POPSCI:宇宙空間は、実にさまざまな臭いであふれています。しかし、そのほとんどは、炭化水素が燃焼した臭いなのです。未知の宇宙空間は、ナスカーレース(カーレース場)の臭いがする──熱した金属の臭い、ディーゼルエンジンの臭い、そしてバーベキューの臭い...そんな臭いたちです。そのほとんどの臭いの素となるのは、死んでゆく星たちです。

宇宙の臭いは、ザックリいうと、くさい

この激しい燃焼による副産物は、悪臭がする合成物質で、多環芳香族炭化水素(Wikipedia)と呼ばれます。

NASAエイムズ研究センターの天体物理学・宇宙化学研究室の設立者で所長のルイス・アラマンドラ氏によると、この分子体は「宇宙全体に発生している」らしく、彗星や隕石、宇宙塵と共に発生し、「永遠に漂い続ける」そうです。しかも、この炭化水素は地球の初期生命体の基礎となったという一説まであります。それを裏付けるがごとく、多環芳香族炭化水素は石炭や石油、食品にまでも含まれているのです。

でも、人間が嗅ぐことはできません

完全に純粋な宇宙空間の臭いを人間が嗅ぐことは不可能です。結局は真空なので、試そうとすれば死んでしまいます。宇宙飛行士が国際宇宙ステーションから出る場合は、宇宙服と衛星をしっかりつないで、ステーションまでひっぱり戻しますが、宇宙飛行士らも宇宙歩行の後には「焦げ」や「焼いた」ステーキの臭いを感じたと報告しています。妄想で地球の料理を恋しがっていたわけではありません。

3年前、宇宙の臭いに関して決定的な手がかりとなったのは、NASAが香水メーカーのOmega Ingredientsのスティーブン・ピアース氏と行った、臭気を再現する研修実験でした。その中でピアースは「先日、月の臭いを再現してみたのですが、宇宙飛行士らはその臭いを発砲後の火薬臭と表現していました」と報告しました。

宇宙は「臭いの食べ放題」みたいなもの

特に炭素を多く含み、酸素が少ない太陽系は、強い臭いを放つとアマンドラ氏は分析し、「まさに車と同じ。酸素が足りなくなると、すすが出て強い悪臭がするだろう」と説明しています。酸素を多く含む星は、炭火焼きのような香りを彷彿とさせるともいえます。

この銀河系から一旦外に出ると、臭気は一層複雑になるのです。小さく真っ暗な宇宙という名のポケットの中では、星屑の微粒子でいっぱいの分子雲たちが群れをなします。そこには、甘い砂糖の臭いから腐った卵のような硫黄の悪臭までが漂っています。 まさに、臭気のビュッフェと呼べるでしょう。

This article originally appeared in the February 2011 issue of Popular Science magazine.

What Does Space Smell Like? | POPSCI

Lizzie Schiffman(訳:阿佐美インディゴ)