被爆十字架、浦上へ返還 あす「長崎原爆の日」

 長崎は9日、原爆投下から74年となる「原爆の日」を迎える。長崎市の平和公園では同日午前10時40分から、被爆者や遺族のほか、安倍晋三首相、各国の駐日大使らの参列で平和祈念式典が開かれる。過去3番目に多い67カ国が出席を予定(7月24日時点)している。

 原爆の日を前に、長崎市の浦上天主堂では7日、被爆して倒壊した旧天主堂のがれきから米兵が見つけた木製十字架の返還式があった。頭部だけが焼け残った「被爆マリア」と共に9日夜のミサで公開される。

 十字架は金色で縁取られており、高さ約1メートル。終戦後の1945年10月に長崎に進駐した故ウォルター・フック氏が発見、当時の山口愛次郎司教から譲り受けた。フック氏は82年、親交のあった米オハイオ州のウィルミントン大平和資料センターに寄贈した。

 カトリック長崎大司教区によると、十字架は34~38年には、祭壇の被爆マリア像の上に設置されていたことが当時の資料や写真で確認されている。原爆投下時は別の部屋に置かれていたという。

 返還式で、同センターのターニャ・マウス所長から十字架を手渡された同司教区の高見三明大司教は「原爆を語り継ぐ証人となってほしい」と述べた。信徒で被爆2世の藤田千歳さん(72)は「当時、家族が祈りをささげたかもしれない十字架が目の前にあるなんて。感無量です」と語った。

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