自衛隊機アフガン派遣 輸送邦人ら空港までは自力

官邸に入る岸信夫防衛相=23日午前、首相官邸(春名中撮影)

政府は混乱が続くアフガニスタンに残る邦人らを国外に退避させるため、現地への自衛隊派遣にかじを切った。今回の輸送の前提となる「安全」について、政府は米軍が首都カブールの空港を掌握しており確保されていると説明する。ただ、輸送対象の邦人や大使館などの現地職員らは自力で空港までたどり着かなければならず、危機下の邦人保護の難しさも浮き彫りになっている。

岸信夫防衛相は23日、防衛省で記者団に「各国は自らの軍用機で自国民や現地職員を退避させている。人道的な観点から、自衛隊がこうした方々を退避させることは重要な責務だ」と強調した。

防衛省は今回の輸送にあたり、カブール空港に現地調整所を設置する。空港は米軍の管理下にあり、輸送対象の邦人らは米軍のセキュリティーゲートを通過し、外務省職員による本人確認などの検査を受けることになる。自衛隊はそうした手続きのサポートに加え、輸送機までの誘導などを担うが、その活動範囲は空港内にとどまるのが現実だ。

日本政府は平成28年に施行した安全保障法制で、自衛隊法を改正し在外邦人の保護措置に関する規定を整備した。同法84条の3「在外邦人等の保護措置」に基づけば武器使用範囲が広がり、任務遂行を妨害する相手に対しても武器使用が可能となる。ただ、権限がより強くなる分、前提条件も今回適用する84条の4「在外邦人等の輸送」よりも厳格で、「当該外国の同意」が必要となる。

日本政府は、タリバンが樹立を目指す新政権を承認するかどうか慎重に見極める構え。混乱が続くカブール空港外で、自衛隊による「在外邦人等の保護措置」を実施するのは困難だ。

また、空港から国外へ退避させたアフガニスタン人の現地スタッフとその家族らをどう処遇するかも課題の一つとなっている。安全な場所にいったん、退避させた後、本人の希望を踏まえて日本に入国させることや、第三国に移動させることなども検討する。(大橋拓史、田村龍彦)

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