元年俸120円Jリーガーとしてプレーし、昨年格闘家に転向した安彦考真(43)が、格闘技歴7年でRISEのアマチュア大会にも出場経験のある会社役員の小比田隆太にキックボクシングルールでKO勝ちし、デビュー2連勝を飾った。「強い相手で(予想は)9分9厘、小比田さんだろうと。魂で勝ちました」と興奮気味に話した。

サッカーで培った脚力を蹴りではなく、リングを走り回ることで発揮した。「ロープをうまく使うことを覚えた」と話していた通り、序盤は相手の攻撃をかわしながら、勝負のタイミングを伺った。2回にギアを一気に上げ、激しく殴りかかった。相手の足が止まってきた終盤に効果的なパンチをヒットさせ、終了間際にダウンを奪った。

4月の初戦でも、左の前蹴りを多用し、相手のボディにダメージを与え続け、計3度のダウンで、KO勝ち。さらなる高みを求め、プロボクサーや、那須川天心を指導したこともあるボクシングジム「GLOVES」代表の葛西氏らに指導を受け、ボクシング技術を身に付けたことが奏功した。「いろんな方に教えてもらって光栄。調整も順調だった」と感謝した。

大みそかのRIZIN出場を早くから目標に掲げたことで、SNSなどでたくさんの批判を浴びた。対戦相手の小比田もその1人。前日会見では「長く格闘技をやってきた人からすると、簡単にRIZINは出られない。それをまず僕が倒して証明する」と挑発された。

高3で単身でブラジルに渡り、社会人を経て、39歳でのJリーグ挑戦など、自分の夢にまっすぐに突き進んできた安彦は、そういった声を理解し、しっかりと受け止める。

安彦 サッカーの時もそうだったが、こういう挑戦をするとたたかれる。格闘家になるのは簡単じゃないないとか、いろいろ言われたが、重々承知している。それでも人生において挑戦するのは自由。他人に左右されず、できることを徹底的に挑みたい。魂で勝負してアンチをたたいてRIZINのリングに上がりたい。

宣言通りの結果を残し、目標のRIZINにまた1歩近づいた。観戦したRIZINの笹原氏は「技術は上がっている。本当にここから出て欲しいと思っていたが、それを実感した」と評価した。コロナ禍で落ち込んだ世の中に勇気や希望、忍耐を届けるために格闘家になった。「可能性はある。これからも日本を元気にしていきたい。そのためにはRIZINが必要です」。43歳安彦の挑戦はこれからも続いていく。【松熊洋介】