見た目も悪くないし、このお値段。
Samsung(サムスン)から完全ワイヤレスイヤホン「Galaxy Buds」が発表されました。イヤホンには一家言ある米GizmodoのAdam Clark Estes記者がさっそくレビューしていますが、なかなか好感触ですよ。
SamsungのGalaxy Budsは、何かとApple(アップル)のAirPodsと比較されがちです。SamsungもAppleもメジャーなスマホを作っているし、Galaxy BudsもAirPodsもいわゆる完全ワイヤレスイヤホンですからね。僕は130ドル(約1万4000円)のGalaxy Budsを1週間使ってみましたが、正直言ってなかなか素晴らしいです。でもAirPodsよりいいかっていうと、それは人によると思います。
Samsung Galaxy Buds
これは何?:AirPodsのライバル候補
価格:130ドル(約1万4000円)
好きなところ:着けやすい、音が良い、価格もナイス
好きじゃないところ:接続が不安定、タッチ操作も不安定
欠点もあるけどコスパ良し
Galaxy Budsはちゃんと機能して、どんなデバイスともうまくつながります。着け心地もいいです。1回の充電で、AirPodsより1時間長い6時間音楽が聞けます(ただし専用ケースの充電容量も合わせると、Galaxy Budsの使用時間は13時間なのに対し、AirPodsは24時間です)。
Galaxy Budsは音もなかなかのものですが、170ドル(日本価格2万3130円)のJabra Elite 65tとか、300ドル(日本では記事翻訳時点で3万円台半ば)のSennheiser(ゼンハイザー)MOMENTUM True Wirelessと比べるとそれほどじゃありません。でも電話の声も、4つのマイク(内側と外側にふたつずつ)のおかげで良い音です。
ただ全体で見ると、Galaxy Budsの良いところはいくつかの欠点で多少相殺されてしまっています。完全ワイヤレスイヤホンで130ドル(しかも少し前まで、Galaxy S10かS10+をプレオーダーすれば無料でした)という価格からすると、多少不満があるのは仕方ないのかなとも思います。欠点はどれも、僕的にはそのせいで買うのをやめるほどじゃないと思いましたが、少なくとも買う前には知っておいたほうがいいと思います。少しお金を足せば、もっと満足度の高いものも買えるので。
可愛いフォルムの功罪
まずGalaxy Budsは、可愛いながらも扱いにくいイヤホンです。サイズは中くらいのポップコーンほどで、AirPodsよりやや小さめです。シリコンのチップと控えめなウィングがあり、耳の穴にしっかり入れるデザインです。「控えめ」というのは、シリコンのパーツが耳の上側に接触しないってことです。そんなんでちゃんと固定できるの?と思われるかもしれませんが、ちゃんと装着すればすごくしっかり入ります。が、僕にとっては「ちゃんと」装着するのが意外と難しかったんです。
そのことが、Galaxy Budsの欠点のひとつにつながっていきます。つまり、耳に入れにくいんです。他の完全ワイヤレスイヤホンに比べてサイズが小さいせいかもしれません。大きなウィングも、Jabra Elite 65tみたいなマイク部分の突起もないので、Galaxy Budsは耳から外したときも持ちにくいです。もしかしたら他の人は大丈夫で僕の指が太すぎるのかもしれませんが、とにかくGalaxy Budsを耳に入れるのはちょっと大変でした。
さらにタッチ操作のせいで気が狂いそうになりました。基本的にGalaxy Budsの操作はAirPodsと同じで、本体にタッチして立ち上げたり停止したりできます。複数回タッチすると、曲をスキップしたり電話に出たりといった操作もできます。ただうっとうしいのは、耳に入れ直そうとかすると、タッチのせいで音楽が止まったりすることです。もっといえばそもそも触る気さえないとき、たとえば寒い日にコートのフードをかぶったときなんかに、音楽が流れ出したり止まったりもしました。
接続性の問題
接続性も良いときと悪いときがあります。Galaxy Budsは最新のBluetooth 5.0に対応していて、AirPodsに搭載されてるApple独自のW1チップみたいな派手さはないにしろ、わりと信頼できるはずです。AirPodsがAppleデバイスを素早く検知するように、Galaxy BudsはAndroidデバイスとすぐペアリングできるように作られています。ただ、僕にとってはうまく機能しませんでした。
Samsungいわく、新しめのAndroidデバイスならペアリングはケースを開けてスマホ画面に出てくるポップアップメッセージを確認して「ペアリング」を押すだけ、です。これもAirPodsのペアリング操作と似ています。が、実際僕が使ったときはもっと面倒な操作が必要でした。まずこの「スマホ画面に出てくるポップアップメッセージ」を表示させるには、スマホにSamsung Smart Thingsアプリを入れておく必要がありました。なんか感じ悪いです。ともあれ僕のGalaxy S9にこのアプリを入れたんですが、ポップアップは出たり出なかったりして、出る場合はうまくペアリングできました。もっとトラディショナルなやり方、つまりBluetooth設定を開いてGalaxy Budsを見つけてペアリング、というのも可能です。AirPod以外のワイヤレスイヤホンはそれで接続してますが、ちょっとめんどくさいです。
皮肉なことに、iPhone XSとは面倒なペアリング操作の必要がありませんでした。Galaxy Budsをケースから取り出してサイドをタップすると、最新のポッドキャストがiPhoneから流れてきたんです。GalaxyスマホよりiPhoneのほうがSamsungのイヤホンと簡単につながる…ってどういうことなんでしょうか? 僕にはわかりません。
ともあれ、多少面倒な場合があるとはいえ、使い方は簡単です。使おうとするといつも最後に接続したデバイスにつながり、シームレスに使えます。僕がすごく良いと思ったのは、デバイスの切り替えも同じくらいシームレスだったことです。たとえばiPhoneで音楽を聞いていて、その後パソコンで動画を見ようとしたときは、ただ「接続」を押せば付いてくるんです。Bluetoothヘッドホンで複数デバイスを使っていると、自分がつなぎたいデバイスとすぐつながらないことが多くてイライラの原因になりがちです。Galaxy Budsでは、デバイスを切り替えればちゃんと付いてきてくれました。
ただ接続関係の問題はもうひとつあります。屋内でじっとしているときに使う分には問題ないんですが、ニューヨークの街中みたいないろんな無線が飛び交ってるところでは困ったことが起こります。タクシーの列の間を歩いていたときには、左右のイヤホンで音同士がピンポンしてるみたいになりました。他にも干渉があって挙動不審になることが何回もありました。あるとき僕はポッドキャストを聞いていたんですが、片方のイヤホンの再生が遅れはじめ、右のイヤホンが何か言うと半秒遅れで左がそれをリピートするようになりました。悪いクスリをやってしまったみたいな感覚です。この手の挙動不審はGalaxy Budsだけじゃなく、安いワイヤレスイヤホンではよくあります。でもAirPodsとかJabra Elite 65tでは、こういうことで悩んだことはありません。
気になる音質
次は音について。Galaxy Budsは安いワイヤレスイヤホンにしては良い音だと思います。レンジは間違いなく限られていて、低音は弱々しく、高音も明るさがありません。Galaxy BudsはaptXコーデックにも対応していませんが、コーデックの名前を聞いてもピンと来ない人にとっては問題ないことでしょう。aptXに対応してないだと!?と思っちゃう人は、文句を言ってもいいと思います。
でも完全ワイヤレスイヤホンの中ではGalaxy Budsはほとんど「お手頃」価格であることを考えると、文句も言いにくいです。SennheiserのMOMENTUM True WirelessとかMaster & DynamicのMW07とかは300ドルくらいして、音も素晴らしいです。Galaxy Budsの音はそんなでもないんですが、僕が試した他のものよりはだいぶ良いです。AppleのAirPodsとは同じくらいですが、耳にすっぽり入れるタイプなので、周りのノイズを遮断できる分だけGalaxy Budsの方がちょっと有利だと思います。
音に関してもうちょっと詳しく書くと、Galaxy BudsはAKGの技術を使い、ほぼどんなジャンルでも輝くようなバランスの取れた音になっています。Beirutの『Elephant Gun』では高音のボーカルとさえずるような弦の音が、没入すると言うほどじゃないにしろ、ゆったりと感じられました。Matomaの『Old Thing Back』は明るく低音も十分で、ただ巨大なサブウーファーで聞くほど深くはなさそうでした。『ボヘミアン・ラプソディ』はフレディ・マーキュリーのボーカルが素晴らしいものの、雰囲気はそこまで出ていないという感じです。もちろんフレディ・マーキュリーはいつだって素晴らしいですしね。
まとめると、Galaxy Budsはこの小さなデザインにしてはかなり良い音です。雷のような低音は出せませんが、多分このサイズのせいでしょうね。音が大きいときもつらそうなのですが、それも小さいからだと思います。でも130ドルという価格にしては、Galaxy Budsは僕が試してきた完全ワイヤレスイヤホンの中では良い方のひとつです。
買ってもいい?
実際僕はGalaxy Budsは気に入って、ここまでいろいろ書いた欠点も、まあいいかと思えています。完全ワイヤレスイヤホンではさんざんひどい目に遭ってきたので、Galaxy Budsの着け心地やある程度良いと思える音質、そして何より価格は、良い意味で新鮮です。ただ干渉はほんとにひどいので、街中でよく使うつもりだったら考え直すと思います。
また僕としては、Galaxy BudsがAirPodsより良いとも言えません。たしかにSamsungのスマホユーザーだったら、Galaxy Budsとの接続はもっとシームレスになると思いますし、iPhoneユーザーにとってもGalaxy Budsのインイヤーな着け心地のほうが安心感があるかもしれません。価格もAirPodsより30ドル安いです。ただ全体として、Galaxy BudsはAirPodsとか他の完全ワイヤレスイヤホンと比べてしまうと完成度が低い感じがします。
あ、でもひとつ付け加えたいのは、Galaxy BudsはAirPodsに比べると見た目的に悪くないってことです。耳からうどんみたいのが垂れてるのを「ファッションです!」って言うのもひとつの選択ですが、イヤホンに目立ってほしくない人にとっては、そしてマンハッタンでタクシーの間を縫って1日過ごすわけでもなく、そこそこの音質でいいという人にとっては、Galaxy Budsは試してみる価値があります。やっぱりなんといっても、お買い得ですし。
まとめ
・良い意味で軽いデザインで着け心地も良いですが、正しい位置に装着するのが難しいです。
・無線のノイズが多い場所では接続が不安定になります。
・音は良いけど、素晴らしいってほどでもないです。
・お買い得。