無料弁当で地域に恩返し 博多区の中華料理店 コロナ克服へ配布20回

 新型コロナウイルス禍の中、地域の人たちを元気づけようと、福岡市博多区博多駅東の中華料理店「大博多 中華街」が随時、店の前で昼の弁当を無料配布している。緊急事態宣言下、営業時間の短縮で経営は厳しいが、店員たちは「コロナに負けないよう頑張って」と声を掛けながら、温かい弁当を手渡している。

 同店は元々、海鮮料理を出す居酒屋だったが、新型コロナの影響で夜間の来客が減少。ランチの時間帯にも営業する中華料理店に衣替えし、昨年10月下旬にオープンした。その際、お世話になってきた人たちへの「お返し」の気持ちを込め、3週間続けて週3日ずつ、正午から300食の弁当を無料で配った。

 会社員や住民に交じり、繰り返しやって来る若者も。コロナ禍でアルバイトが減り、生活に困窮している学生もいたという。同店の運営会社のアゼットフードサービス(東京)は、弁当を頼りにしている人がいる状況を知り、当面、無料配布を続けることにした。これまで計約20回の配布を行い、現在は週1回のペースで、毎回200食を用意している。

 弁当は5種類ほどあり、ボリュームたっぷりにチャーハンや炒め物、揚げ物などを詰め合わせている。店の前に置いた看板で実施日の告知を行っており、それを見て常連になった人たちもいる。その1人の男性会社員(58)は「緊急事態宣言で店自体が大変な時期なのに無料配布を続けてくれて、優しさが伝わってくる」と感謝していた。

 中国出身の安子恒社長は「困ったことがあったとき、多くの日本人が事業を支えてくれた。その恩返しがしたかった。みんなで一緒に、この難局を乗り越えたい」と話していた。

 同店は、コロナウイルス感染者に対応する医療従事者への弁当無料配布の準備もしている。 (下村佳史)

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