新型コロナウイルス感染による症状を専門家たちがより把握するようになるにつれ、一時的に臭いを感じなくなる(アノスミア=嗅覚障害)症状が大いに注目を集めている。パンデミック初期の頃は症状としては公式には認知されていなかった無臭覚や無味覚が、感染の顕著な症状になっているのだ。
さて、それと似ているけれど奇妙な症状に悩まされる人が増えている。それは、パロスミア=錯嗅という嗅覚の歪みだ。
パロスミアに悩んでいる人の正確な人数は不明だが、最近の研究では新型コロナウイルス感染による嗅覚障害に苦しむ人の半数がパロスミアを経験しているという。
嗅覚の歪み方はさまざまだが、ほとんどの人は非常に不快な臭いを感じるようになる。特定の食品の匂いや味がゴミのようになるという人がいれば、大好きな食べ物が食べられないという人もいる。
それにしても、パロスミアは具体的には何が原因なのだろう? 新型コロナウイルスから回復すれば治療できるのだろうか? そこで、もしあなたが好物を食べることが嗅覚に阻害されているとしたら、知っておくべきことを医師たちに説明してもらった。
パロスミアとは具体的にどんな症状?
アメリカ国立衛生研究所(NIH)によると、パロスミアとは、慣れ親しんだ臭いを別の臭いと錯覚してしまうというように、本来の臭いの感じ方が変わること。パロスミアは、普通は良い匂いと感じるものを嫌な臭いだと感じてしまうのだ。
「たいていは永遠に続くものではありませんが、しばらくは続くかもしれません」と話すのは、マサチューセッツ・アイ・アンド・イヤー(Massachusetts Eye and Ear)鼻科学ディレクターでハーバード・メディカルスクールの耳鼻咽喉学頭頸部手術のエリック・ホルブルック准教授。
ほとんどの人は2〜4週間で治るが、数ヵ月かそれ以上かかる人もいるという。
パロスミアになるとどんな臭いがする?
個人差がある。ツイッターには、ゴミの臭いからベビーオイルの臭いまでさまざまな臭いを表現している人がいる。が、厳密には、パロスミアとは臭いが何らかの方法で変わってしまうことを言う。「誰もがそれぞれ独特の経験をしているようです。が、多くの場合、心地いい経験ではありません」とホルブルック医師。
パロスミアの人の中には、食品の種類に関わらず同じ不快な臭いがする人がいる(例えば、レモンもコーヒーもゴミのような臭いがする)一方では、異なるものにそれぞれ独特の臭いを感じる人もいるとホルブルック医師は言う。
パロスミアの原因は?
いくつか異なる原因が考えられる。パロスミアは、どんなウイルス感染でも嗅覚障害を起こすとかなりよく発症する。実際に、ウイルス感染によって嗅覚障害を起こす人の半数以上がパロスミアになるという。
この障害は頭部を怪我した時にも起こり、味覚を処理する機能を司る中枢神経系の部分に損傷をきたすからではないかと考えられる。
パロスミアが起こる正確な原因は不明だが、有力なのは、嗅神経(鼻と脳を繋ぐ)がウイルスや頭部の怪我、あるいは他の原因によってダメージを受け、鼻と脳の接続が壊されるという説。
神経が再生し始めると、それが以前とは異なる脳のスポットに行っていまい、結果的に嗅覚を歪めてしまうというのだとホルブルック医師は説明する。
パロスミアの治療法は?
パロスミアはたいてい、ある特定の匂いを嗅いで、同時にそれはどんな臭いがすべきが考えるという嗅覚トレーニングで治療する。例えば、レモンを嗅いで、どんな匂いだったかを思い出すようにするもの。
研究から、これが効果的治療法になることがわかっている。最近の研究では、6ヵ月間嗅覚トレーニングを行なった人たちが終了時には正確な匂いを嗅ぐ能力に「臨床的に意義のある」改善が見られたという。
パロソミアかもしれないと思ったら、どうすべき?
自宅で嗅覚トレーニングをすることもできるが、無臭覚や嗅覚障害が起こったら、医師の診察を受けるようホルブルック医師は勧める。「嗅覚に異常が生じ、それが続くようなら、どんな場合でも医師に相談しましょう。原因を知りたいですよね」と彼。
パロソミアが憂鬱なのは間違いないが、明るい兆候でもある。「神経が再生されているということであり、嗅覚の回復に一歩近づいたということです。心地いいものではありませんが、いいサインでもあるのです」とホルブルック医師は述べている。
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。また、日本における新型コロナウイルスに関する最新情報については厚生労働省やWHOのサイトをご確認ください。
Translation: Mitsuko Kanno From Prevention