野食ハンマープライス・茸本朗氏が教える「絶対ハズさないキノコごはん」レシピ

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キノコたっぷり、炊き込みごはん

炊飯器を開けたときの香り、たまらないですよね! みなさんはどう作っていますか? 「キノコと調味料を炊飯器に入れて炊き込む」、これがシンプルかつ一般的なやりかたと思われます。

しかし!!

「このやりかたでは、キノコの魅力を最大限に活かしきれていないッ!」と語るのが今日の水先案内人、茸本朗(たけもとあきら)さん。

 

企業で働くかたわら、野食家として山に海に川に、そして都会内に生えるあらゆるものを食べて調理しまくっている人なんです。『メシ通』では、以前にこんな企画で登場していただきました。

茸本さんがとりわけ情熱をもやす食材が、キノコ。

自身が主宰するサイト「野食ハンマープライス」は月間70万PVを記録する話題のブログですが、キノコ採り・キノコ調理の記事がわんさか載っています。

 

この間なんか日本の山でトリュフを見つけてきちゃったほど。

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さて、そんな茸本さんに今回は「ひと味違う、キノコごはんの作り方」を教えてもらいますよ。調理法はいたってシンプル、料理ビギナーの人にもおすすめです。

 

教える人:茸本朗(たけもとあきら)

茸本朗

幼少時より、キノコを中心に山菜、魚介類に異常なほどの興味を示す。中学・高校時代には「きのこ同好会」の設立に尽力し、週末ごとに採取してきたキノコを寮内で調理・試食するなどして「変人」という周囲の評価を決定的なものにした。4年前より「野食ハンマープライス」の更新を開始、普段食材として顧みられることの少ない生き物たちを捕獲して食し、レポートしている。

 

キノコ料理には油分が重要

茸本さん、「炊飯器でキノコとごはんを炊く」のでは、その魅力を活かしきれてないとのご意見でしたがどういうことなんでしょう?

 

まず、キノコのうま味、そして香りは油との相性がいいんです。親油性が高いので、油で加熱することでこれらの要素が出やすい。完全な油溶性というわけではないんですよ。ただ水で煮ると、それらを引き出すのに時間がかかってしまうんです。

 

一般的な白米の炊き上げ時間では、うま味と香りが出し切れないということでしょうか?

 

はい。キノコを存分に味わうためには、脂分と一緒に加熱してから調理したほうがいいんです。

 

なるほど。ではキノコの炊き込みごはんも、使用するキノコを炒めてからごはんと炊いたほうがいいということですか?

 

いえ、私が提案するキノコごはんは、炊き込まずに炒めて混ぜ込むスタイルです。このほうが、よりキノコのうま味と香りを楽しめるんです。

 

おお、そのレシピをさっそく教えてください!

 

用意するキノコは3種類 

キノコといっても種類はさまざま。今回は「手に入りやすいキノコ」で茸本さんにレシピを考えていただきました。用意するものは3種類! 

 

①マイタケ

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マイタケは香り担当です。栽培マイタケでもいい香りが楽しめますよ。 こりっとした歯ざわりも魅力ですね。白いタイプは少し風味が弱いので、茶色いものをオススメします。

 

②ブナシメジ

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ブナシメジは歯ごたえ、歯切れ担当です。安価なのもイイですね! こちらも白い「ブナピー」よりも色付きのものが、混ぜごはんにはオススメです。

 

③ハタケシメジ

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最近、多くのスーパーでも見かけるようになったハタケシメジ。天然ものは野生キノコ界屈指の美味として知られています。風味が力強いので、混ぜごはんの味担当に抜擢しました。もし手に入れば、「大黒しめじ」(栽培ホンシメジ)を使うのもオススメ。

 

キノコを小分けにする際のポイント

さあ、それでは下ごしらえにかかりましょう。まずはそれぞれ石づきを取ってください。次に小分けにしていきますよ。

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このとき覚えておきたいポイントが3つ!

  • 包丁は使わず、手で小分けに割きましょう。
  • 小分けにしたとき、上のカサから下の付け根までついているのが理想。
  • 小分けにするといっても、炒めると小さくなるので気持ち大きめに。

 

キノコは食感もおいしさの構成要素。3種それぞれの食感を活かすためには、手で割くのがオススメ。根元とてっぺんの部分は食感が異なるので、それを同時に口の中で楽しむためにも、上下がそろっていることが大切です。

 

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さあ、3種類をそれぞれ割いたら、炒め調理に入ります!

 

炒めるときの油は多めに

まずはフライパンに油を引きます。ポイントは気持ち多めに油を使うこと。

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「油にキノコの香りとうま味を溶かし込んでいく」これがポイント。そのためにも、気持ち多めに油は使用してください。フライパンに油をひいてキノコを入れてから、火をつけます。今回は味の違いを比べるため、一度に3種類ではなく、それぞれ炒めていきます。普段は全部一緒に炒めても大丈夫ですよ。

 

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▲炒めて全体のカサを3分の1ぐらいに

 

火をつけたら、しばらく放っておきます。火は中火で。だんだんと下の部分が加熱されて、湯気が立ちのぼってきます。そうしたら、底のほうからヘラなどで混ぜ返して、全体に火を入れていきましょう。

 

最初にしばらく置いておくのはどうしてなんですか?

 

はじめから混ぜてしまうと、キノコがぼろぼろになりやすいんです。そうすると食感が台無しですからね。

 

なるほど!

 

キノコを炒めながら味をつける

次は、火を入れたキノコを炒めながら味をつけていきます。用意する調味料は3つ。

  • 醤油
  • みりん
  • 砂糖

これだけ!

 

今回は3種類のキノコ(マイケケ、ブナシメジ、ハタケシメジ)を各3パック使っていますが、味つけに関してはキノコ1種類ごとに、

  • 濃口醤油 大さじ2
  • 砂糖 小さじ1半
  • みりん 大さじ1

で、じっくり炒めていきます。

※1パックを約120gと考えます

 

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先ほどの量がこのぐらいまでにカサが減ったらOK。少し水分が底に残るぐらいが理想の加減です。ごはんと混ぜるので、濃いめの味つけがオススメ。

 

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3種のキノコが炒めあがったら、炊き立てごはんとよく混ぜて完成! 混ぜ具合にムラがないようにしっかりミックスしてください。

 

後混ぜ方式のキノコごはんは、後からいくらでも味を調整できるのもメリットの1つ。私はごはん2膳分ぐらいに写真程度の量を入れますが、ここはもうお好みでいろいろ試してみてください! 比率によって味わいが変わるのが面白いんです。

 

キノコの比率で味わいも変わる

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3種のキノコ、それぞれ1:1:1で混ぜてもいいのですが、比率を変えれば風味も当然変わります。上の写真は「香り重視タイプ」で、マイタケ:ブナシメジ:ハタケシメジ を 3:2:1でごはんに混ぜ込んでます。マイタケの香りを存分に楽しんでください!

 

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こちらは「味わい重視タイプ」で、マイタケ:ブナシメジ:ハタケシメジ を 1:2:3で混ぜています。うま味たっぷり、またハタケシメジの食感の良さも楽しめますよ。

 

 さあ、いただきましょう!

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このキノコごはんは「アヒージョ」のようなものだと考えています。キノコの風味をたっぷりの油に溶かし出し、それをごはんに移して楽しむ。もし手に入るなら、より風味の強い野生キノコで作るともっと濃厚な味わいが楽しめますよ! 

 

茸本さん、きょうはありがとうございました。茸本さんのサイト 「野食ハンマープライス」にはもっとディープなキノコの世界が広がっていますよ。

※「野食ハンマープライス」とは?

身近な環境で採れる動植物を調理して食べ、日々の食卓に取り入れていく「野食」によってエンゲル係数を下げることを目指しているサイト(ブログ)。味の良さや入手難易度、調理のしやすさなどを複合的に考慮し、評価をつけて紹介している。そのほか、珍しい食材のレポートや、野食材の危険性・アレルギーについても実体験をもとに紹介している。

 

※この記事は2016年12月の情報です。

 

執筆・撮影:白央篤司

白央篤司

フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。食と健康、郷土料理をメインテーマに執筆をつづける。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。2016年10月下旬に最新刊「にっぽんのおかず」(理論社)が発売に。

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