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韓国の悩みも賃金。文在寅大統領の「ムンジェノミクス」失敗で失業者32万人へ

韓国で文在寅政権が誕生して1年。ここで経済政策とその成果について紹介したい。目玉となっていた最低賃金の引き上げが行われた結果、失業者が急増しているのだ。(『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』)

※本記事は、『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』2018年6月3日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

就任から1年。目玉だった最低賃金の引き上げで起こった社会不安

この1年で最低賃金が一気に上昇

今回は、韓国・文在寅大統領の経済対策とその成果について詳しく紹介したい。

1年前の2017年5月、文在寅大統領は韓国の大統領として当選した。目玉となった経済政策は、3年間に最低賃金を1,000円に引き上げ、公務員81万人を雇用するというものだった。結果として1年が経った今、最低賃金は一気に上昇した。これについてまずは整理したい。

韓国の最低賃金は、以下のように上昇した。

2017年度の最低賃金:6,470ウォン
2018年度は最低賃金:7,530ウォン

一気に1,060ウォンほど上がったわけだ。ウォンだとわかりにくいと思うが、日本円に換算するときは、だいたい1桁を取ればいい。つまり、106円ほど上昇したことになる。

これで、最低賃金は750円となった。1時間ほど働いて、ビッグマックのセットは買えるようになったわけだ。

そして、来年の最低賃金の時給を月給に換算すると157万3,770ウォンとなり、来年賃金が上がる労働者は約463万人と当時は推定されている。

コスト削減が急速に進んだ

さて、私は1年前にこの政策を見て、最低賃金はどんどん上げるべきだと書いた。そもそも、日本と同様の物価の韓国において、当時の最低賃金645円というのは安すぎる。

当初は本当に1時間働いてもビッグマックのセットすら買えなかったのだが、朴槿恵政権時代にも最低賃金が上昇して、ようやくセットが購入できる金額となった。

以下、1年前に私が書いた内容だ。

失業率が高いのに最低賃金を16%もあげる。これがどのような結果を導くのか。

収入が増えて内需が促進されるのか。はたまた、賃金が上がったことでバイト採用を減らして労働者の仕事量を増やすのか。

それらは雇用主が考えることだが、私は最低賃金を1万ウォンは上げるべきだと思う。できるならば、だが。そうすれば、日本を超えられるじゃないか。

このように書いたのだが、その1年の結果は、内需の促進ではなかった。雇用主がバイトを減らして自動機械を導入するといったコスト削減が進んだ。

なんと韓国では、自動機械が店舗においてある無人の店まで登場した。日本でもそういうラーメンやそばの自販機は昔あったそうだが、それとは違って最新型である。なんとクレジットカードが使えるのだ。

韓国人はどこでもクレジットカードを使用する。日本では普通、コンビニなどの少額の買い物にはクレジットカードを使わない。そこは国が違えば事情は異なる。だから、安価な飲食店でもクレジットカードを使うことが多いそうだ。まさにカード社会。現金いらずである。

Next: 職を追われる若者たち。文在寅大統領の政策は失敗に終わった



職を追われる若者たち

さて、文在寅大統領の最低賃金引き上げによって、若者はますます職を追われることになった。

あまりにも就職できないからと、日本での就職を支援するセミナーまで登場している。なかなか反響らしいが、それは韓国の内需に貢献しないだろう。

その辺を深く追求すると移民問題まで関わるので割愛するが、文在寅大統領の経済対策は大失敗であったことは言うまでもない。

好調だったのはサムスン電子だけ

あれ? でも、昨年の韓国経済は3.1%成長を遂げ、貿易額も1兆ドルの大台に乗せて絶好調だったはずでは? 聡明な読者はそう思うかも知れない。

ただ、それはサムスン電子一極であり、DRAM需要のおかけである。ほとんどの企業は現状維持か、減収である。しかも、2017年は世界的に好景気だったにも関わらずである。

輸出依存の韓国において、2017年はボーナスステージだったと私は考えている。そのボーナスステージにいながら、文在寅大統領の経済対策で雇用が増えるどころか、逆に減少したわけだ。

失業者は3カ月で32万人へ

では、具体的な数値を見てみよう。

韓国雇用情報院は22日、今年1-3月期に雇用保険不加入となった就業者を対象にその理由を調査した結果を公表した。それによると「経営上の事情および不況による人員削減などによる退社」と「廃業・倒産」が32万2165人に上っていた。これは2014年に雇用保険不加入となった理由が「自己都合による退社」「定年」「廃業」など9項目に分類されて以来最も多い数値だ。

出典:不況・廃業で職失った韓国就業者、3カ月で32万人 – 朝鮮日報(2018年5月23日配信)

朝鮮日報からの引用であるが、明らかに文在寅大統領の経済対策が失敗して失業者が増加した。その数は3ヶ月で32万人である。

2017年は30万8617人だったので、今年だけで1万3548人と30%ほど増えたようだ。

ここまで韓国のデータである。次は、同時期のOECD各国と比較しよう。

Next: スウェーデンと韓国で失業率が悪化。活路は内需拡大しかないが…



スウェーデンと韓国で失業率が悪化

韓国(の失業率)は3.6%から4.0%に上昇した。これは3月基準で2001年に続き、17年来の高水準になった。

韓国のほかに失業率が上がった加盟国は5.9%から6.2%に下がったスウェーデンだけだった。

15~24歳の青年失業率もOECD平均が11.2%から11.1%と低くなったのに対し、韓国は9.9%から11.1%に上昇した。

出典:韓経:3月の失業率、OECDで韓国とスウェーデンだけ上昇 – 中央日報(2018年5月23日配信)

この通り、文在寅大統領の経済対策が完全に裏目が出たという結果は、内部と外部による両方のデータから容易に読み取れるわけだ。

世界経済が好景気だったことは、OECD各国が失業率を改善させていることからもわかる。それでも韓国はその大きな波に乗れないまま、ボートをひっくり返したことになる。

さらなる最低賃金「引き上げ」も?

ここまで見てきた通り、韓国の失業率悪化は、最低賃金の大幅引き上げがもたらしたものである。

こうなることは韓国でも予想できていて、企業側が反発したのだが、無理に決行した結果がこれである。

だが、まだ文在寅大統領の政策は途中なのだ。なぜなら、最低賃金引き上げの目標は、2020年で1000円だからだ。つまり、あと250円ある。

ええ? さすがにあげないだろう…と思うかも知れないが、文在寅大統領は上げる気だったりする。

こんなに酷い結果が出ているにも関わらず、もしこれでも無理に最低賃金を上げたならば、このメルマガを書いている私でさえ文在寅大統領を見直すだろう。

どのみち、雇用減少がどうとかより、韓国物価に最低賃金が追いついてないのだから、いつかは上げなくてはいけない。そうしないと内需は一向に増えないからだ。韓国人が一生、財閥の奴隷でいいならそれでもいいのだが。

もっとも、それをする根回しは大事だと思う。文在寅大統領はその根回しが全くできてなかった。せめて賃上げは50円ずつぐらいにするべきだったかもしれない。

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image by:Wikimedia Commons

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2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』(2018年6月3日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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数年ごとに起きるデフォルト危機。世界経済が後退すれば、投資家が真っ先に資金を引き揚げていく新興国市場。輸出依存が96%という恐ろしい経済構造。ヘッジファンドに玩具にされる韓国市場。中国の属国化へと突き進む2014年。並行してスタグフに悩まされる現実。そして、1100兆ウォンを超え、雪だるま式に膨らむ家計債務の恐るべき実態。経済の問題点とは何なのか?なぜ、また、第四次経済危機が迫っているといえるのか。それは読めばわかる!投資、ビジネス、教養、雑談ネタにも最適な、最も韓国経済の実情を知ることが出来るメルマガ。

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