Shaping the Future of Ceramics

注目の陶芸家・奈良祐希が目指す建築家との“二刀流”──3次元CADを使ってデザイン

従来の陶芸の常識を打ち破る大胆なフォルム。注目の作家、奈良祐希は「現代の土器」を目指して建築家の目線から陶芸に取り組んでいる。 写真・Eric Miccotto 文・Kosuke Kawakami
注目の陶芸家・奈良祐希が目指す建築家との“二刀流”──3次元CADを使ってデザイン
自転車 ¥2,200,000〈BIANCHI×FERRARI/サイクルヨーロッパジャパン TEL 03-5812-2070〉コート ¥461,000、ニット ¥91,000、パンツ ¥139,000、靴 ¥131,000〈すべてBerluti/ベルルッティ・インフォメーション・デスク TEL 0120-203-718〉

金沢の名窯・大樋焼の本家の長男。子供のころから、まわりは彼を後継者として見ていた。

「それがどうしてもイヤで。小学校の図工で粘土を触るのも嫌いでした」

若手陶芸作家として、国内はもとより工芸の権威、英国のヴィクトリア&アルヴァート美術館など、海外からも注目を集める奈良祐希。反抗期があったせいか、本格的に“土”を触り始めたのは、意外にも東京藝術大学卒業後と遅い。

「芸大時代は建築学科で、建築家を目指していました。でもちょっと遊びすぎて留年することになったときに、時間が余ったから陶芸教室に通ったら、面白くなってしまった。父や祖父が命がけでやってきた陶芸に興味を持つようになったんです」

その作風は、独特だ。構築的な最新の建築のように見えるが、近くで見ると土の質感や陶器らしい細かなゆらぎを感じる。ひとつの作品のなかに無機と有機が絶妙のバランスで存在している。

「大樋焼と距離をおいた期間があることがよかったと思っています。建築家の目線で3次元CADなどを使ってデザインして、陶芸として仕上げる。どんなに計算して作っても、窯で焼くとなかなか思ったように仕上がらないし、逆に自分の想像を超えて良くなることもある。陶芸は、自己投影。自分のメンタルがすべて反映されるのが面白いですね」

現在は建築事務所に所属しながら、週末だけ金沢に帰って土を触る。

「進化し続けている建築と、江戸時代から変わらない大樋焼。その間に自分の“答え”があるような気がしています。将来は、自分の建築事務所のとなりに陶芸家のアトリエを作りたいと本気で思っています」

目指すは、二刀流。どんなふうに進化していくか、奈良本人も自分の未来が楽しみなのではないだろうか。

PROFILE:

奈良祐希 陶芸家
1989年石川県生まれ。プログラミングや4DCADといった最新テクノロジーと伝統的な陶芸を融合させた「Bone Flower」シリーズが注目される。今年3月にパリのピエールイヴカーエギャラリーにて初の大規模な個展を開催した。