「阿蘇かや」本格販売へ 文化財、古民家に欠かせぬ屋根材 10月、量産化説明会

 文化財や古民家の屋根ふき替えに欠かせない「かや(ススキ)」の本格販売に、阿蘇地域の草原保全に取り組む公益財団法人「阿蘇グリーンストック」が今冬から乗り出す。日本最大の草原2万2千ヘクタールが広がる阿蘇地域は良質な産地として知られ、新たな「阿蘇ブランド」として売り出し、草原の景観保全と資源活用につなげる狙い。本年度は1万束の出荷を目指す。

 阿蘇地域では約160の牧野が野焼きを続け、かやを主に牛馬の飼料や肥料に活用している。そんな中、関東や関西の職人たちが、屋根ふき替え用のかや調達に頭を痛めていることを知り、グリーンストックの関連会社「GSコーポレーション」(阿蘇市)が2017年から商品化を模索していた。

 手始めとして昨年度、「かやぶきの里」として知られる京都府南丹市の美山(みやま)地区に3500束を出荷。関東、関西のかやぶき屋根材は主に、自衛隊演習場がある富士山裾野から調達されているが、供給量が足りず、継続した納入を求められているという。

 同社が1束480円で作業者から買い取って仲介販売したところ、約2倍の値段で取引された。作業者は軽トラック1台分(約40束)当たり約2万円の利益を得られたという。将来は年間5万束の出荷を目指し、約4千万円の経済効果を見込んでいる。

 かやの刈り取りや束づくり作業は例年、12月から翌年4月にかけて行われる。同社は作業が本格化する前の10月中旬、量産化に向けて牧野向けに作業のこつや出荷規格の説明会を開き、農閑期の副業として普及させたい考え。

 阿蘇地域では昭和初期までかやぶき屋根の農家が多かったこともあり、屋根材として活用するノウハウを知る人は少なくない。GSコーポレーションの山内康二社長は「草原の恵みを活用することで保全につなげ、新たな経済循環活動として裾野を広げていきたい」と話した。

  • 西日本新聞

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