新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、いまだに感染者の確認がゼロの鳥取県の感染防止への取り組みが話題になっている。

鳥取県庁では、コロナ対策と銘打って段ボールを用いた“鳥取型オフィスシステム”が導入された。お金をかけずに「密閉」「密集」「密接」の3つの密を減らすユニークな対策の効果はいかに。また、オフィスでできるコロナ対策を聖路加国際大学大学院の大西一成准教授に聞いた。

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「鳥取型オフィスシステム」でコロナを防ぐ! 鳥取県庁では、平井伸治知事の発案・命名で先月31日から、お金をかけずに「換気の悪い密閉空間」「多くの人が密集」「近距離での密接した会話」の“3つの密”を減らすコロナウイルス対策を始めた。担当者は「人事異動や、人の流れが活発になるこの時期に、物の配置も変わります。それならば、コロナ対策もしっかりやろうとなりました」と経緯を説明した。

対策について、担当者は「一定の距離が取れないせまい部署では、段ボールやラップなどのあるだけの素材を使い、飛沫(ひまつ)感染を防止している」と説明する。距離が十分に取れる部署では、机をコの字型や、2メートル以上間隔を空けて配置、密接状態を防いでいるという。予算設定など、人と長時間向き合う必要がある財政課では、段ボールの中央部を切り抜き、ラップでふさぎ、相手の顔が見えるような工夫もしている。

担当者は「感染者が出る前に、目に見える形で対策を取ることに意味があります」と強調する。段ボールの大きさや、用具に決まりはなく「持ち合わせの素材で、自分たちで工夫を凝らしていることもポイントになっている」と話した。

岩手県、島根県に並び、いまだに感染者の確認がゼロだ。「このように目に見える形で県庁が対策を取ることで、県民の日常生活での感染防止の意識も高まっていると思う」と胸を張る。一方で、仕切りを作ることで、業務に不便を感じることはないのだろうか。担当者は「否定的な意見はありません。むしろ、職員からはこのおかげで、『私生活もしっかりしなくてはいけない』と声が上がっている」と、意識改革にもつながったという。県民の多くが足を運ぶ場であるため、誰よりも意識を高く持つ必要がある。「いつ感染してもおかしくない。人ごとではなく、気を引き締めなくてはならない」と力を込めた。

この取り組みは、コロナウイルスが収束するまで続ける予定だという。1人1人の高い意識でコロナウイルスを防ぐ。鳥取県が世界のロールモデルになれるのか-。【佐藤勝亮】

◆平井伸治(ひらい・しんじ)1961年(昭36)9月17日生まれ、東京出身。東大法学部卒。自治省(現総務省)を経て、99年(平11)鳥取県庁へ出向、07年(平19)に鳥取県知事選に初当選した。オヤジギャグとアイデアマン知事として知られる。コーヒーチェーン「スターバックスコーヒー」が15年に初出店するまで全国で唯一スタバのない県だったが「スタバはないけど日本一のスナバ(砂場=鳥取砂丘)はある」と自ぎゃく的ギャグを連発して観光客誘致に貢献。「カネはないけどカニはある」と同県名産のカニの売り上げ増を狙った「ウエルカニキャンペーン」なども企画した。家族は妻と2男。