自律型ロボット競うロボカップ日本一 三田学園高生4人が世界へ 300円のモーターで勝負

2021/06/05 05:30

日本一に輝いた(右上から時計回りに)西涼太朗さん、帯刀健一さん、杉森敬太さん、南皓太さん=三田学園

 自作の自律型ロボットを競わせる19歳以下の「ロボカップジュニア2021」で、三田学園高校(兵庫県三田市南が丘2)物理部の4人が「サッカー Light Weight」部門で日本一に輝いた。限られた予算の中で工夫を重ね、メンバーの得意分野を結集させ、高性能のロボットを作り上げた。今月22日に開幕する世界大会に、日本代表として出場する。(小森有喜) 関連ニュース 【写真】自作ロボット 【写真】プリント基板の設計画面 【写真】小型・軽量化に成功したギアボックスと車輪

 西涼太朗さん(3年)▽杉森敬太さん(同)▽南皓太さん(同)▽帯刀(たいとう)健一さん(2年)-の4人。中学時代から気心が知れた仲間同士で、昨年6月にチーム「Re_X(レックス)」を結成した。設計や基板、センサーなどそれぞれ得意な分野で分業した。
 内蔵するモーターはロボットの性能を大きく左右する。10万~20万円を費やし、速くて軽量な高性能モーターを準備するチームもあるが、「お金に頼らず、工夫して力を伸ばす」が同校物理部の方針。予算は総額2万円までと決められていた。
 4人は、大阪・日本橋の電気店街を巡り、そこで見つけた300円の中古モーターを使うことにした。型番も不明で、ずっしり重い。「このモーターでどこまでいいロボットを作れるか」。試行錯誤を重ねた。
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 道を開いたのは、設計・プログラム担当の帯刀さん。モーターの力を車輪に伝える「ギアボックス」(歯車装置)を自作した。複数の歯車が円環状に配置された「遊星歯車」を採用し、壊れにくい構造を実現。車輪内部に歯車を内蔵することで、それまで作っていたものより250グラム軽くすることに成功した。既製品を使うことが多いギアボックスを自作するのは極めて珍しいという。
 軽量化とコスト削減を図るため、3Dプリンターを使い、部品をプラスチック製に。相手のロボットとぶつかっても壊れにくいよう、衝撃が逃げやすい構造も研究した。ボールやラインを識別するセンサーの精度も極限まで高め、秒速2メートルの速さで動くロボットが完成した。
 競技は本来、アタッカーとキーパーの2台のロボットを敵と戦わせ、相手ゴールにボールを入れた数を競う。しかし、地区大会の1週間前、新型コロナウイルスの影響により、オンライン開催が決まった。
 サッカー種目はロボット同士の迫力ある攻防が魅力でもある。「何のためにロボット作りを頑張ってきたんだろう」と落ち込んだが、全てを出し切ろうと切り替えた。
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 3月下旬の全国大会には、阪神ブロック代表として出場。情熱を注いだロボットの動きや性能を、スライドや動画を使って審査員に懸命にアピールした。「ベストプレゼンビデオ賞」「ベストコストパフォーマンス賞」など計5部門で1位を獲得し、出場40チームの頂点に輝いた。学校に集まり、パソコンの画面越しに結果発表を見届けた4人は、「やった、やった」と抱き合って喜んだ。
 リーダーの西さんは「設計やプログラム、それぞれの部門の難しさを互いに知っているからこそ、誰かが失敗しても気持ちが分かるし、励まし合えた」と語る。
 本来、開催国フランスで戦う予定の世界大会も、オンライン開催になった。近年、ロボカップの国際大会では日本の若者の躍進が目立つ。チームのうち3人が受験生だが、勉強の合間を縫って部室に集まり、センサーの数を増やすなどロボットの性能向上に余念がない。4人は「本番までにもっと仕上げたい。何よりも世界の舞台を楽しみます」としている。

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