Facebookの偽ニュース対策、身内からも疑問の声

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    Facebookの偽ニュース対策、身内からも疑問の声
    Image: Getty Images

    やる気あるんですか?とは言わないまでも。

    Facebookは、米国大統領選でのフェイクニュース問題を受け、昨年12月に対策を発表しました。それは、第三者組織にポスト内容のファクトチェックを委託し、あやしいポストがあったら「事実ではないと異議が出されました」のタグを表示する、というものでした。でもPoliticoによれば、今このファクトチェック作業をする立場の人たちから、Facebookの取り組み方に不満の声が漏れ始めています。

    「全体的にFacebookからの情報やデータが不足していて、多くの記事提供元の懸念の種になっています」ファクトチェックプロジェクトでFacebookと協力関係にあるLe Mondeのジャーナリスト、Adrien Sénécat氏はPoliticoに語っています。

    Facebookはファクトチェック作業を世界各国の専門団体や報道機関に委託していて、米国ではたとえばSnopes.com、APやABC Newsなどがそれにあたります。そんなパートナー組織のひとつ、PolitiFactのエグゼクティブ・ディレクター、Aaron Sharockman氏によれば、「ファクトチェック対象の記事は毎日1,200〜1,500件もありますが、1日に見られるのは2件だけ」だそうです。というのは、チェック作業には1件あたり5時間ほどかかってしまうからです。

    だから優先順位付けが重要になりますが、Facebookから提供されるデータは各記事が読まれた回数くらいしかなく、たとえば他のチェック機関が確認済みの記事リストも共有されていないそうです。

    他にどんなデータが必要なのか、PoliticoはPolitifactの親会社、PoynterのAlexios Mantzarlis氏の発言を以下のように引用しています。

    Mantzarlis氏は、虚偽記事にフラグを立てるのにかかる時間が、記事の拡散にどう影響するのかを知りたいと言う。他にも、このような疑問が容易に浮かんでくる。特定のタイプの記事は、他よりも早急な対応を要するのだろうか? まだバイラルになっていないが、すぐにそうなることがデータから予測されるものがあるだろうか? 記事がフラグ付けされたとき、タイトルを書き換えたコピーバージョンで置き換えられることはどれくらいあるのだろうか? どのようなタイトルがもっとも効果的なのかがわかるだけでも役に立つ、とMantzarlis氏は語っている。

    一方Facebookは、ファクトチェッカーにデータを渡せない理由として、プライバシーをあげています。

    「これはバランスの問題だと思います。私たちはみんな、我々のプラットフォーム上で嘘のニュースがユーザーに届くことを防ぎたいという同じ目的を持っています」Facebookのニュースフィードのマネジャー、Sara Su氏はPolitidoで説明しています。「私たちはなるべく透明性を高めたいと思っていますが、プラットフォーム上のユーザーのプライバシーも尊重したいのです」。

    Facebookはフェイクニュース問題に対して、当初はあまり緊急課題として認識していませんでした。昨年11月の大統領選終了後、マーク・ザッカーバーグCEOは、フェイクニュースが選挙に影響を与えたのだとする批判は「かなりクレイジーな考えだ」とさえ言っていました。でもその後、BuzzFeedが「選挙期間中、フェイクニュースは正当なニュースより拡散されていた」とする記事を発表するなどの証拠が集まり、ついに公式に対策を打つことになったんです。だから今ではちゃんと重要課題として取り組んでるはずなんですが、現場のファクトチェッカーから見ると、Facebookは生ぬるいと感じられているようです。

    しかも現在のFacebookのファクトチェックの流れでは、サードパーティが事実でないことを確認した記事はFacebookから削除されるわけではありません。そこにはただ「異議あり」のタグと、事実情報へのリンクが表示されるだけになっています。削除してしまうと「検閲」になってしまうということなんでしょう。

    たしかに「デマかどうか」の判断は意外と難しくて、「ヒラリーがピザ屋の奥で人身売買」なんてのはわかりやすいガセですが、米国では「The Onion」とか、日本なら虚構新聞みたいに、仮想の情報をあえて楽しむサイトもあります。悪意はなくても事実誤認ってこともあるし、メインの部分は事実だけど部分的に間違ってる記事も多いし、たまには冤罪事件とか新しすぎる学説みたいに、時間とともに虚偽と事実がひっくり返ることもあります。なので、削除に対して慎重になってしまう事情はわからなくもないです。

    とはいえ、ファクトチェックできている記事は氷山の一角、効率化のためのデータも提供されない、チェックされた記事も削除されないとなると、このままの対策でいいのかどうか疑問になってきます。Facebookのニュースフィード担当バイスプレジデント、Adam Mosseri氏は今年4月に「フェイクニュースは減りました!」と言ってたんですが、具体的なデータは出していませんでした。米国では2018年、今度は上院・下院議員選挙があるんですが、それもまたフェイクニュースに翻弄されてしまうんじゃないか、心配です。

    Image: Getty Images
    Source: Politico

    Melanie Ehrenkranz - Gizmodo US[原文
    (福田ミホ)