ベランダで酒を飲む、ということに目覚めたのは10年以上前に家族で沖縄旅行に行った時です。家族が寝静まった後に、ホテルのベランダに出て、海を見ながら(オーシャンビューの部屋でした)ひとりで泡盛を飲んだら大変心地よかったんですね。
それで味をしめて、ちょくちょく自宅のマンションのベランダで一人飲みなんかをするようになりました。実はうちの部屋は、ベランダから富士山と東京タワーが見えるのが自慢だったんですよ。夜はさすがに富士山は見えないけれど、東京タワーの夜景を肴にスコッチなんかを飲むのは、なかなかよいものです。……いや、実は数年前に新しく建ったビルのお陰で、富士山も東京タワーも見えなくなっちゃったんですけどね……。
▲物干し竿に肘を乗せるのが基本姿勢です
そもそも、外でお酒を飲むというのは楽しいものですが、何か必要になったらすぐに部屋から持ってこれるし、すぐに戻れて、また出ることができるという気楽さもベランダのいいところ。いわば、外飲みと自宅飲みのいいとこ取りなんですよ、ベランダ飲み。
で、聞いてみると、「ベランダ飲み、ちょくちょくやってるよ」という人が周りに結構いるんですよね。じゃあ、ちょっとお邪魔して、一緒にベランダ飲みさせてもらおう、と思いました。
レッツ・トゥギャザー・べランディング!
ベランディングその1:弓削さんちのベランダ
まず最初にお邪魔したのが、ライブフォトグラファーの弓削ヒズミさんのお宅。ライブハウスを中心にステージ撮影をしているカメラマンで、僕のやっているバンドもいつも撮影してもらっています。もう10年くらいのおつきあいですが、お宅にお邪魔するのは、これが初めて。
▲弓削ヒズミさん。ライブハウスではいつも黒装束
東武東上線のときわ台駅から徒歩10分くらいのところにある大きなマンションの一階でした。一階なので、ベランダの先に小さな庭があります。
そうか、一階だとこういう特典があるのか。
「まぁ、この部分は共有スペース扱いになるから、別料金を払うことになるんだけどね」
なるほど。ここは部屋の敷地には含まれないのか。それでも庭があるというのは、いいなぁ。うらやましいな。
テーブルと椅子が置かれていて、リゾート気分。この日は天気もよくて、それでいて暑すぎずという気候なので、外で飲むには最適でありました。
とりあえず、ビールで乾杯。
あー、昼に飲むビール最高。
外で飲むと、さらにレベルアップ。
「だいたい土日は午前中に息子のサッカーの練習を見に行って、その後にここで軽く昼飯でビール飲んだりするんだよね」
なに、その極楽パターン。そりゃ、ビールも美味いよねぇ。
来る途中に僕がデパ地下で買ってきた焼き小龍包と、ヒズミさんの奥様が出してくれたモツ煮やヒジキ煮などをつまみに、クイクイとビールを飲んでいきます。
屋外ならではの開放感と、家ならではのくつろぎ感を同時に味わえるのがベランダ飲みの醍醐味であります。
何よりも空。
見上げると空があるというのは、ビールを飲むのに最高の環境なんですよね。
一階と言っても、グリーンで目隠しされているし、前の通りはほとんど人も通らないので、通行人が気になるということはありません。
「この辺はもともと大きな工場が多くて、その跡地にマンションが建ったんだよ」
なるほど、それで大型マンションが多いんですね。自分が小規模のマンション住まいなので、こういう大きいマンションって、なんかドキドキしちゃうんですよね。
ちょっとお店のオープンエアの席で飲んでいるような気分になれるベランダでした。
ベランディングその2:柳下さんちのベランダ
続いては、飲み仲間というか古本仲間というか、よく遊んでもらってる特殊翻訳家・映画評論家の柳下毅一郎さんちのベランダへ。新宿と大久保の間あたり。「ゴールデン街からも歩いて帰ってこられるのが最高なんだよ」とのこと。
▲柳下毅一郎さん。ベランダとビールが似合う男
マンションの4階で、一般的に想像するマンションのベランダという感じの典型的な広さのベランダですね。僕の自宅のベランダもだいたい同じくらい。
「椅子を一個、ベランダ用に置いてあるんだよ。んで、ここでビールとか飲むんだ。子どもの声聞きながら」
すぐ近くに幼稚園があるので、そこから子どもの声が聞こえてくるのです。実は、うちのマンションもすぐ隣が保育園なので、同じように子どもの声が聞こえてきます。騒音だ! なんて怒る人もいますが、微笑ましくて、僕は好きです。
あれ、でも、幼稚園の子どもの声が聞こえるって、平日の昼間じゃないですか。
「いや、おれ、ちょっと酔っ払った方が筆が進むからさ」
そうですか。僕は少しでも飲むと、もう仕事は出来ないタイプなので、それはうらやましいな。
というわけで、平日の昼間からお邪魔して、ベランダで飲み始めました。
「今の時間は、お迎えが来るんだよねー」
「ああ、なるほど。お母さんたちが自転車で」
「ほら、あのヤンママ、なかなかいい感じ」
「場所柄、ちょっとホステスさん風の人とか多いですね」
どうやら、子どもの声よりも迎えに来るお母さんを眺める方がいいつまみになってるようです。いや、まぁ、それはある意味で健全か(笑)。
僕が持ってきたビールは早々になくなり、柳下さん、冷蔵庫から瓶を持ってきました。
「昨日まで金沢映画祭に行ってたんだけど、そこで買ってきたんだ」
ほほう、「夜空の恋音(こいね)」ですか。変わった名前の日本酒ですね。おお、これは爽やかでありながらコクもありますな。うめえ、うめえ……。
この日は日差しが強くて、かなり暑かったのですが、汗をかきながらベランダでダラダラと飲み続け、気がつけば「夜空の恋音」も一本空け、さらにワインまで……。
▲もうかなりいい感じの顔になっている柳下さん(笑)
僕はベロベロになりながら事務所に戻って爆睡。もちろんこの日は全然仕事になりませんでした。柳下さんは、あの後、仕事をしたんだろうか……。
ベランディングその3:パリッコの実家のベランダ
さて、最後は『メシ通』でも「ほろよい調査隊」を連載中の居酒屋ライターでトラックメイカーのパリッコのうちのベランダへ。いや、パリッコの今の家じゃなくて、実家のベランダにお誘いいただいたのです。
「え、実家?」
「学生の頃、よく友だち集めてベランダで飲んでたんですよ」
というわけで、その学生時代のベランダ飲みを再現するというコンセプトでいってみました。なので、つまみもスーパーで安くてカサのありそうなお惣菜とお菓子を買ってきて、酒もできるだけ安いものを選ぶという組み合わせで。
大泉学園の住宅街の一軒家。なんというか、こう大変正しい実家感のあふれるお宅でありました。まだ残ってるパリッコの部屋には、懐かしいものが保存されていたりしてね。
懐かしいなぁ、まだ取ってあるんだ。
そして、その部屋から出られるベランダ。かなり広いです。
「最初は、部屋の中で飲んでたんですけど、ふと窓の外をみたら、ここでも飲めるんじゃねぇ? って思って、出てみたんです」
ブルーシート敷いて、ちゃぶ台出して、座布団敷いて。暗いからランタンも用意して……。ベランダ飲みというよりも、夜の花見感が漂ってまいりました。
このブルーシートは当時使ってたものらしい。物持ちいいな、パリッコ。
ここで、ご近所だという漫画家の服部昇大さんも参加。ますます宴会感が増してきましたよ。
このシチュエーションが非常に似合う二人。
では、カンパーイ。
くー。夜の屋外で飲むビールは美味いなぁ。いや、ビールはどこで飲んでも美味いんですけど、この開放感はたまらないですね。それでいて、ちゃぶ台と座布団という自宅のように安心できるくつろぎ感。
しかも、虫の声なんかもかすかに聞こえてきて、ムードも最高です。
▲駅前のスーパーと近くのコンビニで買い揃えてきた今夜のメニュー
▲焼酎と炭酸水があれば、だいたいなんとかなる
ほぼホタテ、初めて食べたけど、なかなかイケますな。
缶詰とかお菓子とか、「ほぼホタテ」(ホタテ風かまぼこ)とか、飲み屋さんじゃなかなか食べられないですからね。それでいて、自宅飲みにはない、この開放感。
▲いつも幸せそうに酒を飲む男、パリッコ
▲パリッコの実家の近くには、よくゲームをしにうろついているという服部昇大さん
「あー、このベランダで飲むの、もう十何年ぶりなんですけど、学生気分に戻りますね」
素晴らしいぞ、居酒屋「パリッコのベランダ」。いや、居酒屋「パリッコ実家のベランダ」(笑)。またお邪魔したいと、本当に思いましたね。
これからの季節、ベランダ飲みには最適です。と、いうか、真夏とか真冬はあんまりベランダ飲みには適さないので、今こそベランダ飲みにチャレンジしていただきたい。そして、この楽しさに目覚めていただきたい。
実は、僕の仕事場のベランダがやたらと広いので、そこでもよくベランダ飲みとかしているんですよ。一階がコンビニなので、酒やつまみの調達も楽だし。この快適さを知ったら、もう飲み屋さんなんて行ってられない?
▲優雅なアラフィフ男
では、みなさんも、よいべランディングを!
次はあなたのベランダにお邪魔しにいくかもしれませんよ!