レーシック 激減 ピーク時45万件→6年後5万件 集団感染や眼鏡人気影響?

 視力を矯正するレーシック手術の件数が、ピークだった2008年の45万件から14年には5万件にまで激減したとの推計を、慶応大医学部眼科学教室の根岸一乃准教授がまとめた。米国や韓国など海外では広く普及し、国内のスポーツ選手らが手術を受けたことで日本でも一気に広まったが、患者の角膜炎集団感染などが影響したとみられる。

 レーシックはレーザーで角膜を削って屈折を矯正し視力を回復させる手術で、15分ほどで終わる。根岸准教授によると、有効性・安全性を支持する研究論文は7千本以上あり、手術をした患者の95・4%が結果に満足したというデータもある。

 根岸准教授が日本眼科医会の発表資料としてまとめた推計によると、レーシック手術の症例数は00年の2万件から徐々に増え、08年は45万件に達した。だが、09年は29万件と減少に転じ、12年は20万件、14年には5万件まで減ったとみられる。福岡市のあるクリニックも、手術数はピークの09年に比べ、15年は5分の1程度になったという。

 原因の一つとみられるのが、09年に東京都内の眼科病院で発覚した集団感染事件だ。十分な滅菌処理をしていない医療器具を使ってレーシック手術をしたため、患者が相次いで角膜炎などを発症。元院長は業務上過失傷害罪で禁錮2年の実刑判決を受けた。

 消費者庁が13年、レーシック経験者600人(20~60歳代、複数回答)を調査した結果、「光がギラギラしてにじむ」(16・5%)「ドライアイが半年以上続く」(13・8%)などの不具合があったと発表したことも、減少に拍車を掛けたとみられる。

 保険適用がなく、片目で十数万から30万円ほどかかる高い手術費に加え、眼鏡ブームや、コンタクトレンズの性能が格段に良くなったことも減少の一因とみる関係者もいる。さらに、福岡大医学部眼科学教室の内尾英一主任教授は「親から授かった体を傷つけるのに抵抗があるという日本人的な感覚も影響しているのでは」と分析する。

 レーシック手術を行う岡眼科クリニック(福岡県飯塚市)の岡義隆院長は「日本眼科学会などが示すガイドラインに沿って適切に施術し、術後もしっかりケアすれば本当に安全な手術だ」と話している。

この記事は2016年09月26日付で、内容は当時のものです。

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