MAG2 NEWS MENU

世界には、他人には理解されない「珍しい恐怖症」を持つ人がいる

みなさんが最も怖れるものとは一体なんでしょうか? 虫、お化け、雷、上司、伴侶など十人十色、恐怖を感じる対象や程度は異なるかと思います。また、他人には理解できないような恐怖症(フォビア)が世の中に存在するのも事実です。その数およそ数百種類もの恐怖症が精神医学の進んだアメリカにて認知されていると言われています。その中でも少し奇妙で珍しい恐怖症を紹介していきます。

そもそも恐怖症とは?

そもそも恐怖症とは何なのでしょうか?

恐怖症は正式には「限局性恐怖症(特定の恐怖症/単一恐怖)」といいます。

これは特別な対象や状況に対して、心理学的、あるいは生理学的に不合理な恐怖感を感じている状態を示します。

誰しもが、高所や狭い場所、蜘蛛などに対して怖い、と感じることやものはありますが、恐怖症と呼ばれるものにはその恐怖心の「程度」が過度であったり、著しい恐怖反応を起こしたりし、日常生活に支障をきたすものをいいます。

また英語ではフォビア(Phobia)といわれ、この語源は古代ギリシャ語で「恐怖」を意味するポボス(Phobos)から来ています。

日本語で「~恐怖症」と言われるように、英語では「~phobia」のように接尾辞として用いられます。

嘘みたいだけど本当。美人を見ると吐き気や不快感が

1. 美人恐怖症(ヴィーナストラフォビア)

美人の代名詞「オードリーヘップバーン」

image by: Wikipedia

これはそのまま「美人に対して」感じる恐怖心のことです。

主に男性に発症することが多いようですが、「原因は過去に美人との関係上で大失敗した経験などがトラウマになっている」、「自分の容姿に自信がない」という2つだそうです。

「美人を見て緊張する」と思う人は多数いるかもしれませんが、この恐怖症の人の場合には、美人が周囲にいるだけで極度のストレスや恐怖心を感じ呼吸が速くなり吐き気などの症状が起こるのだそう。

また、まともに顔をみることができない、挙動不審な行動を取る、頭が真っ白になるといった症状も見られ、かなり激しいストレスを感じるようです。

また男性だけでなく、自分の容姿に劣等感を抱いている女性も陥ることがあるそうです。

つまりは男女共に、容姿に対する劣等感から「超えられない次元の壁」を痛感することによって恐怖心が煽られているようです。

改善するには、「アガってるな」といった自分の心の状態に気付く事、また美人にあえて近づき、場数を踏んで美人に慣れることなどが有効なようです。

どの世も、美人と接して心躍らせる男性諸君ばかりかと思いきや、胸を抱えるほど憂鬱になる人もいるということなんですね。

ちなみに、元歌手の山口百恵さんの息子で、俳優の三浦貴大さんもこの恐怖症であることを告白したのだとか。

ピーナッツバターが怖い…ってどういうこと?

2. ピーナツバター恐怖症

きょとんとした人も少なくないかもしれません。「ピーナツバターが怖いってどういうこと?」と。

日本人にはあまり馴染みが薄そうな気もしますが、ピーナツバターとジャムサンドが常食のアメリカでは実在する恐怖症なんです。

これはピーナッツバターが口蓋にひっついたり上あごにくっついてしまうのを怖れるという心理だそうです。

症状としては、ピーナッツバターがそばにあると、異様に汗が吹き出して身体が震え出し、上あごがざらざらして不快な気分になるといったもので、少し想像しづらいかもしれません。

日本人の感覚だと水飴が口の中くっついてしまうことに恐怖を感じる、といった感覚でしょうか。

不快感を感じることはあっても、恐怖を抱くレベルとなると繊細すぎて中々理解ができないかもしれませんが、発症した人には辛い体験なのでしょう。

海外のTwitterユーザの反応を見てみましょう。

「ナチュラルなピーナッツバターを食べていたんだけど、ピーナッツバター恐怖症の悪い症状を起こしそうだよ」

実際に診断されたと名乗る人も

 「僕はピーナッツバター恐怖症だと診断されたよ」

ただ、アメリカでもそれほど認知度が高い恐怖症という訳でもなさそうです。

「ピーナッツバター恐怖症って、ピーナッツバターが口蓋にくっつくことに対して恐怖を覚えることらしいの。知ってた人いる?」

絶対に笑ってはいけないと思えば思うほど笑ってしまう

3.  失笑恐怖症

この恐怖症の存在自体がにわかに信じがたいと思う人もいるかもしれません。

この恐怖症は「笑ってはいけない場面で笑いがこみ上げてきて我慢ができなくなる」といった状況に陥ることに対して恐怖感を覚えるといったものです。

具体的なシチュエーションとしては、お葬式に参列した際演劇の鑑賞中といったシーンとした状況、先生や上司に叱られている場面などに、急に笑いがこみ上げてくるといったものです。

同様の事が繰り返し起こるにつれて、そういった状況に自ら出向くことに不安や恐怖を抱き始めるのが典型的な症例となります。

漫画家の蛭子さんや、いまや画家としても活躍するジミー大西さんがこの恐怖症であることをカミングアウトしたことでも一時話題となり、別名「蛭子病」とちまたでは呼ばれているそうです。

また、この恐怖症に関しては社会不安障害や対人恐怖症の一種ともいわれています。

対人関係の悩みに向き合い解決していくことで、改善がみられることもあるのだそうです。

ずっと左折ができないなんてことも。左側恐怖症

4. 左側恐怖症(シニストロフォビア)・右側恐怖症(デクストロフォビア)

子供の頃に左利きから右利きに矯正されたという方に発症する可能性がありそうなのが、左側恐怖症です。

原因はこれだけではないのですが、過去に強引に矯正されたという観念が強い場合には左側に対して異常、悪い、危険」といった思い込みが生じるのです。

そのことによって「身体の左側にあるもの」、または「左利きであることや人」に対して恐怖を感じるようになります。

さらに、道を歩いていても「左側に曲がる」ことに恐れを抱き、目的地に着くまで右折をし続けるといった非効率的な方法をとって回避するような場合もあるのだそう。

症状は他の恐怖症と同様、めまい、震え、息苦しさ、不快感を抱く、腹痛などが起こります。

逆に、右側にある対象物などに恐怖を抱く恐怖症(Dextrophobia)も存在します。

いずれも、幼少時代などに起きたトラウマや経験が引き金となって発症するのだそうです。この恐怖症は特に日常の行動に支障をきたしそうですよね。

恐怖症名が皮肉にも長すぎ。長い単語に恐怖を抱く恐怖症

5. 長い単語恐怖症(Hippopotomonstrosesquippedaliophobia)

英語の名称自体が長すぎて日本語に表記するのを諦めました。

ギリシャ語では「何かとても大きなもの」といった意味を寄せ集めた単語になります。

その名も示すとおり、長い単語に対して恐怖を抱く恐怖症になります。

この名称を見ただけでも恐怖症を発症してしまいそうですが…。

一見、非現実的な恐怖症にも思えますが、実際に発症し苦しんでいる患者が実在するのです。

小さい頃(もしくは社会に出た後に)、長い単語を発音した際に周囲に笑われ恥をかいた、その際に自分が震えていることを認識した、といった経験がきっかけになる場合があるようです。

「長い単語」に対して苦手意識が芽生え、考えたり見たりするだけでネガティブなイメージが植え付けられてしまうのだそう。

ひどいときには、激しい不安を感じたり、パニックになるのだとか。

ただ、恐怖症の中でも、薬や治療なしで改善する、克服しやすいものだといわれています。

恐怖自体に恐怖を感じてしまう恐怖恐怖症

6. 恐怖症恐怖症(フォボフォビア)

誤字ではありません。

言葉遊びのようにも見えますが、これはある物理的なもの、考え、状況などに恐怖感を抱くことに対して、極端に不安になったりひどく困惑してしまう状況を指します。

フランクリンルーズベルトの名言にも「我々が怖れなければいけない唯一のものは恐怖そのものである」とありましたが、そうしたくなくても恐怖を感じてしまう人も世の中には存在するのです。

これは疾病恐怖症(病気になることへの恐怖感を抱く)や広場恐怖症(広い場所や閉ざされた場所に恐怖を抱く)などと併発する症例が多いようです。

発症するきっかけとしては、人前で恥ずかしい思いをしたり不安発作を起こすことによって、ある状況や環境とリンクされ始めることにあるそう。

ですので、この恐怖症に関しては自身での制御や複製がしやすいものといえそうです。

パニック障害から派生しているともいわれ、他の恐怖症と併発する場合だけでなく、稀にこの恐怖症にいきなりなる症例もあったそうです。

原因は有害生物に対する警戒心と人類の歴史に関係

7. 集合体恐怖症(トライポフォビア)

蓮の実

有名な恐怖症の中のひとつに、集合体恐怖症(トライポフォビア)というものがあります。

これは「多数のものが密集しているもの」に対して恐怖を感じることです。

例えば、穴がたくさん開いている蜂の巣や、蓮の花托などがあります。

「蓮コラ」といわれる画像が2009年頃からネットで話題になるようになり、背筋をゾッとさせた方も多いのではないでしょうか。

その他、苺や魚卵、鳥肌など「つぶつぶしたもの」を見た場合に、度を越えた不快感や嫌悪感を抱く症状も含まれます。

ただ、医療分野では認知されていない恐怖症といわれています。

また、このトライポフォビアの原因に人類の進化が関連しているという興味深い研究がされています。 

イギリスにあるエセックス大学によって研究されたトライポフォビアに関する内容が科学ジャーナル『Psychological Scienceに掲載されています。

結論としては、「人類が過去に遭遇した有毒生物を警戒する意識が、トライポフォビアの発生原因のひとつではないか」とのことです。

さらに、「危険を警戒するもともとの素質の存在がある」ということ、つまり、有害生物に害を与えられたことがなかったとしても、人類の歴史とDNAに刻まれた素質的な側面から、この恐怖症に陥ってしまう可能性もあるということです。

すなわち、元々は自分自身を守ろうとする心理からこのような恐怖心がうまれたといってもいいでしょう。

さらにに、こういった画像を繰り返し見ているうちに恐怖感が薄れていく人もいるようです。

ちなみに、つい先日文化勲章を贈られた芸術家の草間彌生さんは総合失調症といわれていました。

幼い頃からの幻聴や幻覚から自分を守るため、作品全体に大量の水玉を埋め尽くすように描いてきたともいわれています。

集合体恐怖症の人にとっては彼女の作品にもゾッとするかもしれませんが、展示会に行っているうちに改善していたなんていう可能性もありそうです。

 

いかがでしたでしょうか?

それぞれ、恐怖の対象は異なりますが、過去に体験した精神的苦痛やトラウマからこれらの恐怖症が引き起こされる場合が多いとのことでした。

ここで挙げたものは少し奇妙だったり珍しいものでしたが、芸能人で発症している人も意外に多かったですね。

もし皆さんも過度に何かに対して怯えているという状況の場合には、一度専門家に診てもらった方がいいかもしれません。

治療方法には、薬物療法と心理療法があるそうです。

他にもどんな変わった恐怖症があるのだろうと気になった方は、下記恐怖症に関する専門のサイトがありますのでご覧ください。

実際に恐怖症を発症した経験があるアメリカ人が管理しており、「Top100の恐怖症リスト」が記載されています。

 

image by: Shutterstock

source by: NAVER, Wikipedia, カラダノート, NAVER, 2knowmyself, FearOf.net, 健康+生活, そくにゅー, Phobia Source, Dextrophobia, TrapRadar

文/臼井史佳

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け