新国立競技場、五輪後はトラック撤去で球技場専用へ

国内の3万人以上収容の主な球技専用場

 2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の後利用問題で政府与党などは、大会後に球技専用に変更し、陸上の国際大会ができる競技場を東京都内の他の場所に整備する方向で調整することが28日、複数の関係者への取材で分かった。都の施設である味の素スタジアム(調布市)や駒沢陸上競技場(世田谷区)などが候補に挙がっている。早ければ大型連休明けの5月中旬にも協議を始める見通し。

 新国立競技場を東京五輪・パラリンピック後に球技専用とする方向で、関係団体が具体的な協議を再開させる。2019年11月に完成予定で、五輪では開閉会式、陸上、サッカー競技で使用するが、大会後の利用については文部科学省などがワーキングチーム(WT)を設置し検討。しかし昨年9月以降、議論は大きく動いていなかった。

 大会後は民間に運営権を委譲する「コンセッション方式」を採用する見通し。関係者によると、21年以降に民間会社が運営する場合、今年中に方向性を出さなければならない。そのために5月中旬から国や東京都、実際に新国立を建築している日本スポーツ振興センター(JSC)などが、協議を始める予定。

 陸上機能を取り外さなければならない理由として、新国立の徒歩圏内に、常設サブトラックを建設できないことがある。五輪時は明治神宮外苑の軟式球場に仮設トラックを整備するが、明治神宮外苑は、これまで利用してきた一般客のために大会後の早期撤去を求めている。都景観計画でも建築物に関する厳しい制約がある。常設のサブトラックがなければ世界陸上などの国際大会だけでなく、大きな国内大会も開けない。

 トラックがあることで観客席からピッチまでの距離が遠くなり、サッカーなどの球技の臨場感を損なうよりも、トラックの分、観客席を6万8000席から8万席に増席することで、収益性を高めたい狙い。

 もう1つは、陸上競技に多くの集客が見込めないこと。スポーツ関係者の中でも、新国立のような大規模スタジアムはそぐわないとの見方が強い。大会後は、陸上より高い収益性が見込めるサッカーやラグビーを行う球技専用スタジアムとして生まれ変わらせ、コンサートなどのイベントも行うことで毎年の収支を黒字にする考えだ。

 一方で、陸上界にも配慮する。日本陸上連盟は五輪後に世界陸上などの国際大会を首都東京で開催したい意向を持つ。そのため、都が所有する味の素スタジアムや駒沢陸上競技場を、国際陸上大会が開けるように整備する検討を始める。現状、味スタにはサブトラックがあるが、駒沢にはない。整備が実現すれば、世界陸上などを誘致することは可能になり、新たな日本陸上界の聖地が誕生する。