M.M.I.には床も壁も天井も関係なく、躊躇することなく進んでくる。そのなめらかな動きが恐怖をあおってくるのだが、下手に対抗しようとするとアウト。とにかくE.M.M.I.から逃げる必要がある。なお、別の部屋に移ってたとしても、E.M.M.I.はすぐに追いかけてきてしまう。もし視認され追跡が始まってしまった場合は、遠くまで逃げるしかない。

 一方、近くでも検知されない手段もある。それが前述の新アビリティ、ファントムクロークだ。ファントムクロークの発動中はE.M.M.I.の信号にも検知されず、やり過ごすことができる(ファントムクロークで隠れていても接触されると見つかるが)。ただし、ファントムクロークの使用中はアクションが制限されるうえ、専用のエネルギーが消費され、そのエネルギーが切れた場合、代わりに体力を消費することになる。体力を消費してでも姿を隠すか、それとも見つかることを選ぶか、ここもプレイヤーに選択が求められる場面だ。いかに効率よく使いつつ、E.M.M.I.の警戒をかい潜るかが、本作の大きなポイントになる。

シリーズ新作『メトロイド ドレッド』を動画付きで徹底解説。恐怖の中で味わう探索のおもしろさ。開発者・坂本賀勇氏によるQ&Aセッションも

 シリーズ作『メトロイド フュージョン』をプレイした人ならば、このE.M.M.I.に対して「SA-Xみたいなやつか」と思うだろう。SA-Xは、サムスと同じ姿をした敵(詳しくは、『メトロイド ドレッド』の公式サイトのストーリーをチェックしてほしい。わからなくても問題ないです)で、こちらもサムスを執拗に追いかけてくる。ただ、SA-Xは突発的に登場して直線的に追いかけてくる短期のイベントに近い存在なのに対し、E.M.M.I.は探索中でもつねに警戒をしないといけない、いわゆるスニーキング要素が加わった存在。どちらも嫌な存在だが、SA-Xは突発的に、E.M.M.I.はジワジワと来るといった違いがあるように思う。

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『メトロイド フュージョン』より。サムスを追いかけてくるSA-X(画面下部)。

 なお、E.M.M.I.の場所はマップで確認できるうえ、近づくと独特の電子音が聞こえてくる。いきなりE.M.M.I.に遭遇するということはないと言えるが、電子音が恐怖の対象としてすり込まれ、音が聞こえただけで逃げたくなるという状況になりそうだ。

 ちなみに、プレゼンテーションの中では、「この時点ではE.M.M.I.に対抗できる武器がないため、避けるしかない」という発言があった。おそらくだが、先のステージへ進んでいけば、E.M.M.I.に対して何らかの対処ができる武器も登場してくるのだろう。

『メトロイド ドレッド』動画“探索とおなじみの要素”

任天堂 坂本賀勇プロデューサー:Q&Aセッション

 記事の最後は、『メトロイド』シリーズを手掛けてきた、『メトロイド ドレッド』のプロデューサー・坂本賀勇氏へのQ&Aセッションをお届けしよう。ちなみに、坂本賀勇氏は『ファミコン探偵倶楽部』の開発者でもあり、2021年5月に発売されたリメイク作にも深く関わっている。ファミ通.comでは、『ファミコン探偵倶楽部』のインタビューも掲載しているので、合わせて読んでいただきたい。

任天堂 坂本賀勇氏(さかもと よしお)

『メトロイド ドレッド』プロデューサーを務める。これまで携わってきたタイトルは『メトロイド』のほか、『ファミコン探偵倶楽部』、『トモダチコレクション』シリーズなど。(文中は坂本)

――『メトロイド ドレッド』は長年に渡って噂されてきました。このゲームの発売になぜこんなに時間がかかったのでしょうか。ずっと開発をしていたのでしょうか?

坂本いえ、そういうわけではありません。じつは15年前からコンセプトはあったんですが、当時の技術、ハードウェアの性能ではこのコンセプトはうまく行かないと思って、開発をやりかけたんですが、途中で中止したんですね。その後、もう一回チャンスがあったんですが、そのときもイメージ通りのものにはならないと中止して。その後、前作の『メトロイド サムスリターンズ』をマーキュリースチームエンターテインメントと作ったのですが、彼らと出会ったことが、今回の『メトロイド ドレッド』開発のきっかけになりました。前作をいっしょに開発してみてわかったことですが、彼らの能力やセンスなどがすばらしく、本当にすごくいいチームで、我々といっしょにひとつの大きな目標に向かってやっていけるチームだと信じられたんです。ですので、『メトロイド ドレッド』を開発できる条件が整うまで15年かかってしまったというのが実情ですね。

――2Dの『メトロイド』で完全新作が出るのは久しぶりです。このスタイルのゲームがこのタイミングで復活する理由は?

坂本先ほどの答えと似てくるかなと思いますが、2D『メトロイド』の次回作、要するに『メトロイド フュージョン』の次回作は『メトロイド ドレッド』であるべきだと思っていました。『メトロイド サムスリターンズ』を作ったマーキュリースチームエンターテインメントとの出会いによって、その条件が整って、いまが作るべき時になったと思いました。

シリーズ新作『メトロイド ドレッド』を動画付きで徹底解説。恐怖の中で味わう探索のおもしろさ。開発者・坂本賀勇氏によるQ&Aセッションも

――『メトロイド ドレッド』のコンセプトが技術の面で実現できなかったとのことですが、その具体的な理由をお聞きできますか?

坂本15年前というとニンテンドーDSの時代になります。あのスペックでは、『メトロイド ドレッド』で作りたかったものをちゃんと正しく表現するには無理があったというのが大きな理由です。その後のハードウェアではスペック的には上がってきていましたが、作る体制などが整っていなかったということが障害になってしまっていました。けっきょく、くり返しなりますが、マーキュリースチームエンターテインメントとの出会いを経て作れる体制になりまして、その時期に現役でいちばん親しんでもらっているハードがニンテンドースイッチだったので、スイッチで作ることになったということです。

――『メトロイド ドレッド』は、過去の2Dシリーズに影響を受けたものだと思いますが、とくに影響を受けたものはありますか?

坂本影響を受けたと言いますか、『メトロイド フュージョン』のSA-Xの遊び、あの部分がとても参考になりましたし、あの遊びをもっと広げていきたいと思ったことが大きかったと、自分では思っています。

――今回の『メトロイド ドレッド』では、サムスの性格はどのようなイメージになっていますか?

坂本今回のサムスは、皆さんよくご存知の、プロフェッショナルで寡黙な戦士という、そのイメージを持っていただければ間違いないと思います。

――『メトロイド』のシリーズ作品ではたくさんのカットシーンがあるものと、そうでないものがあります。『メトロイド ドレッド』はどちらのゲームになるのでしょうか?

坂本『メトロイド サムスリターンズ』のときに、グラブシーケンス(ボスの特定の攻撃にメレーカウンターをヒットさせ、さらに追撃をしたときに発生する特殊なカットシーンをともなう攻撃)を始め、ところどころにカットシーンが入っていたと思いますが、あのように3Dのカットシーンと2Dのゲームビューがシームレスにつながるようにうまく使っていくと、かなり表現力が上がるということがわかりましたので、『メトロイド ドレッド』でも同様にその場の状況や緊張感を描くように使っています。しかも、今回の『メトロイド ドレッド』はストーリーが非常に大切になっていますので、そのあたりの表現としてもカットシーンは重要なポジションを占めています。

シリーズ新作『メトロイド ドレッド』を動画付きで徹底解説。恐怖の中で味わう探索のおもしろさ。開発者・坂本賀勇氏によるQ&Aセッションも

――『メトロイド』シリーズのジャンルをホラーにするというアイデアはどこから出てきたのでしょうか?

坂本我々は『メトロイド ドレッド』を“ホラーゲーム”だとは考えていません。サムスが恐怖に見舞われてしまうことからそのように見えたのかもしれませんが、どちらかというと、彼女が恐怖に打ち克って前進していくという姿を描くための刺激として重要だったと思っています。もともとのアイデアは、先ほど言ったようにSA-Xの遊びの緊張感というものをもっと大きくフィーチャーして、本来の『メトロイド』のゲームデザインにうまく取り込めば、より刺激的で多彩な刺激のある『メトロイド』ができると思ったところで、そういうことを考えながら作ったのが今回の『メトロイド ドレッド』になります。

――若い世代の方は、これまでの『メトロイド』シリーズをプレイしたことがないかもしれません。今回、その点を考慮して若いユーザーに受けるためのメカニズム(仕組み)を作るといったことはされたのでしょうか?

坂本そうですね。たしかにおっしゃるとおりだと思います。我々はつねに最高の『メトロイド』を作ろうと思ってやっているのですが、今回は幸運にと言いますか、E.M.M.I.のゲームパートが従来の『メトロイド』と少し違った刺激になっていまして、追われる恐怖などは、おそらく『メトロイド』を知らない方、興味を持ってこられなかった若い世代の方にも「やってみたいな」と思ってもらえるものになっているんじゃないかと思って、非常に期待しています。

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――坂本さんが『メトロイド』シリーズの新作を作りたいと思う理由、モチベーションはどこにありますか? また、『メトロイド ドレッド』を作っている中で、もっともエキサイティングだった部分を教えてください。

坂本『メトロイド』を作るモチベーションは、お客様のゲーム体験として、つねに最高のものを提供したいということを目標にして常々作ってきていますので、その気持ちは衰えることはありません。今回もっともエキサイティングだったことは、長年描いてみたかったE.M.M.I.に関する部分のゲームプレイが、当時想像していたもの以上の仕上がりで、皆さんにプレイしていただけるようなデザインになったこと。ここが自分としてもすごく満足していますし、早く発売日を迎えて皆さんに手にとって遊んでいただきたいなと思っています。

――今回の『メトロイド ドレッド』でシリーズのストーリーが一区切りを迎えるということをおっしゃっていましたが、『メトロイド』五部作のサーガの最終章になるのでしょうか?

坂本最終章と言いますか、メトロイドとサムスというある種敵対する、奇妙な運命、関係性を綴ってきたのがここまでのシリーズなのですが、このストーリーに関して言えば、ここで一区切りになるということです。ですが、これで『メトロイド』シリーズが終わってしまうわけではありません。皆さんもそれを望まないと思いますし、我々も望みませんので、今後は新しいエピソードとして、何が来るかを楽しみにしていただけるといいなと思っています。

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――『メトロイド』シリーズとサムスというキャラクターが、長く愛されてきた理由を教えてください。なぜここまで人気があると思いますか?

坂本これはなかなか難しい質問ですね(笑)。皆さんがサムスという戦士になりきってゲームを通じて彼女の体験を追体験し、彼女の考えることと同化することによって、彼女の人間性などを感じ、支持していただいた結果なんじゃないかなと思います。

――『メトロイド ドレッド』でサムスの移動速度を早くすることは、ゲームのダークな雰囲気と相反するのでしょうか?

坂本それはないと思います。ゲームの雰囲気とサムスのアクションは影響し合うものではなく、どんな環境であれサムスが快適にカッコよくきびきびと動いてくれるということは、つねにゲーム体験にとってプラスになるものだと思います。

――『メトロイド ドレッド』でE.M.M.I.はストーカー的にサムスを執拗に追いかけてきますが、E.M.M.I.のパートを作るうえで最大のインスピレーションはどういうものでしたか? あの恐怖体験はどのように生まれたのでしょうか?

坂本外部から受けたインスピレーションはとくになかったですが、今回描きたかったのはSA-Xにも通じる、サムスを追いかけてくる強力な敵というものでした。E.M.M.I.に関してはそれに加えて不気味さというものを表現したく、E.M.M.I.というロボットの無慈悲で無機質な怖さと言いますか、感情を持たずにサムスを捕らえるためだけに動いているところを強調したかったので、デザインも含めて、このようになりました。

――坂本さんは『メトロイド ドレッド』でプロデューサーを務めていますが、開発にはどのように関わってきましたか? また、マーキューリースチームエンターテインメントとはどのように仕事をしましたか?

坂本前作の『メトロイド サムスリターンズ』も同様ですが、私を含めた任天堂のチームとマーキューリースチームエンターテインメントは、会社は違いますが、ひとつのチームとして心をひとつにしてゲームを作ってきました。僕もマーキューリースチームエンターテインメントとつねにコミュニケーションを取って、「これはどうだろう」といっしょに考えて良し悪しを見極めながらワンチームとして進めてきましたので、クリエイティブな面でのプロデューサーの役割を務めたと思っています。

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――15年前に開発をしようとしていたという、『メトロイド ドレッド』のオリジナルプロジェクトから生き残ったものはどういうものがありますか?

坂本コンセプト自体は15年前から変わっていません。サムスという最強の戦士を脅かすような、恐怖となる敵が追い詰めていくという部分はまったく変わっていません。

――『メトロイド ドレッド』には、これまでのシリーズにもあったスピードランナー(早解き)のための仕組み、構造はあるのでしょうか?

坂本その要素は、いままでの『メトロイド』と基本的に変わらないと思っていただいて、差し支えないと思います。

――『メトロイド ドレッド』は2Dの探索をするゲームで、ニンテンドースイッチの携帯モードに最適なものだと思いますが、開発の過程で携帯モードに最適化するといった考えはあったのでしょうか?

坂本お客様のスタイルに応じて、どういう遊びかたをされようとも快適に遊べるようにしていますので、とくに携帯モードに特化はしていません。むしろ、テレビの大画面で遊んでいただきたいと思っています。我慢できない人は持ち歩いてもらってつねに触ってもらっても、どちらでも変わりなく快適に遊べますので、大丈夫です。

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――『メトロイド サムスリターンズ』や『メトロイド ドレッド』で入った新規アクションなどの要素には、『メトロイド フュージョン』でやりたかったものの、ハードのスペックなどの理由できなかったものがあるのでしょうか?

坂本タイトルごとに必要なものを作っていくという形がゲームデザインにとってもっとも正しいスタイルだと思いますので、実装していればよかったものもあるかもしれませんが、ひとつひとつのゲームはそれで完結していますので、とくにありません。『メトロイド ドレッド』には『メトロイド ドレッド』でもっとも必要とするものを取り揃えて作っています。

――最後に本作を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

坂本『メトロイド ドレッド』は我々としてすごく自信作になっていまして、多くの皆さんに手に取って遊んでいただいて、喜んでいただきたいと思っています。先ほどの質問にもありましたように、『メトロイド』を知らない方、若い世代の方にも遊んでいただきたいと思っていて、たとえば『メトロイド ドレッド』のオープニングを見てもらえればどういう話だったかわかるようになっていたりと、シリーズ作を遊んでいなくてもここから楽しめるようにしていますし、むしろ、本作から遊んでもらうほうがいいかもしれないという内容になっています。E.M.M.I.という新しいエッセンスも入っていますので、興味を持っていただけるとうれしいです。

[2021年6月17日22時50分修正]
記事内のSA-Xの表記について誤りがあったため、該当の文章を修正いたしました。読者並びに関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。