阪神上本が今永攻略の口火 非凡なパンチ力で1発も

阪神対DeNA 6回裏阪神2死、ダメ押し本塁打を放った上本(奥)は、ベンチ前でロサリオに抱きかかえられ笑顔を見せる(撮影・上田博志)

 ウル虎の切り込み隊長が、難敵今永攻略の口火を切った。阪神の1番で起用された上本博紀内野手(31)が、1号を含む3安打2打点の大活躍。打率を3割6分1厘まで上昇させ、13安打7得点の大勝を導いた。相手は昨季公式戦3連敗で終えるなど、苦戦を強いられた今永。4回までに10安打を浴びせ、10度目の対戦で最短KOを食らわせたのは背番号00の奮闘あってこそだ。

 6回には非凡なパンチ力を披露し、甲子園の夜空に黄色の花火を打ち上げた。三嶋の2球目の真ん中低め127キロスライダーをすくい上げると浜風にも乗って左翼ポール際に着弾。淡々とダイヤモンドを1周してベンチに戻ると、ロサリオに体を持ち上げられる祝福を受けた。金本監督は「昨日(4月30日)の試合、足で取った。1、2番でかき回せればな」と1番抜てき理由を説明したが、1発も出て期待以上の大活躍。「ホームランで7点目かな。あれで『ヨシ、今日は秋山1人で行ける』と確信できた」と大絶賛だ。

 ここまでの道のりは平らではなかった。昨年11月に右足関節の鏡視下手術を受けた。そこから鳴尾浜に通い詰めた。「順調にリハビリをやっています」。チームトレーナーと朝から夕方まで懸命に取り組み、2月の春季キャンプが始まるまでに、走れる状態まで戻した。気温0度に満たない高知・安芸キャンプでは、ネックウオーマーを巻いて黙々とグラウンドを走った。

 そんなとき、若虎・大山を三塁で起用するため、ベテラン鳥谷が二塁にコンバートされた。焦る気持ちもあった。「どうなるか、自分には、わかりません。とにかく頑張ります」。多くは語らず、前だけを見た。全てはシーズンで躍動するため-。白い吐息だけが、その覚悟を知っている。

 この日はサイクル安打達成の可能性も残されていたが、7回の守備から途中交代。試合後に喜びのコメントを残すことはなかったが、昨オフには守備固めを出される悔しさを痛感し「試合の最後まで、勝つ瞬間までグラウンドに立っていたい」と切実に語っていた。その思いを胸に秘めてグラウンドに立ち続ける。【真柴健】