群馬県で生まれ育った私にとって公立高校が男女別学校であることは、疑問を感じない「普通」のことでした。私も県立の女子高校出身で、高校時代はとても充実した青春期ならではの楽しい思い出が多く、当時の友人は今でもかけがえのない友人です。

 現在私は、大学で教壇に立っていますが、他県から進学してきた学生は、「群馬県出身の子は、県立高校なのになぜ〇〇女子高校出身というのだろう、と最初はとても不思議に思った」と言います。

 群馬県民にとって「普通」と感じられる公立高校の男女別学校は、全国的にみると全く「普通」ではなく、非常に珍しい存在です。いまだに公立高校が男女別学校になっている割合が高いのは群馬、埼玉、栃木の3県です。なぜそれを問題とするのか、公立高校の男女別学校が存在しても良いではないかと感じる方も多いかもしれません。

 しかしながら、公立高校において、「性別」を理由に受験・入学の資格を与えないことは、人権に関わり、社会的公正さを欠いていることになります。税金の使い道という視点や、多様性を認め合う力が必要とされる男女共同参画社会の実現を目指す観点からも問題です。

 そもそも人の性別は「女」、「男」と単純に二分できるものでもありません。社会全体において性的少数者への配慮が強く求められる現在、他県では公立高校の入学願書の「性別欄」を撤廃する動きさえも加速しています。入学者の性別を制限した男女別学校を「伝統」や「多様な選択肢」を理由として正当化することはできないのです。

 私が所属する「ぐんま公立高校男女共学を実現する会」は、群馬大をはじめとする県内の教育関係者が中心となり、2000年1月に発足しました。この20年を振り返れば、群馬県同様、男女別学校が多く残されていた福島県は03年度、宮城県は10年度には県立高校全校男女共学化を実現させています。

 男女別学校については本年4月、群馬県高校教育改革検討委員会委員長から教育長に報告された文書の中で「今後の高校教育改革の中で、社会の変化や県民のニーズ等を踏まえ、地域や関係者の理解と協力を得ながら、共学化を推進していくことが望ましい」(一部抜粋)とされています。

 私たちが望んでいるのは、整理統廃合という消極的な共学化ではなく、ジェンダー平等という構造変化を伴う積極的な共学化です。その積極的共学化を進めていく中で、決して別学校出身者の方の高校の思い出や誇りを否定したいわけではありません。

 群馬県の子どもたちに「性別に関して公正でない環境」を堂々と残したままで本当に良いのでしょうか。改めて県民のみなさんに問いかけたいと思います。



ぐんま公立高校男女共学を実現する会代表 坂本祐子 高崎市飯玉町

 【略歴】2018年、別学校出身者(太田女子高卒)として初の同会代表に就任。群馬パース大などで非常勤講師を務め、専門は家族社会学。高崎経済大大学院修了。

2020/11/17掲載