2019年10月から、消費税を現行の8%から10%に引き上げる方針が表明されました。

また、消費税率が8%のままに据え置きとなる軽減税率制度に加え、クレジットカードや電子マネーといったキャッシュレスで決済することで増税分の2%分をポイント還元する制度の導入も検討されています。

日本のキャッシュレス社会は、どこまで進むのか? ここでは、そのカギとなりそうな、今話題になっているQRコード決済について考えてみたいと思います。

岩田昭男(いわた・あきお)/消費生活ジャーナリスト

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早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。公式サイト

QRコード決済のメリット

軽減税率やカード決済のポイント制度は、消費者にとっては税金の負担が減ることになるので喜ばしいことです。

ただ、大手のスーパーやコンビニなどはすぐに対応できるとしても、中小の小売店は、クレジットカードや電子マネーの決済端末を導入するコスト、決済ごとに発生する手数料コストなど、頭の痛い課題が多いのも事実です。

しかし、そんな中小の小売店にとって、希望の光となりそうなのがQRコード決済です。

導入コストがほとんどかからない

QRコード決済とは、スマホアプリもしくは店側のQRコードを読み取ることで、紐付けられたクレジットカードや金融機関の口座、プリペイド方式の場合はチャージした残高から支払うことができるサービス。

最大のメリットは導入コストがほとんどかからないこと。キャッシュレス先進国の中国では、屋台のメニューの横にQRコードを印刷した紙を1枚置いておけば、勝手にお客さんが読み取って決済をしてくれるので、高額なレジや専用端末は必要ありません。

私は最近よく各地の商店街でキャッシュレス導入について話をしますが、3%~7%の手数料を支払うクレジットカードや電子マネーより、手数料が安いQRコードに多くの関心が寄せられています。

すでにQRコード決済が利用できる大手のコンビニや家電量販店、ドラッグストア、飲食店などに加えて、中小の小売店が参加すれば、私たちにとっても、一気に利用価値と利便性の高いキャッシュレス決済になるかもしれません。

主なQRコード決済サービスの特徴

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Image: zhu difeng/Shutterstock.com

現在国内で、QRコード、もしくはバーコードを使ったキャッシュレス決済サービスを提供しているのは、LINE Pay、楽天ペイ、Origami Pay、d払い、Amazon Payなどがあります。

・LINE Pay

日本でもっとも知られたQRコード決済で、基本はアカウントにチャージした残高で買い物をする仕組みです。いわゆるプリペイド払いが中心となりますが、一部LINE内のサービス利用でクレジットカードが利用できます。

ポイント特典は、1カ月間の利用金額などに応じて最大2%の還元率に加え、QRコード決済限定でポイント還元率を3%上乗せするサービスも2018年8月からはじまりました。つまり、最大で5%の恩恵を受けることができるわけです。また、加盟店拡大に向けた戦略として、条件はあるもののQRコード決済の手数料が3年間無料(2018年8月1日から2021年7月31日)のサービスを開始。利便性がますます高まることが予想されます。

・楽天ペイ

楽天経済圏で利用するなら、文句なしにおすすめできます。基本はクレジットカードからの引き落としとなるので、街中の実店舗のほか、ECサイトも利用もでき、分割払い(VISA・Mastercard・JCB・American Express、支払い回数に応じて要手数料)にも対応しています。楽天スーパーポイントでの支払いもできます。

ポイント還元率は、QRコード決済が0.5%ですが、楽天カードからの引き落とし1.0%にしておくことで、1.5%のポイントが獲得できます。

・Origami Pay

日本で最初にQRコード決済をはじめたOrigami Pay。加盟店が一部に限られていたために目立ちませんでしたが、ローソンで利用できるようになって知名度がアップしました。

クレジットカードと紐付けた決済のほか、登録した銀行口座からの即時決済も可能になって便利になっています。また、ポイント特典はないものの、加盟店で利用できる割引クーポンの特典では、一定金額の割引や期間限定の割引キャンペーンがあります。

・d払い

ドコモユーザーならおすすめです。スマホにアプリをダウンロードすればすぐに、実店舗とECサイトで使うことができます。支払いは、クレジットカード払いドコモ料金との合算払いのいずれかを選択します。

ポイント還元率は、ECサイトの利用で1%、実店舗の利用で0.5%。dポイントやドコモ口座(d払い対応サイトのみ)の残高から支払うことも可能です。

・Amazon Pay

2018年8月28日、Amazonのアカウントを利用して実店舗で利用できるサービス、Amazon Payがスタート。これまでも、Amazon Payを使ってAmazon以外のECサイトでネットショッピングができましたが、いよいよリアルに進出したわけです。

すでに、Amazonのスマホアプリをインストールしていれば、「メニュー→すべてを見る→Amazon Pay」をタップするとQRコードが表示されるので、店舗側に読み込んでもらうだけで支払い完了。

ネットでは強いAmazonですが、リアルの加盟店はまだ少ない状況。これまでAmazonを使っていた人なら、クレジットカードなどの登録など設定が不要、手軽にはじめられるので、今後が期待されます。

キャッシュレス先進国のノウハウを活用した「PayPay」に注目

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Image: via PayPay

2018年10月5日からサービスを開始した「PayPay(ペイペイ)」は、今年6月に設立されたヤフーとソフトバンクの合弁会社によるスマホ決済サービス。

インド最大、3億人以上の利用者と800万の実店舗にスマホ決済サービスを提供している「Paytm(ペイティーエム)」と提携し、PayPayサービスの準備を進めてきました。

さらに、9月に入って中国アリババ集団の「Alipay(アリペイ/支付宝)」と連携し、10月25日からPayPayの加盟店でAlipayも利用できるようになり、中国人のインバウンドにも対応。多くの関心を呼んでいます。

使い方は、PayPayアプリもしくはYahoo! JAPANアプリを利用。支払い方法は、クレジットカード、チャージ(銀行口座などから)した残高、Yahoo!マネー。ポイント還元率は0.5%となっています。

スマホのQRコード(またはバーコード)決済には、ユーザーがアプリに表示されたQRコードやバーコードを提示して店舗側のレジでスキャンする「店舗読み取り方式」と、店舗側がQRコードやバーコードを提示しユーザーがアプリでスキャンする「ユーザー読み取り方式」があります。

PayPayは、2つの読み取り方式を加盟店に提供しているので、店舗読み取り方式の場合は、アプリ画面のコード払いを選択してバーコードを提示、店舗側が読み取ることで支払い完了。

ユーザー読み取り方式の場合は、アプリ画面のスキャン払いを選択して、店舗側から提示されたQRコードをアプリで読み込み、支払金額を入力、店舗側が画面を確認して支払いが完了します。

また、PayPayでは加盟店向けに、ユーザー読み取り方式に限り、初期導入費と入金手数料を無料決済手数料はサービス開始日から3年間無料の施策を実施。

店舗側はPayPayが用意したQRコードが印刷された紙を店に置いておくだけで決済ができ、導入・維持の負担が少ないので中小の小売店が導入しやすいのが特徴です。屋台のラーメンの支払いを、PayPayで簡単に済ませるようになるかもしれません。

現在、利用できる店舗は、居酒屋チェーンやメガネチェーン、中小の小売店や飲食店などですが、今後、コンビニやドラッグストア、タクシー、ホテルなどでも使える予定とのことです。

さて、さまざまなQRコード決済サービスをご紹介しましたが、2019年2月にゆうちょ銀行が「ゆうちょPay」のサービスが開始するなど、消費税の増税を受けて、今後ますます各社の競争は激しさを増しそうです。

利用者にとっては、切磋琢磨してもらい、より便利でお得なサービスに期待したいものです。

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Image: Zapp2Photo , zhu difeng/Shutterstock.com

Source: LINE Pay , 楽天ペイ , Origami Pay , d払い , Amazon Pay , PayPay