筑後も被害、広範囲に 西日本豪雨 市民生活復旧になお時間 久留米市・48時間雨量最大

 西日本各地を襲った記録的豪雨から一夜明けた7日、久留米市でも多数の住宅や施設が水に漬かり、自然の脅威に住民は恐怖の表情を浮かべた。冠水の影響で渋滞も発生、交通網はまひした。一部では片付けが始まったが、市民生活の復旧には、まだ時間がかかりそうだ。

 久留米市、八女市、広川町で、浸水被害は少なくとも1190戸に上った。山間地では土砂崩れや倒木で通行止めが相次いだ。

 福岡管区気象台によると、久留米市の48時間雨量は観測史上最大の383・5ミリを記録。耳納山440・5ミリ、八女市・黒木380ミリに達した。

 久留米市によると、市内住宅の浸水被害は1170戸。このうち、同市北野町では大刀洗川の越水で約500戸が浸水。同市城島町でも山ノ井川などの溢水(いっすい)で430戸に被害が出た。市によると高齢者を中心に少なくとも60人がボートなどで救助された。

 道路冠水は190カ所超。耳納連山の尾根沿いを通る市道や林道など12カ所で倒木や土砂崩れが発生し、一部が通行止めとなった。

 八女市では星野川護岸が崩れ、民家1棟に被害が出た。同市黒木町大淵の国道442号では道路脇の土砂が崩落。八女市内の浸水被害は17戸で、広川町でも3戸が浸水した。

 筑後地区の全自治体が7日夕までに避難指示や避難勧告を解除した。久留米市では浸水被害が出た地域を中心に112世帯211人(午後6時現在)が自主避難を続けている。

■「腰まで水、あっという間」

 「備えはしていたつもりだけど想像以上だった」

 大きな被害が出た久留米市北野町。7日午後3時すぎ、北野校区コミュニティセンターに避難していた主婦(43)は互いの気を鎮めるように知人と語り合った。自宅があるのはセンターに近いコスモス団地。「あっという間に腰くらいまで水が来て、一歩も出られなくなった。2階で『どうしようか』と待っていた」。地元消防団によって子ども3人と一緒にボートで救助されたのは3時間前だった。

 団地は筑後川本流に流れ込む支流沿いにあり、隣接する丸三団地と合わせて約400戸が浸水した。

 丸三団地自治会の嶋田凱充(よしみつ)会長(85)によると、団地内に水があふれ始めたのは6日夕方頃から。「夜をはさんでいたので、どれくらいの被害が出ているのか分からず不安だった」

 団地の住民の無事が確認できてほっとする嶋田さんだが、家によってはトイレが壊れるなど、日常生活を取り戻すのに時間がかかりそうだ。「毎年のように豪雨が降る。今後も覚悟が必要だ」と顔をしかめた。

■「護岸崩れ、自宅帰れず」

 八女市山内の星野川では護岸が崩れ、2人暮らしの民家1棟が被害を受けた。「コンビニの駐車場で車の中に避難していた。夜中に自宅の様子を見るために戻ったら、もう崩れ始めていた」と住民の女性(59)。今にも濁流の上に崩れ落ちそうな自宅を見つめ「怖かった」と震えた。市営住宅に入居できるよう調整しているという。

=2018/07/08付 西日本新聞朝刊=

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