大船渡・佐々木、最速154キロ岩手の新怪物が始動

練習試合中に赤タオルで顔を拭う大船渡・佐々木(撮影・高橋洋平)

 第100回全国高校野球選手権記念大会の東北6県代表がすべて出そろった。同時に、6校以外のチームはすでに第101回の夏に向けてスタートを切っている。今夏、みちのくで最大の衝撃をもたらした大船渡(岩手)の佐々木朗希投手(2年)もその1人だ。盛岡三との初戦で自己最速を1キロ更新する154キロをマークしたが、西和賀との3回戦は登板回避して部員11人の相手にまさかの敗戦。持てる力をすべて発揮しないまま、夏を終えた。東北の剛腕に新チームの意気込みを聞いた。【取材・構成=高橋洋平】

 はかなく終わった夏の悔しさを、胸に刻み込んで始動した。佐々木は西和賀に敗れた翌日の朝7時に自宅を出発し、新チームの練習をスタートさせた。

 佐々木 逆転されてから打席が回ってこなくて、援護できなかった。チームとしては思いもよらない相手に負けて、あっけなく終わってしまった。

 今夏下級生で唯一のベンチ入りとなった佐々木に、同級生19人を加えた2年生20人が主力だ。大船渡一中軟式野球部の仲間が他7人いて、Kボール選抜「オール気仙」の同期も8人もいる。主将に就任しなかったが、チームの中心選手として積極的に声を出している。既に練習試合を行っており、28日には全国強豪の早実(西東京)と戦った。中盤以降に捉えられ、8回5失点で敗戦投手になった。

 佐々木 低めのボール球に手を出してくれなかった。最後は投げるところがなくなった。全国の強豪はすごいなと思った。

 8月中は遠征で練習試合を重ね、実戦経験を積んでいく。佐々木はU18日本代表第1次候補30人に入っており、甲子園期間中に正式な18人が発表される。

 佐々木 期待されて候補に入った以上は日の丸を背負いたい。力を出せる環境で自分の力を試したい。

 代表入りすると、8月末の合宿に合流することになる。同時期には来春のセンバツ出場の重要参考資料となる秋季県大会の地区大会がある。仮に代表入りすると、地区大会は大黒柱不在で戦わなければならない。

 佐々木 大丈夫。自分がいなくても十分、戦える。1人1人の意識が変わっているのが分かる。

 残すところ甲子園切符は2枚となった。直近の目標は当然、センバツ出場だ。

 佐々木 まずは地力で出場できるところまで行きたいし、21世紀枠で行けるなら行きたい。何としてでもセンバツに出たい。

 来年には最速160キロ以上をたたき出すと豪語する佐々木の直球は、どこまで伸びるのか。「岩手の新怪物」の挑戦は続く。

 ◆衝撃の154キロ 今夏、佐々木は初戦の盛岡三を相手に9回4安打11奪三振2失点で完投した。人生初被弾直後の打者にギアを一気に上げて、自己最速を1キロ更新する154キロを2球連続でマーク。今春は封印したフォークを解禁し、追い込んだ場面で多投して三振を奪った。打っても3安打を放って投打に高い可能性を見せつけ、プロ5球団5人のスカウトの度肝を抜いた。