鹿島アントラーズが12日のJ1リーグ第21節で、2位の名古屋グランパスに2-0で快勝した。

名古屋に浴びたシュートは0本。9日のFC東京戦から先発6人を入れ替えながらも“完全試合”の強さを発揮し、相馬直樹監督(49)のチャレンジ采配が的中した形となった。

東京戦から中2日での2位・名古屋との対戦。東京戦は内容も結果も伴った試合だっただけに「勝ってるうちはメンバーはいじらない」というセオリーで、過密日程でも先発を替えずに名古屋戦に挑むことも考えられた。だが、ふたを開ければMF小泉、永木、DF杉岡ら普段、リーグ戦であまり出場機会がない選手たちが先発に名を連ねた。

新鮮なメンバーで攻守でアグレッシブに戦う-。試合前から、そんな指揮官の思惑が感じられた。実際、小泉、ファン・アラーノは持ち味の運動量を生かし、相手のボール保持者に素早いプレスを掛けボールを奪取。DF杉岡は前にボールを預け前線へ飛び出した。MF遠藤はベテランの技で攻撃のリズムをつくった。速い攻守の切り替えと球際の激しさは、まさに「だれが出ても鹿島」の戦いぶりだった。

もし、東京戦と同じメンバーを送り出したら、このような一方的な戦いにならなかったかもしれない。相馬監督は試合後、「今、自分たちがやろうとしていることを考えたとき、運動量、アグレッシブさが必要になると考えて、今回、こういう形でチョイスしました。連勝したばかりでしたので、私としては正直リスク、これで負けたら、という話はあるが、僕も選手に、チャレンジしろと言っているのに、僕自身がチャレンジしなかったら、と思った部分も含めて、今日はそういうチャレンジをした」と説明した。まさに選手に求めていることを、自らにも厳しく課す。選手への強い信頼と、“おとこ気”を見せた采配だった。

先制点を決めたDF犬飼は「普段、リーグで出ていない選手が出て、これだけのゲームができるのが鹿島だと思わせられたゲームだと思います」と手ごたえを口にした。メンバーを入れ替えて結果を残したことで、普段、リーグ戦に出ている選手も、いい意味で危機感を抱くに違いない。

相馬監督のチャレンジ采配は、勝利のサイクルの中でいい競争を生み、チームの底上げにつながるものだ。4月14日に就任後、公式戦では不敗を続ける相馬監督の手腕が、チームを上昇気流に乗せている。【岩田千代巳】